※この記事は2019年7月の情報です。
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com) 西日本営業本部は、2019年6月にNTTワールドエンジニアリングマリン株式会社(以下、NTT-WEマリン)の長崎事務所にて海底ケーブル敷設船「きずな」見学会を開催しました。「きずな」は海底ケーブル網の敷設および維持運用だけでなく、大規模災害時の被災地復旧にも重要な役割を担っています。停泊中の「きずな」に乗船して実際に見学していただくことにより、日常では目に触れることの少ない、グローバルに通信を支えるNTTグループの幅広い取り組みを理解していただくことができました。
西日本営業本部エリア全域から来られた、製造、サービス、運輸、鉄道事業、ISP(インターネットサービスプロバイダー)事業など、さまざまな業界のお客さまとのエンゲージメントの強化にもつながるイベントとなりました。
以下に本イベントのハイライトを紹介します。
見学会の概要
2019年6月18日(火)、19日(水)の2日間にわたり、NTT-WEマリンの長崎事務所にて、海底ケーブル敷設船「きずな」の見学会を開催しました。本イベントは、海底ケーブルの敷設に代表される海洋エンジニアリング事業におけるNTTグループの取り組みを紹介することにより、通信・サービスのプロとしてのNTT Comグループに対するさらなる信頼をお客さまから得て、新たなビジネス創出およびエンゲージメント強化につなげることを目的としています。
現在は主に海外で活躍しているケーブル敷設船「すばる」の見学会と合わせて5回目となる長崎でのケーブル敷設船見学には、東は福井から西は広島まで、2日間で延べ8社15人のお客さまに参加いただきました。
NTTグループの海洋エンジニアリング事業と「きずな」
NTT-WEマリンは、NTTグループ唯一の海洋エンジニアリング会社として1998年に設立されましたが、その起源は明治時代にまでさかのぼる、海底ケーブルの構築・保守のパイオニア的事業者です。
今回見学したケーブル敷設船「きずな」は2017年4月に就航したばかり。ROV(Remotely operated vehicle/遠隔操作型無人潜水機)をはじめとする最新技術を搭載した最新鋭の海底ケーブル敷設船と、大規模災害時の復旧支援業務など行う多目的作業船という二つの顔を持っています。
【参考】全長:108.64m、総トン数:8598t、航続距離:9500海里(約30日間)
乗船前の準備運動(オリエンテーションと災害対策への取り組み紹介)
船舶見学に先立ち、NTT-WEマリンの会議室にて、オリエンテーションとNTTグループの災害対策への取り組みをお客さまにご紹介しました。NTT Com西日本営業本部 江村俊英本部長のあいさつに続き、NTT-WEマリンの野中浩司課長から、同社の業務概要と、「きずな」の多目的作業船としての一面をご紹介いただきながらオリエンテーションは進みました。
その後、NTT Comカスタマサービス部危機管理室の篠原裕二主査から「NTTグループの災害対策への取り組みについて」との題目でプレゼンテーションが行われました。過去の大きな災害時の復旧にNTTグループの力を結集して取り組んだ事例の紹介が、くしくも直前にご覧いただいた「きずな」の被災地支援機能とリンクし、お客さまが大きくうなずかれる場面も。
船内での安全確保のためのヘルメットと手袋を着用いただき、いよいよきずなの見学に向かいます。
乗船!~ビル5階相当のブリッジで多彩な通信機能を見学~
既設の海底ケーブルを保守する貯蔵庫を見学後、停泊しているきずなの全景前で記念写真などを撮りながら、乗船タラップに向かいます。乗船されたお客さまは、係員の誘導で「現場」の匂いがする狭くて急な階段をどんどん上り、一気に船内の最上階である船橋まで向かいます。船橋とは、いわゆる操舵室で、「きずな」の航行をコントロールするスペースです。NTT-WEマリンの方にさまざまな計器や装備を丁寧に説明いただき、写真撮影も自由にということでしたので、お客さまは普段ご覧になる機会がほとんどないであろう、レーダー装置や、ジョイスティック型の操縦桿などをカメラに収めておられました。
