事務所で確保したいインターネット光回線速度の目安
働き方改革や業務効率化への対策として、インターネット活用に注力する企業が増えています。ビジネスユースでは、回線速度や通信品質などが業務に及ぼす影響の大きさから、安定性や可用性に着目したサービス選定が大切です。ここでは、法人契約で抑えておくべきインターネット速度や回線種別、メリット、デメリットなどを解説します。
1. 法人(ビジネスユース)でおすすめのインターネット回線とは?
ビジネスユースを想定したインターネット回線としては、「光回線」と「Wi-fi」があります。
○光回線
●概要
光ファイバーケーブルを使用し、電気信号を光に変換して伝達します。電磁波の影響を受けずに大量のデータを遠く離れた場所へ伝送できることが特徴です。
●メリット
- 安定性が高い
かつて、ブロードバンドの代名詞として広く普及していたADSLでは、NTT収容局からの距離に通信速度が左右されます。また、送電線や幹線道路、鉄道架線などから放射される電磁波、電話回線への物理的接触といった「外来ノイズ」の影響を受け、通信品質が低下するという課題もありました。光回線ではこの点が改善されており、通信速度の安定性が増しています。 - 通信速度が速い
ADSLの通信速度は、ベストエフォート型で最大50Mbps前後であることが大半でした。ただし、この数値は理論上の最大値であり、実際には数Mbps~10M程度の通信速度であることも珍しくありませんでした。一方、光回線では理論上の最大値が1Gbpsまで上昇し、実際の使用時でも、100Mbps以上の速度を確保しやすくなっています。 - 混雑や遅延による悪影響を受けにくい
法人向け光回線(IPoEサービス)では、個人向け回線や従来のPPPoEサービスに比べ、通信品質が強化されているという特徴があります。例えば、OCN光 IPoEサービス(標準プラン)の場合、法人専用に収容設計2倍に拡大しており、通信品質の向上が図られています。さらに、OCN光 IPoEサービス(ワイドプラン)では、標準プラン比で3倍、PPPoE比で6倍の収容設計となっており、常に安定した速度を発揮できる環境が整っています。
●デメリット
- 導入コストがやや高い
光回線では初期工事費用が必要になることがあります。特に法人向けIPoEサービスの場合は、回線事業者の初期工事費用、プロバイダーのネットワーク工事費、IPアドレス割当手数料などが必要です。
○Wi-Fi
●特徴
国際標準規格であるIEEE 802.11に対応した無線通信規格で、本来はWi-Fi Allianceによって認定されたデバイス間の相互接続を指しています。無線AP(アクセスポイント)を設置するだけで利用できる手軽さから、ビジネスユースで広く使われるようになりました。
●メリット
- 導入コストが低い
回線契約さえ済ませれば、無線APを設置するだけで使用できるため、初期工事費用が必要ありません。また、補助金を活用したい法人向けに無線APなどを一括で買い上げる形式の契約も可能です。 - 通信基盤を安価に構築できる
ケーブルの施設やネットワーク機器の配置など、物理的な作業が無いため、迅速かつ手軽に情報通信基盤を確立できます。 - 最大速度通信速度
理論上、IEEE802.11acは最大6.9Gbps、IEEE802.11adでは最大6.7Gbpsの通信が可能とされています。実効速度でも、光回線を上回る通信速度(数百Mbps)を叩き出すことも珍しくありません。
●デメリット
- 光回線に比べると通信の安定性がやや低い
ここ数年で法人向けWi-Fiの安定性はかなり向上しています。しかし、物理的な距離や電波状況の影響を受けるため、光回線に比べると安定性に欠けるといえるでしょう。
○ビジネスユースで求められるインターネット回線速度とは
テキストベースのやりとりやWeb閲覧、音声コミュニケーションのみであれば、10M程度の下り速度で十分に対応可能です。しかし、ビジネスユースでは、大容量データのやり取りやファイル共有を行うことも少なくありません。こういった環境でストレス無く業務を進めるためには、50~100Mbpsの安定した通信速度を確保しておくべきでしょう。また、ビジネスユースの場合、双方向かつ頻繁なデータのやりとりを考慮すると、上り速度や回線品質、回線事業者のバックボーンも考慮したいところです。
2. 法人向けインターネット契約(光回線)のメリットとデメリット
これまでの内容から、単純な回線速度と導入コストでは一部のWi-Fiが有望であるものの、総合的には法人向け光回線を選択すべきといえそうです。そこで、法人向け光回線のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
○法人向け光回線のメリット
- 専用設計や帯域確保型サービスなどを利用すれば、ネットワークの混雑状況に左右されず、安定した通信が期待できる。
- 固定IPサービスが利用でき、セキュリティ対策や外部システム連携、拠点間通信を構築しやすい。
- 複数の固定IPアドレスを使用できる。複数の固定IPアドレスは、システムの冗長化や分散化に役立つ。
- SLA(サービス品質保証)のレベルが高い。ダウンタイムがほぼ発生せず、安定した通信環境が構築できる。
○法人向け光回線のデメリット
- 提供企業のバックボーンによって混雑時の回線品質や速度が上下しやすい。
- 不正アクセスやサイバー攻撃を想定した強固なセキュリティ対策が必要になる。
法人向け光回線のメリットは、速度よりも「安定性」や「可用性」の高さに集約されています。特に、IPoEサービスは、安定した回線品質と速度、業務システムの分散化、拠点間通信などに役立つため、ビジネスユースに最適な回線かもしれません。
3.法人向けインターネット接続サービスで重視すべきポイント
最後に、法人向けインターネット接続サービスで重視すべきポイントをまとめます。
○SLA(サービス品質保証制度)の有無
○SLA(サービス品質保証制度)の有無
SLAとは、サービスの提供者と顧客で結ばれるサービスレベルの合意です。このSLAの有無と内容で、サービス自体の信頼度が図れると言っても過言ではないでしょう。
○バックボーンの強さ
インターネットプロバイダーは、保有するIPバックボーン(基幹回線網)の規模によって格付けされています。これは「Tier+数字」で表されており、数字が小さいほどランクが高い(バックボーンが強い)プロバイダーです。国内では、NTT Comが「Tier1(ティアワン)」に位置付けられ、インターネット品質を自らコントロールできるトッププロバイダーの1つと言えます。
○セキュリティサービスの充実度
情報漏洩によるセキュリティインシデントは、企業に甚大な被害を与えます。したがって、ビジネスユースでは、不正アクセスやサイバー攻撃対策が必須です。サイバーセキュリティの3本柱とも言える「エンドポイントセキュリティ」「ネットワークセキュリティ」「Webセキュリティ」に対応しているサービスを選びたいところです。
まとめ
この記事では、法人向けインターネット回線の種類や、求められる速度などについて解説してきました。ビジネスユースで求められるインターネット速度は、業務内容や事業規模によって異なります。ただし、一定以上の通信品質とセキュリティは、どのケースでも必須であるといえるでしょう。法人向けのインターネット接続サービスの選定は、これら2つを両立できる事業者を中心に進めてみてはいかがでしょうか。
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