DX人材とは?役割や求められるスキル、マインド、確保する方法を紹介

ここ数年、DXの波が急速に広がり、その波に乗り遅れまいと邁進している企業は多いでしょう。
しかし、いざDXを推し進めようにも、IT人材ばかりを集めてしまいなかなか進まないケースや、どんなメンバーで推進すべきか分からず実行に至っていないケースも少なくありません。
この記事では、DXを推進するにはどのような役割やスキル、マインドを持った人材が必要なのか、どうやってそのような人材を獲得していくかについて紹介していきます。

1. DXとは?

1. DXとは?

DXについて、経済産業省は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や 社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
つまり、DXとは、これから加速度的に起こりうる変化に適応できるよう、デジタル技術を活用して、企業のあり方やビジネスのあり方を変革していくことと言えます。
DXは単なるデジタル化(ペーパーレス化や商談のオンライン化など)ではなく、企業改革であることを認識しておかないと、誤った人材ばかりを集めてしまうことになりかねません。

2. DX人材とは?概要と6つの役割・スキル

DX人材とは、その名の通りDXをリード・実行する人材のことを指します。DXの実行は、戦略策定、施策策定、商品やサービスのデザイン・構築、全社的な取り組みとしての波及など多岐にわたり、それらを部分的にでも担う人材は、DX人材と言えるでしょう。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構、以下IPA)では、DXの推進を担う人材として6つの役割に分類しています。

①プロデューサー

プロデューサーは、「DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材」で、CDO/CDXOといった役員、DX推進部門のリーダーなどが該当します。役割としては、大きく3つあり「DXの戦略策定」「DXの戦略を推進するための全社的なコーディネーション」「DX推進のための企業文化の変革」です。
DXは、デジタル技術を使った新しいビジネスを始めることがゴールではなく、これからも変化し続けられる人や組織へ変革していくことが重要な目標になります。DXの取り組みが局所的・短期的なものにならないよう、DXの重要性を継続的に全社に発信し、リソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を集め、スピーディな意思決定をしていく必要があります。
そのため、デジタル知識とビジネス知識を持ち、未来を見据えて戦略を立てられるスキルや、ビジョンを伝え社員をモチベートできるスキルなどが求められるでしょう。

②ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、「DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材」です。
具体的には、DX戦略に基づいて、新規ビジネスモデルやビジネスプロセス、商品・サービスといったDX施策を立案し、個別施策が遂行されることに責任を持ちます。スクラム(アジャイル開発のフレームワーク)の構成メンバーである、プロダクトオーナー(*1)やスクラムマスター(*2)も、6つの分類ではビジネスデザイナーに該当すると言えるでしょう。
自社のビジネスを深く理解した上で、デジタル技術の動向にもアンテナを張って研究し、自社の強みを活かせるモデルや商品のアイディアを出すスキルが求められます。また、様々な構築メンバーを統括して推進する役割も担うため、マネジメントスキルやコミュニケーションスキルも欠かせないでしょう。

(*1)プロダクトオーナー(何を開発するか決める人)
:事業成果と開発するサービス・プロダクトに責任を持つ。スクラムチームと綿密な議論をかわし、プロダクトの価値を最大限にしようと努力する

(*2)スクラムマスター(商品やサービスの開発を全体的に支援・マネジメントする人)
:スクラム(チームで仕事を進めるための枠組み)の理解と実践を推進し、プロジェクトを円滑に進めることに責任を持つ人。チームの自律的な行動を引き出し、成果を最大限に引き出すことにも注力

③UXデザイナー

UXデザイナーは、「DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材」のことであり、顧客接点の在り方の最適化や、システム利用者の利便性を向上させる役割を担います。
ここでのユーザーとは、顧客だけでなく従業員など社内の構成員も含み、また、デザインとは、表面的なインターフェースだけでなく、利用する際のプロセスや、得られる価値まで設計することも含んでいます。
情報収集〜購入〜決済と消費の一連の流れが、 デジタルツールの画面上で完結する時代において、その一連の流れをより快適なものにすることは、収益向上に直結します。また、社内システムの利便性を高めることは、高付加価値業務に集中できる環境づくりにも貢献します。テクノロジーの知見を持っていることはもちろん、デザインシンキング(ユーザー視点に立った意思決定)も必須となる役割です。

