南会津町
新庁舎建設を契機に全拠点のPBXをクラウド化
防災拠点としてのBCP対策に加え大幅なコスト削減を実現
南会津町
総務課 課長
渡部 正義 氏
「PBXのクラウド化によりコストを抑えなが ら、全拠点において対災害性の高い通信環 境を構築できました」
南会津町
総合政策課 課長
渡部 浩治 氏
「IP-Phoneのほか、スマートフォンを内線端末として使えるので、居場所によらず内線が使えることも魅力でした」
課題
オンプレミス型PBXの老朽化にどう対処すべきか
新庁舎建設に伴い災害に強い通信環境の見直しが急務
南会津町は、2006年3月に田島町・舘岩村・伊南村・南郷村が合併して誕生。以前の本庁舎は1966年に竣工した施設であり、建物の老朽化や耐震性に不安を抱えていた。2011年の東日本大震災を経て、新庁舎建設の機運が高まり、「住民の安全・安心な暮らしを支える防災拠点となる庁舎」をコンセプトに、2015年から新庁舎の建設に着手し、2017年7月に開庁を迎える。新庁舎建設に伴い、課題となっていたのは通信環境の見直しだった。町村合併以前に4つの町村が運用していた、別々の電話システムが混在していたのだ。南会津町総務課の渡部正義氏は、通信環境見直しのきっかけについて語る。
「大きなきっかけとなったのは、2011年3月に発生した東日本大震災です。南会津町の4地域の庁舎には大規模な被害は無かったのですが、あらためて庁舎の防災・災害復興拠点施設としての課題が浮き彫りになりました。新庁舎建設には、万一の災害に強いことが求められたのです。中でも通信環境は最重要なインフラであると考えていました」
新庁舎建設にあたっては、4庁舎(本庁と3つの支所)のPBX(電話交換機)老朽化が喫緊の課題となっていました。同町南会津町総合政策課の渡部浩治氏は、当初は従来通りのオンプレミス型PBXへの更改を考えていたと振り返る。
「4庁舎は、それぞれ別々のオンプレミス型PBXを設置していました。通信設備のリース時期もバラバラで、運営についても支所ごとに維持・管理されていて、町全体として把握することは困難でした。老朽化しているPBXについて、それぞれ莫大な費用を掛けて整備するには、財政的に大変な負担となります。そこで、コストを抑えつつ4庁舎が統一性のとれた通信機器を設置する施策を模索していました」
東日本大震災では、近隣の福島県内の自治体では、PBXやサーバーなどのシステムのダウンも経験。復旧作業に多くの手間とコストがかかった。電話やシステムが使えないと、業務が停止してしまい、災害情報の収集や復旧活動の指揮などに支障を来すことも考えられる。業務システムについては、BCP対策として庁舎内に極力サーバーを設置しない方針を推進しているという中、PBXについてもクラウド化が可能であること知ったシステム担当は、クラウド化の検討を始めた。
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対策
従来の約4分の1の導入コストが決め手
クラウド型PBXの全拠点一括導入を決断
NTTコミュニケーションズは、新庁舎となる本庁にクラウド型PBXを導入する際の見積りを検討。提示額は、従来のオンプレミス型PBXを導入するよりも大幅に低いものだった。さらに、本庁以外の支所も含めて全拠点に導入した場合でも、イニシャルコストとしては、オンプレミス型PBX導入時の4分の1程度に削減できるというものだった。
「当初は本庁だけの導入を検討していたのですが、NTTコミュニケーションズと相談する中で、支所や交流館を含めて全拠点に一括導入しても、予算内に十分収まることがわかりました。その分の予算で、本庁に設ける常設の防災対策室内のTVテレビ会議システムなどの設備を充実させることができると考えました」(渡部正義氏)
渡部正義氏はPBXクラウド化によるさらなるメリットに言及する。「新庁舎内にPBXを置くと、導入コストに加え、維持・管理やメンテナンスに稼働やコストがかかります。新庁舎は市街地のシンボルであるのはもちろん、町民との協働を促進するための施設でもあります。それは、2017年6月に宣言した『まちづくり宣言』でもうたっていることです。PBXを置くと、物理的に空間を割くことにもなり、協働スペースの設置にも影響を及ぼします。そのような面でも、場所を取らないクラウド型は好都合でした」
こうして、新庁舎と支所を含めた全拠点一括のクラウド型PBXサービス「Arcstar Smart PBX」導入を決断する。
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効果
自在な設定変更により工事コストや期間を圧縮
スマートフォン内線化による業務効率化への期待
7月18日の新庁舎開庁とともに、全拠点で稼働をスタートした南会津町の新しい電話システムは、どのようなメリットをもたらしたのだろうか。まず、渡部浩治氏は固定電話や電話回線の最適化について、述べる。
「固定電話の台数は、全拠点合わせて導入以前の3分の2程度に削減できました。新庁舎開庁に伴って、支所を含めた全体的な洗い出しを行ったところ、本庁だけでなく支所にも使われていない回線や電話機がありました。町村合併により本庁に事務が集約されることで、不要になった電話も残っていて、今回それらを整理できたことは大きなメリットと言えます」
渡部浩治氏は、人事異動や庁舎内のレイアウト変更に伴う電話システムへの対応についてコメントする。
「役場では4月の人事異動以外にも、税金の申告時期や選挙期間など人員配置や職場のレイアウトの変更がたびたびあります。これまでは、本庁と支所が個別に工事業者に依頼して対応していました。それがWeb上の管理画面から職員自ら設定変更ができるようになりました」これにより、工事のコストや期間を圧縮することができていると言う。
現在、南会津町では、職員個人のスマートフォンを使って試験的に内線電話を利用している。役場には、建設課や環境水道課など現場に足を運ぶ機会が多い職員も多く、渡部浩治氏は「外出先でも職場にいるのと同様に電話を受けられることで、多くの職員が業務の効率化を図れるのではないか」と期待する。休日の対応やセキュリティ面の課題など、個人所有のスマートフォンを職務に活用するBYOD(Bring Your Own Device)に関する明確な規定や制度を設けたのちに本格的に推進する考えだ。
防災拠点としての役割を強化すべく防災対策室を設置し、電話システムはBCP対策としてPBXをクラウド化。さらに地中熱や太陽光など自然エネルギーを活用したエコロジーな最新設備や、地場産業を内外にアピールする内装と、南会津町役場の新庁舎には、注目すべき要素がふんだんにある。南会津町役場は、今後の地方自治体の中核拠点の、さらには中堅・中小企業にとっても参考になる1つのモデルケースと言えるのではないだろうか。その基盤となる通信システムを、NTT Comが支えている。
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南会津町
業務概要
2006年3月に田島町・舘岩村・伊南村・南郷村が合併して誕生。福島県の南西部に位置し、地形は越後山系から連なる帝釈山を最高峰に、山に囲まれている。河川は荒海山を源とする阿賀川水系と伊南川水系の2つを有し、水系とその支流沿いに5本の国道が走り集落が点在している。町の総面積は886.47km2で、その約92%が森林で占められている。
URL
https://www.town.minamiaizu.lg.jp/
(1.03MB)
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(掲載内容は2018年3月現在のものです)
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