在宅勤務で「雑談」がなくなったことが、ビジネスに悪影響を及ぼしている?
Profile
イノベーションセンター
デザイン部門KOEL
武田透摩
※本インタビューはWeb会議にて実施しました
NTT Comの武田透摩は、NeWork™のプロジェクトが立ち上がった背景に、リモートワークによって、業務におけるコミュニケーションの絶対量が減少したことを指摘しました。
「リモートワークを導入している企業は、メンバーがそれぞれ別々の場所で働くようになったことで、あらかじめ設定されたミーティング以外のコミュニケーションが希薄化してしまっています。ちょっとした雑談や相談をする機会がなくなったことで、チームメイトがいま何に取り組んでいて、何に困っているのかといったことを把握することが難しくなっているのではと懸念しています」(武田)
武田を始めとするプロジェクトチームは、先進的な取り組みをしているユーザーやさまざまな業種で働く企業に対し、在宅勤務やリモートワークを主流とした働き方における課題を調査。その結果、「コミュニケーションの絶対量が不足」「会議時間以外の余白の消失」「新しい気付きや雑談の減少」という3点が課題として挙がったといいます。
もちろん、Microsoft Teamsなどのオンライン会議ツールを使えば、お互いの顔を見ながらコミュニケーションすることは可能です。とはいえ、ちょっとした雑談のために時間を調整し、参加するための会議URLを送信するのは、気軽なコミュニケーションというには手間がかかりすぎてしまいます。
「オフィスで隣にいた同僚たちと話すためにも、わざわざWeb会議を設定しなくてはならないのはとても面倒です。雑談や“余白”のコミュニケーションは、チームワークを円滑にしたり、アイデアを生み出したりするための重要な要素ですが、リモートワークではその場がなくなってしまっています。
NTT Comの企業理念は『人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する』です。コロナ禍で“3密”を回避しながらコミュニケーションを維持・活性化したいというニーズが高まっているいま、『チームとしての一体感』を醸成していく部分をエッジとしたサービスを開発することで、私どもの大きな使命を果たすときが来たと考えました」(武田)
このような背景から、NTT Comは新たなコミュニケーションツールとしてNeWork™を開発、2020年8月末にサービスの提供をスタートしました。
NeWork™における音声と映像の通信には、NTT Comが開発したWebRTCプラットフォーム「SkyWay」を採用。メンバーとの会話では、ビデオ通話のほか、資料の画面共有にも対応しているため、雑談以外の本格的な会議にも利用できます。サービス利用料は現在のところ無料。開発着手からリリースまでは、すべてリモートワークで実施されたといいます。
「NeWork™のコンセプトは、『リアルよりも気軽に話しかけられるオンラインワークスペース』です。立ち話感覚でのちょっとした相談や雑談を活性化し、オフィスにいるかのようにチームやプロジェクトのメンバーと話すことを可能にします」(武田)
オンラインワークスペース『NeWork™』
- いつものオフィスのように、
みんなと会話 - ひらめきや息抜きに、
オンラインで“立ち話”
“リアルよりも気軽に話しかけられる”ための3つの工夫
NeWork™はどのようにして、“リアルよりも気軽に話しかけられる”環境を作り出しているのでしょうか。それを可能にするのが、NeWork™に実装されている3つの機能、「(1)JUMP IN機能」と「(2)MY MODE機能」、そして「(3)LOOK IN機能」です。
気軽に話しかけられる仕組み
-
JUMP IN機能
URL不要!
1秒でミーテイング開始ブラウザを立ち上げ、ミーティングルームをクリックするだけでジャンプ・イン!