④アーキテクト

アーキテクトは、「DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材」のことであり、技術的視点を持って業務とITのグランドデザインを行う役割を担います。DX戦略やDX施策として明確になった”取り組みたいこと”の具体的な実現方法を決定していくのです。
何らかのシステムを導入するにあたっては、表面的な機能だけでなく、システム全体最適の観点から非機能面(性能・拡張性・セキュリティ・運用保守性・移行性・可用性など)も考慮する必要があります。
それらを踏まえて、まずはシステムにどのような機能を持たせるか、どの技術でどの機能を実現するかなどを決定する必要があり、デジタル全般(IoTやAIなど先端技術、通信技術、セキュリティ、デバイスなど)の深い知識と、業務理解の両方が求められます。

⑤データサイエンティスト/AIエンジニア

データサイエンティスト/AIエンジニアとは、「DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材」のことで、いわゆる先進ITスキルを持った人材と言えるでしょう。
「データサイエンティスト」には、高度な分析技術を活用して、莫大なデータの中からインサイトを創出することが求められます。あらゆる行動がデジタル上に記録される時代において、ユーザーのニーズや行動特性を探る鍵となり、統計学的なスキルだけでなく、トレンドを把握し、ビジネスを理解することも必要です。
「AIエンジニア」とは、AIだけでなく、IoT、ロボティクス、ブロックチェーン、AR/VR、クラウドなど、ビジネスに変革を起こしうる新しいデジタル技術の、技術的知見を持った人であると考えられます。それら技術の知見(一般原理や特性、開発手法など)だけでなく、自社のビジネスへの応用アイディアを出すスキル、実際の開発段階ではチームとのコラボレーションスキルも必要となるでしょう。

⑥エンジニア/プログラマ

エンジニア/プログラマは、「上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材」のことを指します。基幹システムや営業管理システム、ECサイトなど、さまざまなソフトウェアを設計・実装するだけでなく、ネットワークやデータベース、サーバーなどを整備する人も含まれます。それぞれの分野における深いテクノロジーの知見に限らず、AIエンジニアと同様に、応用アイディアを出すことやコラボレーションしていくスキルが求められます。

プロデューサーやビジネスデザイナーなどビジネス系の人材もテクノロジーリテラシーは求められ、逆に、アーキテクトやデータサイエンティスト、エンジニアにもビジネス理解やコラボレーションスキルなど、ビジネス系のスキルが求められています。特定のスキルや経験があるだけでは十分でなく、自身の役割に応じたスキルを高めていくことはもちろん、専門以外のスキルとリテラシーを持った人材がより一層重要性を増していると言えるでしょう。

3. DX人材に必要なマインドセット

3. DX人材に必要なマインドセット

前述の通り、ソフトスキルは学習や経験を積むことによって習得することができますし、テクノロジースキルも後天的に身につけられるだけでなく、外部から借りてくることもできます。
DXという企業変革を成功させるために、スキルよりも重要と言われているのがマインドセットです。米国スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・S・ドゥエックは、”成功するためには、持って生まれた才能よりもマインドセットの方がはるかに大きな役割を果たしている”とまで断言しているほどです。
では、DX人材が備えておくべきマインドセットにはどのようなものがあるのでしょうか?

変化志向

変化志向とは、現状当たり前のものとして利用しているさまざまなものについて疑いを持ち、変化させるべきかどうか合理的に考えられる思考のことを言います。人間には、現状維持バイアスという現状を維持したい心理的傾向が備わっています。DXとは企業の変革そのものであり、現状維持バイアスを外して、企業存続のためにディスラプティブな変化を求め続けられる人材が必要とされています。

オープンマインド

DXの取り組みでは、既成概念を打ち破るビジネスモデルやビジネスの進め方を開発していくことが重要であり、多様性のあるメンバー、時には、社外の提携先やギグワーカーとのコラボレーションが必要となるケースが往々にしてあります。同じような経験や思考をもつ人ばかりが集まっていては、革新的なものは生まれないのです。そのような短期的に協同するメンバーともチームを組み成果を上げていくには、自身の考えやスキルをオープンにし、チームメンバーのそれも受け入れていくマインドが重要です。

