2015年3月9日
Virtual Engineering Community
NTTコミュニケ―ションズ株式会社
VECとNTTコミュニケーションズ、
製造現場とクラウドをつなげた高セキュリティな
「Industry4.1J」実証実験プロジェクトを開始
~IoTにおけるセキュリティ面の課題を解決する日本版「Industry4.0」で
産業界での安全確保・効率化を加速~
製造業、ビル、エネルギーおよび電力業界を対象にしたソリューション普及活動を展開している任意団体Virtual Engineering Community(略称:VEC)とNTTコミュニケーションズ株式会社(略称:NTT Com)は、工場・電力プラント・ビルなどの生産性向上や保全業務効率化をセキュアに実現できる環境「Industry4.1J」(【別紙1】参照)を目指し、監視システムの運用にあたって発生する現場とクラウド間の通信頻度・速度・量が現在設置されているネットワーク機器で実際に対応できるのかなど、生産現場の効率化に必要な各種の技術要件を確認する実証実験プロジェクトを、2015年3月10日より開始します。
本プロジェクトの成果は一般公開され、VEC会員企業をはじめ産業分野に携わる全ての企業が活用できます。これにより、例えば、世界中の工場の正常な稼働状況をクラウド上の監視システムでリアルタイムにシミュレートし現場の状況と比較することで、現場を制御するシステムの異常な運転状況を把握したり(図1)、化学プラントでの現場のやり取り・操作ログデータなどをクラウド上にリアルタイムにバックアップすることで、万一現場で爆発事故が発生し事故発生前の記録が一切焼失しても、クラウド上の記録をもとに事故の原因を迅速に究明する、といったソリューションが実現可能となります。
本プロジェクトにおいて、VECは企画・運営窓口・ソリューション検証を担当します。またNTT Comは、セキュアなクラウド環境「Bizホスティング Enterprise Cloud」とセキュアなVPNネットワーク「Arcstar Universal One」を提供し、クラウドからネットワークまで本実証実験に必須なICTインフラを提供します。
(図1)クラウドを使った監視システムのイメージ
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1.背景・目的
ドイツやアメリカが推進している「Industry4.0」(【別紙1】参照)では、産業分野に焦点を当てて、インターネットを利用して現場の情報をパブリッククラウドに蓄積しリアルタイムに分析・活用することで、「第4次産業革命※1」と呼べるような更なる社会革新(商品の品質向上・エネルギー利用効率化など)を目指しています。
ところが、制御システムを標的にしたサイバー攻撃の脅威が高まってきた2009年頃より、日本企業をはじめ多くの企業は、制御システムや装置、機械をウイルスから守り事故を防ぐために、現場の制御システムネットワークをインターネットから切断するという対策を取ってきました。インターネットから切断された現場では、生産活動で発生する様々なデータをクラウド上に収集することが不可能になるため、クラウド活用による現場の改善活動を実現することができません。このように、「Industry4.0」では、サイバー攻撃が恒常化する世界でクラウドと生産現場間を安全に接続することが大きな課題の一つになっていました※2。
本プロジェクトでは、この課題をNTT Comが提供するセキュアなプライベートネットワーク・クラウドサービスを利用することで克服することを目指します。
2.「実証実験プロジェクト」の詳細
「Industry4.1J」を実現するため、以下の内容の実証実験を実施します。
<クラウド・現場間のセキュアな通信に必要な要件>
[1]セキュリティ品質に優れた最新の通信プロトコル「OPC UA※3」の採用
現行の制御装置にセキュリティ品質に優れた最新のセキュアな通信プロトコル「OPC UA」を適用した場合でも正常に通信ができることを実験します。
<監視システムの正常な稼働に必要な要件>
[2]リアルタイムかつ、大容量・高速な通信の実現
「Industry4.0」で望まれているシステムでの異常検知やクラウドへの現場データのミラーリング(バックアップ)をリアルタイムに実現するためには、クラウドと現場間で現場からの大量のデータを高速に通信し合う必要があります。そこで、クラウドや制御システムに大容量かつ高速なデータを実際に流通させてみることで、クラウドと現場間で求められる接続構成および仕様を実験で確認します。
[3]クラウド上での監視システムの正常な稼働
VEC会員企業から提供される監視システムをクラウドに初めて導入し、該当システムが実際にクラウド(「Bizホスティング Enterprise Cloud」)上で稼働するか実験します。
[4]現場の施設・機械への監視システムの適用
実際に現場で運用されている制御ロジックを監視システムに組み込み、システムが正常稼働状況をシミュレートできるかどうか、また、異常の原因が例えば機械のバルブの故障なのか、外部から侵入したマルウエア※4なのかをシステムが判断できるかどうか実験します。
3.参加企業名(五十音順)
○協賛会員
NTTコミュニケーションズ株式会社
○正会員
アズビル株式会社/アズビルセキュリティフライデー株式会社
OSIsoftジャパン株式会社
サン電子株式会社
ジェイティエンジニアリング株式会社
シュナイダーエレクトリック株式会社
株式会社立花エレテック
株式会社デジタル
株式会社ベルチャイルド
富士電機株式会社
マカフィー株式会社
村田機械株式会社
株式会社安川電機
4.今後の展開
今後については、本プロジェクトの成果を一般公開するとともに、VEC会員が本プロジェクトの成果を踏まえ、VEC会員が提供するサービスや制御製品とNTT Comが提供する「Arcstar Universal One」・「Bizホスティング Enterprise Cloud」を組み合わせることで、日本国内や海外に多数の生産拠点を持つ企業への高度で安全な現場改善ソリューションの提供を目指します。
また、VECは、制御システムセキュリティ対策の企業向けイーラーニング教育事業を2015年4月にスタートすることで、今後のセキュアな製造現場の実現を担う人材育成についても取り組んで参ります。
関連リンク
※1:機械化(第1次)、電力活用(第2次)、自動化(第3次)に続く産業革命。第4次産業革命はITを駆使したリアルタイムな現場改善とも言える。
※2:「Industry4.0」の課題としてはこのほかに、ネットワーク上で接続される無数の機器の通信手段やデータ形式の標準化、生産管理システムなど複数のシステムが接続することによる効率的なシステム管理、本技術の管理に必要な知識を持つ人材の育成などが挙げられる。
※3:OPC Foundationが2008年に発表した通信プロトコル。複数の工場の制御装置が相互接続する際の共通プロトコルとして開発された。主な特徴の一つに、セキュリティの観点から安全に通信できるという特徴がある。
※4:システムなどで不正かつ有害な動作を行うよう設計された悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称。