大切な会議も、ちょっとした相談も、楽しい雑談も、すぐに始められます -
MY MODE機能
立ち話感覚で
すぐ話しかけられる「オープン(いつでもOK)」「ワーク(話しかけるのは可)」「ゾーン(集中時間)」の3つのモードによって、アイコンの色が変化。
メンバーの状況を把握できるから、気軽に声をかけられます。 -
LOOK IN機能
「部屋」の様子が
一目でわかる誰がミーティングに参加し、どんな話をしているか、リアルの会議室を覗くように、中の様子を知ることができます。
1つ目のJUMP IN機能は、手軽な会話を可能にするもので、Webブラウザを立ち上げてNeWork™にアクセスし、「バブル」と呼ばれる円状のアイコンをクリックするだけで、ミーティングに参加できます。一般的なオンライン会議ツールの場合、まず時間を設定してURLを発行、そのURLを相手に伝えることでようやくコミュニケーションが取れます。しかしNeWork™では、ミーティングルームがバブルという形で画面上に可視化されているため、わざわざURLを参加メンバーに共有する必要はありません。
2つ目のMY MODE機能は、ユーザーの現在の状態に応じてモードを選択することで、アイコンの色が変わる仕組みです。「オープン(通話可)」「ワーク(スピーカーはON、自分の声はOFF)」「ゾーン(誰も話しかけられない)」の3つのモードが用意されます。参加メンバーの状態が直感的に把握できる仕組みになっています。
「相手の状態をプレゼンスとして伝える機能は多くのコミュニケーションツールで採用されていますが、会社にいるはずなのに実は自宅で仕事をしていることがあるなど、機能が適切に利用されず、形骸化しているのではないかと感じていました。そこでMY MODE機能では、スピーカーとマイクのオン/オフ(ミュート)と連動し、自動でモードを変更します。その人の本当の状態がわかるように工夫しています」(武田)
最後のLOOK IN機能は、誰がミーティングに参加しているのか、中でどんな会話が行われているのかをわかりやすくする仕組みです。バブルには「#未来会議」「#ランチ会」といったようなトピックが表示でき、かつ参加メンバーのアイコンも自動で表示されます。 “この人が参加しているのであれば自分も参加してみよう”、“この話題であれば参加してみよう”といったように、メンバーがミーティングに参加を検討する情報を表示する仕組みとなっています。
また、参加はできないけどちょっと聞きたい話題・メンバーがいるバブル内の会話を、“聞くだけ”で参加できる『聞き耳参加』の機能もあり、ユーザー自身で会話への参加スタイルを選ぶことができます。
武田によると、NeWork™がバブルを主体としたユーザーインターフェイスを採用している背景には、ある思いが込められているといいます。
「NeWork™のユーザーインターフェイスは、検討の初期段階ではチームメンバーが集まったり、分散したりしているような、リアルなオフィスのイメージに近づけることを考えました。もちろん、ユーザーがリスト形式でキッチリと並んでいるユーザーインターフェイスも考えましたが、NeWork™では、コミュニケーションに参加したくなるような楽しさを感じてもらえるようなUI/UXを目指したため、今のスタイルになりました」(武田)
既存の会議ツールでは雑談しづらいが、NeWork™ならできそうだ
Profile
アプリケーションサービス部
第一サービスクリエーション部門
坂内恒介
※本インタビューはWeb会議にて実施しました
NeWork™が正式にスタートしたのは8月31日のこと。それから約2か月が経ちましたが、NTT Comの坂内恒介によると、NeWork™は幅広いユーザーに利用されており、共感する声が寄せられているといいます。
「大企業からスタートアップ系の企業まで、企業規模にかかわらずNeWork™をご利用いただいています。中には個人で働くフリーランスの方、あるいは大学の研究室でも導入ケースがあります。
フィードバックとしては、『誰かと誰かが会話しているのが視覚的に確認でき、リモートワークの孤独感が緩和された』、『ルームの中で他の人が話しているのが可視化されたことで、“面白そうだから”と気軽に入れるようになった』、『URLの発行やスケジュールの確認がなくなって、気軽に話しかけられるようになった』などです。
中には、“既存のオンライン会議ツールでは雑談する気分になれないが、NeWork™ならできそうだ”という声もいただいています。NeWork™のコンセプトが受け入れられていると感じます。もちろん、お客さまにいただいたご意見やご要望は真摯に受け止め、今後の開発に生かしていきます」(坂内)
テキストチャットの追加やUI/UXの改善、スマートフォン向けのネイティブアプリを求める声も多いといいます。同社では週次で細かなバージョンアップを行っていますが、2020年第4四半期には大型のアップデートを予定しているとのことです。
「このほかにも、“イベントで使いたい”、あるいは“グループワークを伴う研修で利用したい”など、さまざまな要望も寄せられています。NeWork™が新しいコミュニケーションツールの1つとして期待されていると実感しています
もちろん、おそらく通常の会議をすべてNeWork™に置き換えるのは難しいと思いますし、我々としてもそれを狙っているわけではありません。まずは会議と会議の合間、あるいは作業時間の中にある余白でNeWork™を使っていただければ、と考えています」(坂内)
前述したとおり、NeWork™(こちらのリンクから登録、利用開始できます)は現在無料で提供されています。もし既存のオンライン会議ツールやチャットツールで、十分にコミュニケーションが図れていないと感じているのであれば、まずは一度試してみてはいかがでしょうか。