※この記事は2019年10月の情報です。
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は2019年4月に、協業/共創を通じて新たなアイデアの社会実装と事業化を目指すNTT Communications Open Innovation Program(以下、NTT Com Open Innovation Program)をスタート。4つのテーマにおいて、6パートナーとNTT Comの各組織の担当者が一緒に事業化を見据えたアイデア創出や、NTT Comのリソースを活用した実証実験(PoC)を進めてきた。2019年8月29日には、「未来のコミュニケーションを、共に考える一日」と題して、各グループが試行錯誤を繰り返し検討してきた成果を披露する中間成果発表会「OPEN INNOVATION DAY」を開催。どのようなビジネスアイデアが披露されるのかに関心を寄せる300人以上の来場者が詰めかけ、会場は熱気に包まれた。
※YouVR Inc.は現在、3i Inc.に社名変更しています。
「NTT Comの取り組みに期待する」(内閣府・石井氏)
OPEN INNOVATION DAYは、本社がある大手町プレイス(東京都千代田区)28階のラウンジスペース「ガレージ」で行われた。オープニングトークとして、内閣府 企画官の石井芳明氏が登壇した。
石井氏は、内閣府が取りまとめる日本オープンイノベーション大賞にも事務局として携わっている。その活動の中で気づいたこととして、オープンイノベーションで成果が出ているプロジェクトには、「トップのコミットメントがある」「現場の方々の熱意がある」「仕組みを作っている」という3つの特長があると話した。その上で「NTT Comは先駆的なことに取り組まれていると思いますし、NTTグループもリードを取っている。こういう取り組みがどんどん続き、広がっていくことによって、わが国のオープンイノベーションが進んでいくことを祈念しています」と話し、オープニングトークを結んだ。
NTTデータ、NTT東日本におけるオープンイノベーションの取り組み
続いて、NTTグループ2社による共創事例の紹介が行われた。NTTデータの残間光太朗氏は、世界18カ国20都市で開催するオープンイノベーションプログラム「豊洲の港から」について、NTT東日本の山本将裕氏は、有志による草の根活動から立ち上がったアクセラレータープログラム「LIGHTnIC」について紹介した。
NTTデータ「豊洲の港から」(残間氏)
NTTデータの残間⽒は法被を着て、「ハア 踊り踊るなら チョイト 東京⾳頭 ヨイヨイ」と東京⾳頭を歌いながらステージに上がり、「これは⽇本の伝統的なフェスティバルの⾳楽ですよね。フェスティバルは、⺠族も⾔葉も風⼟も、すべて巻き込んでみんながハッピーに1つになれる。僕らはそんなイノベーションを創っていきたいんです。だから“ハッピ”を着るんです」とその意図を説明。続けて、NTTデータのオープンイノベーションに向けた取り組みや事例を紹介した。
オープンイノベーションの成功の秘訣(ひけつ)として、残間⽒は「個⼈と個⼈において、圧倒的な信頼関係を築けるかにかかっています」と指摘。「制度や仕組みの話もありますが、最後はやる⼈がどれだけそのパッションを持てるか、そして幹部と実⾏責任者、アクセラレーターの3⼈のパッションが合わさることで、オープンイノベーションは必ず成功します」と語った。
NTT東日本「LIGHTnIC」(山本氏)
⼭本⽒は、LIGHTnICが当初有志プロジェクトで進められており、「Googleの20%ルールのように本業以外で取り組んでいた」と説明した。チームでアウトプットを積み重ねるうちに、「会社の中でもすごく注目されるようになり、この取り組みを応援しなきゃいかんという気運が⾼まった。今は有志のプロジェクトではなく、100%業務として取り組んでいる状況です」と述べた。最後に「NTT Comさんとも何か⼀緒に取り組みながら、NTTグループを盛り上げていけたらと思っています」と連携を呼びかけた。
6社との共創によるインキュベーション成果を発表
中間成果発表では、6グループがそれぞれプレゼンテーションを行った。審査員による評価が行われるとあって、いずれも熱量の高い発表となり、参加者は真剣に耳を傾けていた。ここでは発表の様子を写真でご紹介する。
※各発表内容についてはこちら(別サイトに移動します)をご覧ください。
テクノロジーリーダー3人が語る未来のコミュニケーション
審査が行われている間、「テクノロジーの進化によって変わる未来のコミュニケーション」と題し、ディスカッションを行った。登壇したのは、株式会社エクサウィザーズ取締役会長である春田真氏、ユニロボット株式会社代表取締役の酒井拓氏、そしてNTT Com 技術開発部の山下達也部長という、テクノロジーリーダーの3人だ。
テーマの1つとして挙げられたのは、テクノロジーの進化がもたらすコミュニケーションの変化について。春田氏は「これまでのように対人ではなく、対自分とのコミュニケーションで自分のことを理解していく、そういった方向でのテクノロジーのサポートが出てきてほしい」と話した。
