コロナ禍でオンラインライブ市場が成長している
新型コロナウイルスの流行は、2020年以降さまざまな業種の市場規模に変化を及ぼしました。
音楽コンサートやステージでのパフォーマンスイベントといった「ライブ・エンタメ業界」も、大きく変わった業界のひとつです。同業界の市場規模はコロナ前と比較して大きく数値を減らしています。2021年には回復基調となったものの、それでもコロナ前の数値には及んでいません。その一方で急成長を遂げているのが、チケット制の有料オンラインライブ市場です。
オンラインライブが通常のライブと大きく異なるポイントとして、チケットの争奪戦がない点が挙げられます。オフラインのライブであれば、会場のキャパシティに限りがあるため、チケットの数は限られていましたが、オンラインであれば基本的には上限がないため、希望者が全員鑑賞できることになります。もちろん、会場までの交通費や宿泊費といった費用もかからないうえ、アーカイブ配信に対応しているライブであれば、開催後に見返すことも可能です。
オンラインライブは一方向なコンテンツなのか?
オンラインライブにはこのようなメリットがある一方で、課題やデメリットもあります。たとえば、好きなアーティストと同じ場に居合わせることができない点、会場独特の雰囲気を味わうことができない点、カメラが撮影した映像でしか視聴できないため、どうしても画面を見るだけという一方向なコンテンツになってしまう点などが挙げられます。
これらの課題を解消する手法としては、ファン同士でコミュニケーションしながら視聴を行うチャット機能や、そのチャットのコメントが会場のスクリーンで流れる演出などが挙げられます。ほかにも、ライブの出演メンバーをオンライン用にアバター化したライブなど、オンラインライブ独自の演出方法もあります。
オンラインライブはオフラインのライブと比べると、画面を挟んでいる以上、どうしてもリアリティが薄れてしまいがちです。そのマイナス面をテクノロジーでどうやって補うのか、ライブを開催するホスト側の工夫が求められるといえるでしょう。
あわせて読みたい記事
オンラインライブに特化した配信スタジオがある
オンラインライブに“ライブ感”が求められている中、オンラインライブ配信専用のスタジオが各地にオープンしています。こうした専用のスタジオには、カメラや音響照明設備、無線LANなどオンラインライブを行うための設備が用意されており、利用料金を支払うだけで簡単にライブ配信ができます。
たとえば、NTTドコモでは、アーティストのファンクラブプラットフォーム運営を事業とするTHECOO(ザクー)社との提携により生まれたライブ配信スタジオ「BLACKBOX³」を東京・新宿御苑に設けています。
BLACKBOX³は、ライブ配信のための最先端のテクノロジーが用意されています。たとえば、同スタジオに常設されているメディアサーバー「disguise vx2」は、大規模ライブやフェスにおけるLED演出やプロジェクションマッピングに利用されるもので、VRやARといったXR技術を活用したハイクオリティな演出が可能となっています。
屋外のオンラインライブを円滑に行う「LiveU」とは?
オンラインライブは、BLACKBOX³のようにスタジオで配信を行うだけでなく、スポーツや取材中継のように、屋外で撮影した映像や音声を配信することも可能です。
ただし、4Kのようなデータ量の多い映像を、4Gのモバイル回線でアップロードする場合は、映像が安定して転送されず、映像が乱れる恐れがあります。加えて、SIMあたりの通信料や速度制限が長時間の高画質伝送にマッチせず、価格が高いという課題もありました。
ドコモビジネスでは、こうした屋外でのライブ配信を可能にするための装置として、5Gに対応した小型映像中継機「LiveU」の提供も行っています。
Live Uは、5Gのモバイル回線・LAN・Wi-Fiなど複数のネットワークに分散する技術によって、映像や音声といったデータを安定に伝送する装置です。4Kの映像に加えて、最大4つのカメラのマルチ伝送もできるため、幅広い場面で高画質な映像中継を行えます。
LiveUはすでにライブ配信やスポーツ中継で利用されています。ある音楽祭では、映像を通じて、異なる場所で同時に演奏する様子を配信する際に活用されました。LiveUの伝送システムを利用することで、タイムラグが少ない状況で演奏ができ、臨場感あふれる映像を映すことにも成功したといいます。
LiveUを購入したあるスポーツチームでは、練習中継やファン向けの動画配信に使用しています。さらに、持ち運びやすさを活かして、試合中継でも利用しています。高精度で高画質の映像を提供し、既存のファンの満足度を高めながら、新たなファンの獲得にもつなげることが期待できます。
オンラインライブは、技術の進歩によって、これまで以上に高品質な配信ができるようになっています。今までライブ配信をやったことがない企業も、ライブ配信によって新たな可能性が見いだせるかもしれません。
※本記事は2022年9月時点の情報を元に作成されています。