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スマートシティとは? 現状・事例や課題を解説

近年、人口爆発による資源不足や都市部への人口集中といった社会問題が深刻化しており、都市環境における各種資源の最適な運用管理が求められています。このような社会的背景のなかで大きな注目を集めているのが「スマートシティ」です。本記事ではスマートシティの概要や主なメリット、実現に向けた課題などについて詳しく解説します。

スマートシティとは?

スマートシティとは?

スマートシティとは、最先端テクノロジーの活用によって人々の生活品質向上と持続的な経済的発展を可能にする先進的な都市を指します。AI技術やIoTのセンシング技術、ビッグデータ解析などを用いて社会インフラや公共サービスの最適化を図り、現状の都市が抱えるさまざまな問題を解決するとともに、安全性と利便性に優れる都市を開発することがスマートシティの目的です。エネルギー問題や環境問題、都市部への人口集中などの解決に寄与する構想として世界中で注目を集めており、国内でも行政を中心にスマートシティの実現に向けたさまざまな取り組みが実施されています。

スマートシティにおける3つの基本理念と5つの基本原則

内閣府や総務省、経済産業省など、複数の行政機関がまとめた「スマートシティガイドブック(※2)」によると、スマートシティ構想を実現するためには「3つの基本理念」と「5つの基本原則」が重要であると説かれています。まず3つの基本理念は「市民(利用者)中心主義」「ビジョン・課題フォーカス」「分野間・都市間連携の重視」によって構成されています。これはスマートシティ構想の基盤となるコンセプトです。

  • 市民(利用者)中心主義
    スマートシティの本質的な目的は人々の幸福や社会福祉の向上にあり、行政や事業者などのサービス提供側ではなく、サービスの利用者である市民が主体的に取り組むことが重要です。
  • ビジョン・課題フォーカス
    スマートシティを定着させるためには、各都市や地域が抱える現実的なニーズに対応したサービスを提供する必要があります。そのため、新技術ありきではなく、「都市や地域の課題を解決するために新技術を活用する」という発想での取り組みが求められます。
  • 分野間・都市間連携の重視
    分野や地域を越えてさまざまなデータを横断的に活用することにより、都市が抱える複合的な課題に対応し、スマートシティに対する国民の実感を高めることにつながります。

そして、この3つの基本理念を実現するために欠かせないのが、以下に挙げる5つの基本原則です。

  • 公平性、包摂性の確保
    すべての人々がスマートシティの恩恵を平等に享受でき、あらゆる企業や研究期間、市民団体などが参画可能
  • プライバシーの確保
    個人情報の保護に関する法令を遵守し、透明性の高いルールと手続きに従った上で、本人の同意を前提に個人情報の取得および提供を行う
  • セキュリティ、レジリエンシーの確保
    堅牢なセキュリティ体制と災害など想定外の事象に対する復元力を備えたシステム環境の整備
  • 相互運用性・オープン性・透明性の確保
    地域間のシステムを相互運用できるオープンなデータ流通環境と、意思決定の透明性を確保する仕組みの構築
  • 運営面、資金面での持続可能性の確保
    スマートシティ構想に参加する団体の能動的な運用体制とシステムを維持する財源の確立

(※2)参照元:スマートシティガイドブック(p.13,14)|内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省・スマートシティ官民連携プラットフォーム事務局
(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/01_scguide_1.pdf)

スマートシティの現状【2023年】

世界的な広がりを見せるスマートシティ

2000年代の初めごろから社会構造のデジタル化が加速し、スマートシティ構想が世界的な広がりを見せるようになりました。

スイスにあるビジネススクール・国際経営開発研究所(IMD)が世界の141都市を対象にデジタル技術の活用度や成果を数値化したスマートシティランキング2023年版 (※3)によると、1位はスイスのチューリヒ、2位はノルウェーのオスロ、3位はオーストラリアのキャンベラという結果でした。そのほか4位がデンマークのコペンハーゲン、5位がスイスのローザンヌ、6位が英国のロンドン、8位がフィンランドのヘルシンキ、9位がスイスのジュネーブ、10位がスウェーデンのストックホルムと、欧州の都市が上位を占めています。

アジア勢の首位は7位のシンガポールで、12位に中国の北京、16位に韓国のソウル、19位に香港がランクインしています。

(※3)参照元:Smart City Index Report 2023(p.7)|国際経営開発研究所(IMD)
(https://www.imd.org/wp-content/uploads/2023/04/smartcityindex-2023-v7.pdf)

日本でも官民連携で取り組みが活発化

国内では2016年に科学技術政策の基本指針「Society 5.0」が提唱され、官民一体となってスマートシティ構想への取り組みが活発化しています。その象徴といえるのが、内閣府や総務省、経済産業省、国土交通省などが共同で運営する「スマートシティ官民連携プラットフォーム」です。これは公共機関と民間企業が協働でスマートシティ構想を推進するための組織で、府省庁や地方公共団体、研究機関、大学、民間企業などが参画しています。スマートシティ事業や参加団体の連携支援が主な活動内容となっており、官民連携でSociety 5.0の実現に向けた取り組みが推し進められています。

スマートシティが実現するとどうなる?