家族の執事として日常生活の提案からコミュニケーションまで実現するロボット「ユニボ」を開発した酒井氏は、ペット型ロボットと人型ロボットの違いについて「ペット型は癒やし系なのですが、人型で会話ができてしまうと、人はどうしても賢さを求めてしまう」と説明。その上で、「人からの期待というところで、人型ロボットはペット型とはまた違う存在かなと思いますし、より賢くしなければというところでハードルが高い」と、ロボット開発の難しさを話した。
山下部長はNTTグループとして取り組んでいることの1つとして「IOWN(Innovative Optical&Wireless Network)構想」を紹介した。「通信インフラは現状、“電気→光→電気”と変換せざるを得ないので、遅延はどうしても発生します。もちろん遅延の原因はそれだけではありませんが、“オール光”でやれば、遅延は究極に近づくレベルで抑えられる。また電力消費量も抑えられるのです。そのための基礎研究を、ノーベル賞を取るぐらいの勢いでできるよう、NTTグループとして、大阪万博ぐらいのタイミングではちょっとお見せできるようにしたいと個人的には思っています」と語った。
オーディエンス賞/審査員特別賞/最優秀賞が決定!
「オーディエンス賞」「審査員特別賞」「最優秀賞」は、審査員(下記)による評価で決定した。各パートナー企業の受賞コメントとともにご紹介する。
- 審査員
- 石井 芳明氏 内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 イノベーション創出環境担当 企画官
- 室賀 文治氏 合同会社ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル リアルテックファンド グロースマネージャー
- 稲川 尚之氏 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長
- 中村 亜由子氏 eiicon company 代表/founder
- 丸岡 亨氏 NTT Com 副社長/CDO
オーディエンス賞
「鉄塔を活⽤した⼩型ライダーの展開による⾵況データ活⽤の実現」(メトロウェザー × NTT Com)
メトロウェザー株式会社 東氏
「オーディエンス賞をいただき、ありがとうございます。ベンチャーをやっていると苦しいこともたくさんありますが、世の中にあるペインを解決することがわれわれの使命だと思っているので、これからもよろしくお願いいたします」
審査員特別賞
「鉄塔を活⽤した⼩型ライダーの展開による⾵況データ活⽤の実現」(メトロウェザー × NTT Com)
「テレイグジスタンスロボットを活⽤した遠隔地における専⾨作業の実現」(東京ロボティクス × NTT Com)
メトロウェザー株式会社 東氏
「夢に向かって進んでいるわけですが、われわれはリアリティのあるところもしっかり見ています。その夢の部分とリアルの部分を掛け合わせてしっかりやっていきたいと思います」
東京ロボティクス株式会社 坂本氏
「最高峰の通信技術と最高峰のVR技術、最高峰のロボット技術が組み合わさったときに、すごいことができるんじゃないか。プログラムが始まって4カ月でここまでできたということは、1年あればどんなことができるんだろうと非常にワクワクしています」
最優秀賞
「データセンターにおける3D Viewを含む画像データプラットフォームの実現」(YouVR Inc. × NTT Com)
YouVR Inc. Kim氏
「こういった機会が得られたことがうれしかったです。自分自身にとって必要だったことと、周りの皆さんに喜んでもらえることを常に考えて作っているところです。引き続きご支援をよろしくお願いいたします」
「NTT Com Open Innovation Programをこれまで以上にやっていく」(稲葉 経営企画部長)
懇親会では、経営企画部の稲葉部長がマイクの前に立ち、この3カ月のPoCで各案件の内容が進化し、次に向けての期待が大きくなっていることへの喜びを語った。続けて、「NTT Comにとって、外部の方と組んでイノベーションにどんどんトライすることは価値のあることであり、これまで以上にやっていかなければならない」とし、「この懇親会の中でオープンイノベーションの種が生まれると非常にうれしい。NTT Comとして場の提供も含めて支援していきたい」と、今後の決意を語って乾杯の音頭を取った。
内閣府企画官の石井氏、NTTデータの残間氏、NTT東日本の山本氏と、オープンイノベーションに最前線で取り組む方々のピッチは非常に興味深く、6チームの発表も将来に大きな期待を抱かせるものだった。この日のイベントは、NTT Com Open Innovation Programのみならず、NTT Comにおける今後のオープンイノベーションに関連した取り組みにおいても、大きな意味を持つものとなったのではないだろうか。