失敗を恐れず挑戦する

ユーザーのニーズが多様化し、かつ変化も激しい時代において、変革の方向性を見出すことはより一層難しくなっています。アジャイル手法(仮説をベースにトライアンドエラーを繰り返すこと)で根気よく取り組むことでしか最適解に辿り着けず、想定していた結果が得られなかったとしても、そこから気づきを得て次の施策に活かせるような、失敗を恐れない前向きなマインドが不可欠です。

諦めない/最後までやりきる

変われないことへの危機感を抱き、変革への熱い情熱を持って最後までやりきる心持ちも必要です。
DXを推進していく過程で障壁は避けられません。社内外の協力が得られなかったり、リソースが足りなかったり、規制があったりとさまざまな課題に直面しても、忌避せず受け入れ発想を転換し、打開していくことも必要になるでしょう。

学習し続ける

テクノロジーが日々進化し続ける時代においては、自身のスキルを常にアップデートしていかなければ、今では先端的な技術でもあっという間に陳腐化してしまいます。会社サイドも学習環境を整備することが重要ですが、自身のスキルを高める重要性を理解し、社内外の学習機会を主体的に活用していける人が大きな効果をもたらすでしょう。

これまで紹介したような、スキルとマインドを兼ね備えている人材がいればベストですが、見つけられない場合には、スキルを持った人材に対してワークショップや研修などを通じてマインドセットを醸成する方法や、近いマインドセットをもつ人材を登用して、スキル習得をしてもらうという方法が考えられるでしょう。

4. DX人材の不足状況

4-1. 企業においてDX人材は不足している

ここまで、DX人材の役職・スキル・マインドについて紹介してきましたが、これらのDXを推進できる人材は非常に不足している状況にあります。

DX人材の不足

IPAが2019年に発表した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、前章で紹介した①〜⑥の役職全てにおいて、アンケートに回答した企業のうち約7割の企業で不足していることが分かりました。
最も不足しているとされているのは②ビジネスデザイナーで、75%もの企業が足りていないと感じています。

IT人材の”質””量”の不足

また、IPAの「IT 人材白書」によれば、企業における IT 人材*の不足感は顕著に高まっており、アンケートに回答した9割の企業が、"質"”量”ともに大幅に不足している・やや不足していると感じていることが分かりました。
(*)ここでいう「IT人材」とは、「システムコンサルタント・設計者」「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」を指しており、前章で紹介した役職で見ると、④アーキテクト ⑤データサイエンティスト/AIエンジニア ⑥エンジニア/プログラマが該当すると考えられます。

IT人材の偏在

また、日本においてはIT人材がIT企業に偏在していることも分かっています。IPAの 2019 年度調査結果によれば、国内 IT 人材 125 万 3,000 人のうち、 77%にあたる 95 万 9,000 人までが IT 企業に所属しており、ユーザー企業に所属するのは わずか 29 万 4,000 人であることも分かっています。ユーザー企業が DX を実行するために必要な人材を自らの組織内に十分に確保できる状況にはなっていないのです。

4-2. なぜDX人材は不足しているのか

なぜDX人材はこれほど不足しているのでしょうか?世界的に需要が増えていることも理由の一つとして考えられますが、これまで基幹システムの構築など社内のIT関係のタスクは、SIerに外部委託するケースが圧倒的に多く、社内にそもそもITスキルを有する人材が少ないということが挙げられます。DXとは、企業改革そのものであり、ビジネスを深く理解した社内の人材がリードすることが望ましいのですが、IT部門=コストセンター(収益を稼ぎ出す部署ではない)という意識を持つ経営層がいることも事実としてあり、DX人材を社内に増やしていくことを妨げる一因ともなっています。

5. DX人材を確保するためには?

ただでさえ大幅に不足しているDX人材をどのように確保していけばよいのでしょうか?
「社内人材の育成(リスキリング)」「中途採用」「外部組織との連携」の3つの方向性が考えられます。

5-1. 社内人材の育成(リスキリング)

DXとは企業変革であり、システム部門のみで進められるものではありません。事業部門と一体となって動く必要があるため、社内人材がリードすることが望ましいと言われています。ここで重要になるのが、既存社員の「リスキリング(能力の再教育)」です。