QOL(生活の質)が向上する

スマートシティの実現によって得られる大きなメリットは、人々の物質的・精神的な豊かさの向上です。都市機能のスマート化が進むことで、再生可能エネルギーの活用によるクリーンな生活環境、自動運転技術の確立による移動の効率化、遠隔診療による医療のアクセシビリティ向上、スマートグリッドによる電力供給の安定化などが期待できます。社会インフラの利便性と社会福祉の高品質化により、住民のQOL(Quality of Life=生活の質)の向上が期待できます。

環境に配慮した社会が実現する

デジタル技術の活用による環境問題へのアプローチも、スマートシティの主要な目的の1つです。国連人口基金(UNFPA)の調査(※4)によると、世界の人口は80億人に到達し、各地でエネルギー消費量や二酸化炭素排出量の増大、急速な都市化による環境悪化と過度な交通渋滞などの問題が懸念されています。スマートシティでは最先端のデジタル技術を駆使して都市ごとのエネルギー需要を可視化することで、エネルギーの効率的な生産と消費が可能になります。

また、スマートシティでは莫大な電力が必要となりますが、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの有効活用や、石油・電力・ガスに代わる水素エネルギーの活用によって二酸化炭素の排出量を削減することで、地球規模での環境汚染問題を解決し、循環型の社会が実現できます。

(※4)参照元:世界人口白書2023(p.4)|国連人口基金(UNFPA)
(https://tokyo.unfpa.org/sites/default/files/pub-pdf/swop2023-english-230329web_0.pdf)

災害の被害を抑えられる

スマートシティの実現により、自然現象が引き起こす突発的な災害の被害を軽減することが可能です。スマートシティではIoTのセンシング技術やAIの機械学習モデルなどを活用し、地域や都市の状況をリアルタイムに監視できる体制を構築できます。IoTセンサーが地震情報や洪水情報などのデータを収集・蓄積し、AIが高度な解析技術を用いて予測モデルを組み立てることで災害の兆候をいち早く検知できるため、災害への早期警戒や復旧活動の迅速化に寄与します。

犯罪リスクを軽減させる

IoTのセンシング技術やAIの解析技術は、災害の兆候を早期発見するだけでなく、犯罪行為の抑止力としても有効です。公共施設や交通インフラに高度な監視システムが設置されることで、どこで何が起きているのかを網羅的に把握できるため、犯罪の防止と容疑者の迅速な特定につながります。また、AI技術を用いた犯罪予測モデルが確立されれば、犯罪発生率そのものが減少し、都市の安全性と住民の生活品質の向上が期待できます。

交通渋滞を回避できるようになる

スマートシティ構想における重要課題の1つが、スマートモビリティの実現です。スマートモビリティとは、移動や交通に変革をもたらす先進的なテクノロジーの総称で、IoTのセンシング技術やAIの分析技術を活用した交通の省人化・自動化を意味します。自動運転技術の確立によってスマートモビリティ社会が到来すれば、信号情報や危険情報が自動運転車に提供されるため、交通渋滞の緩和や安全性の向上、移動の平易化・高速化などの実現に貢献します。

スマートシティ実現に向けた課題

システム障害により都市機能が停止するリスクがある

スマートシティを支えているのは、IoTやAI、クラウドサービスなどのデジタル技術であり、それらのITインフラを構築しているサーバーやネットワーク機器などに障害が発生した場合、都市機能そのものが停止するリスクを抱えています。また、現代はテクノロジーの進展に伴ってマルウェアや不正アクセスなどのサイバー攻撃も巧妙化しているため、情報セキュリティ上の事故や事件を懸念する声も少なくありません。だからこそ、5つの基本原則1つとして「セキュリティ、レジリエンシーの確保」が重視されています。

防犯対策とプライバシー保護のバランスを模索している

スマートシティ構想を実現する上で重要なテーマの1つが、セキュリティ対策とプライバシー保護のバランスをどのように取るかという問題です。サイバー攻撃による情報流出が懸念されるスマートシティでは、厳格な認証システムやアクセス制御の仕組みが求められます。高度なセキュリティ要件を満たすためには、住民のプライバシーに踏み込まざるを得ない可能性があるため、さまざまな場面で取得する個人情報の用途や目的に関して、住民の理解を得なくてはなりません。「プライバシーの確保」は、スマートシティの基本原則の1つであり、いかにして個人情報の保護を徹底するためのルールや制度を構築するかが重要な課題となります。