船橋からさらに1階上ったところが、きずなの屋上に相当するブリッジです。ビルでいうと5階から6階の高さになるため見晴らしは大変良いものの、ふと下を見ると足がすくんでしまいます。長崎市街も遠くに眺めながら各種通信用のアンテナが装備されたブリッジを見学。「きずな」には災害時には携帯電話の基地局機能を果たす通信設備も搭載されています。有事も想定し、安心・安全な通信を提供するための多彩な設備を目の当たりにしたお客さまに、そのスケールの大きさを感じていただきました。
最先端のシステムと、乗務員が快適に作業に従事できる船内環境
もう一度船橋に戻り、船の航行やケーブル敷設にあたっての調査、設計に関する最新システムの説明を受けた後、一行は上ってきた階段を下りながらさらに船内を見学します。海底ケーブル敷設を行う際、洋上で潮の流れや波の高さ、風等の影響を考慮する必要がありますが、「きずな」は目標とする座標位置から30cm以内の誤差で停泊位置を保つことができる「DPS」(Dynamic Positioning System)を搭載しており、精度の高いケーブル敷設を悪天候下でも実現可能なことをご説明しました。
続いて、水深2500mでのケーブル敷設や修理が可能なロボット(ROV)「CaRBIS-Ⅳ」。史実の豪華客船の海洋事故を扱ったハリウッド映画の冒頭シーンでおなじみのロボットです。普通の見学ではおそらく注目することはないだろうロボット下部にもペンライトを当てて、ご紹介しました。
※お客さまには特別にROVの制御室も見ていただきました。
また、数カ月にわたる航海が日常であるケーブル敷設船では、乗組員の皆さんが快適に作業に従事できるよう、船内の環境も充実しています。今回は、船長執務室、レクリエーションルーム、食堂などをご案内いただきました。
4回の出動で米国本土まで敷設可能な2500㎞のケーブルタンク!
船内見学もいよいよ大詰めです。船尾にあるケーブルを海上に下ろしたり、引き上げたりするための作業甲板を見学し、階段というよりはもう「はしご」といった方が良いくらいの急勾配を下って、船の底へと向かいます。
ここは、船内のスペースで最も珍しい場所かもしれません。海底に敷設する2500㎞ものケーブルを巻いて保管するケーブルタンクです。実は、作業区画である上層階からものぞき込んでいた場所なのですが、実際に足を踏み入れてみると、その容積に圧倒されます。このスペースにケーブルをどのように収納するのかという説明を、お客さまだけでなく同伴している営業担当者も熱心に聞き入っていました。
海底線の歴史をじっくりと
1時間半にわたる船内見学を終えて地上に戻ってきたお客さまは、過酷な上り下りに少々お疲れ気味ながらも、満足そうな表情で今まで乗船していたきずなを眺めておられました。
コースの最後は、NTT-WEマリンの敷地内に建てられている「海底線史料館」の見学です。長崎県から「存置してほしい」と要望があり、平成21年には経産省より近代化産業遺産として認定された、れんがづくりの美しい建物には、海底線事業の変遷を遺すためのさまざまな資料が展示されています。歴代のケーブル敷設船の模型をはじめ、古いユニフォームや、腐食して断線したケーブルの実物など、ここでしか見ることができない貴重な展示品に、現役の船内とはまた趣の異なる興味をお持ちいただけたのではないでしょうか。
最後に
2日間とも2時間以上にわたっての見学でしたが、ご参加いただいたお客さまにご満足いただくことができ、さっそくNTT Comの災害対策に関する資料のリクエストも頂戴しました。海底ケーブル敷設船見学という特別な体験を通じて、NTT/NTT Comグループが取り組む安全・安心な通信を支えるインフラへの取り組みを知っていただき、キャリア~サービスプラットフォーム提供事業者としても改めて信頼を頂くと同時に、エンゲージメントを強化し、案件創出に必要な信頼を改めて頂くことができたことを実感しています。
今回のイベントは、船や史料館というコンテンツが魅力的であったというだけではなく、ゲストの安全を第一に考慮された丁寧なオペレーションを設計・遂行していただいた、NTT-WEマリンのスタッフの皆さまの力添えがなければ実現できませんでした。改めて同社の皆さまの「現場力」の高さに敬意を表するとともに、心から感謝します。
今後もNTT-WEマリンと連携し、新たな工夫を加えながら、きずな見学のイベントを継続して開催していきたいと考えています。