システム部門のメンバーは、高いデジタルリテラシーを保有しており、より高度なデジタルスキルを仕込むことで、先端IT従事者への転換が見込まれます。ここでは、デジタル人材を指導できる人材を育て継続的にデジタル人材を社内から増やせるような仕掛けを作ることも必要になります。
また、ビジネススキルを習得してもらえば、デジタルに精通したDXのリーダーにもなり得る可能性を秘めています。
システム部門以外の人材についても、デジタル技術の機能概要(基本的な仕組みと何ができるのか)を習得させ、プロジェクトをリードする経験を積ませることで、DXプロジェクトのリーダーへとなる可能性を秘めています。

社内人材のリスキリングは、座学と実践の両輪で学習することが望ましく、具体的には、ワークショップ、座学、OJT研修、現場視察、コーチング、オンラインでの自己学習などが考えられるでしょう。

5-2. 中途採用

しかし、既存社員のリスキリングは直ぐに成果が出るものではなく、年単位で時間がかかる場合もあります。即戦力が必要な場合は、中途採用の必要も出てくるでしょう。
中途採用でDX人材を獲得するには、不足している役職ごとに人材要件(スキル・経験・マインド・行動特性など)を明確にし、選考でどのように見極めるのかを決めておく必要があります。
また、先端IT人材は、採用したい企業も多く競争率が高いため、魅力的な条件(後述)をアピールしていくことも重要となるでしょう。

5-3. 外部組織との連携

先端デジタル技術を取り入れる場合や、一刻も早く推進する必要がある場合は、外部組織との連携を図ることも有効でしょう。その場合、育成や採用のノウハウを社内に蓄積させる取り組みも並行で行なっていく必要があります。

最も多いのが「協力企業・派遣企業等の外部人材の活用」で、DXに取り組んでいる企業の26%が取り入れています。戦略や企画の段階ではコンサルの活用や、実装段階になるとSIerやSESの協力を得ることが多いでしょう。
次に多いのが「特定技術を持った企業やIT技術者との直接契約」で、近年人材プラットフォームも拡大してきており、ギグワーカーの活用も今後もますます増えていくことが考えられます。

外部組織と連携することは、外部組織のノウハウを活用してスピーディに進められたり、先端技術をいち早く取り入れられたりといったメリットがあります。
一方で、自社のビジネスを理解してもらうのに時間がかかることや、頼り過ぎてしまうと内部にノウハウが溜まらない、各部門との連携がスムーズにいかないといったデメリットも考えられます。

DX自体が人や組織を変革することであることを考えると、あくまでリードは自社のメンバーで行い、外部人材の手を借りる部分と、自社で取り組む部分を明確にしておく必要があるでしょう。

5-4. DX人材に選ばれる企業になるために

今後、DX人材の需要はますます高くなることが予想されており、DX人材にとって快適な環境を整備しておかなければ、人材獲得の失敗や離職者の増加が起こり、DXの成功どころか前進することも難しくなってしまいます。以下は一例に過ぎませんが、労働環境や組織文化を形成していくことは重要であり、その取り組み自体が、組織の変革という意味でDXそのものにもなります。

  • 成長機会の創出(キャリア形成に有効となる機会の提供(先進技術を活用したビジネス開発、海外経験 等))
  • 人事制度の変革(専門性を評価する仕組み、相対評価によるランク付の廃止、目標管理制度の見直し 等)
  • 企業文化の変革(上流から下流までアジャイルかつ自由にPJを進められる環境、データドリブンな意思決定 等)
  • 勤務時間・場所・就業規則の柔軟性の向上(フレックス制度、リモートワーク、副業・兼業OK 等)
  • 継続的に学習できる仕組みの構築

6. まとめ

この記事では、DXの推進に必要な役職やスキル、マインド、DX人材を獲得する方法について紹介してきました。
個人の発想や構想力が勝負を決めるといっても過言ではないDXを成功させるためには、優秀な人材の確保が従来にも増して重要になってきています。
外部からの人材確保ももちろん必要ですが、大多数を占める社内人材をデジタル化することも必要となるでしょう。
まずは、各社引っ張りだこの状態にあるDX人材にとって魅力的な環境を整備し、人材要件を明確にするところから始めてみてはいかがでしょうか?

こちらもチェック!合わせて読まれているおすすめ記事
こちらもチェック!合わせて読まれているおすすめ記事

Smart Data Platform は、
お客さまのデジタル課題に合わせた
最適なサービス・プランの組み合わせを
ご提案することができます

新規導入のご相談やお見積、サービス仕様など
ご不明な点があればお気軽にお問い合わせください

お問い合わせ

このページのトップへ