一部企業がデータを独占する可能性がある

モビリティサービスのプロバイダーがスマートシティ事業を通じて収集したデータを独占し、市場の健全な競争性を阻害することも考えられます。これはスマートシティの5つの基本原則「公平性、包摂性の確保」と「相互運用性・オープン性・透明性の確保」に反する行為です。こうした独占構造は市場の新規参入を困難にし、スマートシティ構想の推進を阻む要因となります。スマートシティ構想において、データは地域・都市の共有財産であり、その使用に関して公平性と平等性を確保する仕組みを整備する必要があります。

インフラ構築のための莫大なコストがかかる

スマートシティを実現するためには、ネットワーク環境の整備や情報共有基盤の構築、レガシーシステムの刷新など、ITインフラを最新の状態にアップデートすることが欠かせません。こうした環境整備を都市規模で実行する必要があるため、ITインフラの構築に莫大なコストが生じます。また導入時のイニシャルコストだけでなく、ITインフラの保守・運用管理やIT人材の採用・育成におけるランニングコストも必要です。そのため中長期的なビジョンにもとづく戦略の策定と費用対効果を考慮した資金計画が求められます。

スマートシティの取り組み事例

静岡県裾野市

2020年1月、トヨタ自動車は「Woven City(ウーブン・シティ)」という実証都市を静岡県裾野市に構築するプロジェクトを発表しました。このプロジェクトはMaaS(従来の交通サービスに自動運転やAIなどの最新技術を掛け合わせた次世代型の交通サービス)や、AIやIoTを活用して生活家電や鍵、換気システムなど住宅設備の管理をシステム化するスマートホームを導入した都市を新たに作り上げ、その有効性や価値を検証するものです。都市の広さは約70.8万平米で、同社の従業員やプロジェクト関係者など約2,000人が生活することを想定しており、2024年ごろに第1期エリアがオープンする予定です。

千葉県柏市

千葉県の柏市は2005年につくばエクスプレス線が開業したことを契機に、官民一体となって課題解決型のまちづくりを推進してきました。2011年には都市開発プロジェクト「柏の葉スマートシティ」を始動し、スマートシティのコンセプトを取り入れた持続可能な社会の実現を目指しています。具体的な取り組み事例としては、自動運転バスや駅周辺の交通モニタリング、センシング技術とAI解析による道路の事故予防、データにもとづく個人向けの健康サービス、遠隔チェックインによる患者サービス向上などが挙げられます。

北海道札幌市

北海道の札幌市では1997年に「札幌市情報化構想」を策定し、インターネットを活用した公共施設の予約システム導入や基幹系システムの再構築といった取り組みをいち早く推進してきました。2017年には「札幌市ICT活用戦略」を打ち出し、データ駆動型のまちづくりを推進しています。また、健康長寿社会の実現に向けた「歩行促進」を推進しており、日々の歩数に応じて地域共通のポイントが蓄積される「さっぽろ圏ポイントアプリ」をリリースするといった施策も実施しています。

スマートシティを支える基盤Smart Data Platform

NTT Comが提供する「Smart Data Platform」は複数のサービスで構成されるデータ利活用プラットフォームで、スマートシティの基盤となるさまざまなソリューションが集約されています。たとえば「AI空調制御クラウド」は、各種センサーが収集したデータと人流を考慮しながら、AIが空調を自動制御するソリューションです。空調の消費エネルギー量と運用コストを削減しつつ、深層強化学習で算出された空調制御シナリオが人々の暮らしにおける快適性をバックアップします。

また、高精度な人物検出・追跡技術を防犯やコロナ対策、マーケティングなどに活用するAI映像解析ソリューション「COTOHA Takumi Eyes」や、利用者のリアルタイムな状況に即したおすすめの観光スポットや飲食店などの情報を提供するソリューション「FUN COMPASS」なども提供しています。

その他、スマートシティを支えるSmart Data Platformについて詳細を知りたい方は以下のページをご覧ください。

スマートシティの実現によって人々の暮らしや環境に配慮した豊かな社会の到来が期待される一方、現状ではシステム障害による都市機能の停止や情報セキュリティ事故などを懸念する声も少なくありません。事業活動を通じてスマートシティの実現を目指すのであれば、セキュリティとレジリエンシーに優れるシステム環境の構築が重要事項となります。

まとめ

スマートシティ構想化では、IoTやAIを駆使した街づくりを行うことで、災害被害の削減や犯罪リスクの軽減、交通渋滞の回避といった住民の生活の質や利便性の向上を目指します。一方でネットワーク障害時に都市機能が停止するリスクがあるほか、セキュリティ対策とプライバシー保護の両立が難しいなど、懸念事項も少なくありません。スマートシティ構想の実現に向け、先進的なシステム環境の構築を目指す企業は、セキュリティ性に優れたデータ利活用プラットフォームSmart Data Platformの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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