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2020年3月19日、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)技術顧問(アジャイルコーチ)である吉羽龍太郎さん(Twitter:@ryuzee)が訳者の一人として参加された書籍『みんなでアジャイル -変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』(著者:Matt LeMay、翻訳者:吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士、まえがき:及川卓也、出版社:オライリー・ジャパン、出版年:2020年)が発売されました。NTT Comでは7月6日、「組織全体としてどうアジャイルになるか」を説いた本書籍を題材に、吉羽さんによるオンライン講演会を開催。多くの社員が参加し、大盛況に終わりました。
この記事では、書籍に沿って吉羽さんが語られたトピックの幾つかを紹介するとともに、講演会参加者の声をレポートいたします。
本書籍では、アジャイルを「手法としてのアジャイル」と「マインドセットとしてのアジャイル」の2つに分類した上で、いずれかだけでは不十分でありその両者を連携させる「ムーブメントとしてのアジャイル」を提唱しています。つまり、既存のやり方に対して「新しい働き方」と「新しい考え方」によって、個人やチームがより良い方向に向かって一緒に働くことを目指すことが「ムーブメントとしてのアジャイル」としています。
しかし、目先の即効性があるプラクティスやフレームワークは存在せず、以下の「組織重力の3つの法則」といわれる現状維持の強い力により、個人や組織はなかなか変化することができません。
組織の個人は、日々の責任ややる気を伴わない場合、顧客対応を避ける
組織の個人は、自分のチームやサイロの居心地の良さの中で、一番簡単に完了できる仕事を優先する
進行中のプロジェクトは、プロジェクトを承認した最上位者の決定が無い限りは続く
『みんなでアジャイル -変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』 P10より
そのため書籍では「成功するアジャイルの適用は、厳しく正直に現状を見ることから始まる」「アジャイル適用の前に以下の質問に答える必要がある」と説いています。
チームや組織が将来なりたい状態は?(ゴール)
チームや組織の現在の状態は?
将来なりたい状態になれないと思う理由は何か?
『みんなでアジャイル -変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』 P26より
これらは非常につらい取り組みかもしれませんが、質問に答えるためにチーム内で粘り強く本音で議論し、組織に必要な変化の本質を明らかにすることが重要だと書籍では述べられています。
上記から分かるように、アジャイルの適用範囲は決してソフトウエア開発に限定されず、セールス、マーケティング、バックオフィスやインフラ、ネットワーク領域などあらゆる組織や技術領域にとって、個人やチームが良い方向に向かって仕事をするために適用できます。
書籍では、上述の「組織重力の3つの法則」から意識的に脱するために、それぞれどういう価値観を掲げるのかという、アジャイルの3つの原則をはっきりと定義しています。
顧客から始める
早期から頻繁にコラボレーションする
不確実性を計画する
『みんなでアジャイル -変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』Pxxviはじめに、より
1つ目の「顧客から始める」は、組織重力の第1法則「組織に属する個人は、日々の責任やインセンティブと整合性が無ければ、顧客と向き合う仕事を避ける」から脱却するための原則です。
いくら組織のリーダーが顧客中心主義を口にしても、予算やスケジュールなどの企業由来のゴールで個人が評価される場合、顧客に向き合うことは既存の計画の見直しが発生してしまう可能性があるため、できるだけ避ける方向に動いてしまいます。また、多くの場合、組織内で顧客と直接やり取りするのは現場の個人であり、重要な意思決定をする組織のリーダーは顧客と遠く離れた場所にいて、顧客のニーズやゴールに対する知識を持っていないことが多いとされています。
この重力から脱却する原則が「顧客から始める」です。組織として、顧客との会話や顧客からの学習は投資対効果が高いことを理解して認め、作成するアウトプットではなく、顧客に届ける価値(アウトカム)にフォーカスし、「どうすれば顧客の一番重要な問題を可能な限り素早く解決できるか」を考えることが重要です。
この原則を達成するための顧客第一のアプローチとして、アジャイルソフトウェア開発宣言の「包括的なドキュメントよりも動くソフトウエアを」に着目し、ソフトウエアに限らずとも、プレゼンテーションであれば「箇条書きの概要ではなくラフなスライドを」、インフラ領域のPJであれば「設計書や構成図のドキュメントではなく動作する仮想環境を」といったように、素早くお客さまが評価可能な最低限のものを提供し、フィードバックをもらって学習していくようなアプローチがとれます。
2つ目の「早期から頻繁にコラボレーションする」は、組織重力の第2法則「組織における個人は、自分のチームやサイロの心地良さのなかでいちばん簡単に完了できる作業を優先する」から脱却するための原則です。
現代的な組織においては、リスクを最小限に抑えることが成功戦略とされている中で、外部からのインプットがあれば成果物がより良いものになることがわかっていても、コラボレーションすると計画に修正が生じたり、他のチームに仕事を台無しにされたり、成功した場合にも手柄を横取りされてしまうといったリスクがあり、コラボレーションしづらいという考えが働きます。
この重力から脱却する原則が「早期から頻繁にコラボレーションする」です。コラボレーションを増やすために組織再編が必要というのは幻想で、報告と批評の文化から協調的な文化へ移行するという文化の変革が重要となります。コラボレーション文化を醸成するためには、コラボレーションが目標達成に役立つという体験をすることが必要で、例えば、完成してから共有する前に他の部門にコンタクトしてみたり、Slackなどで非公式にコミュニケーションをとれるようにしてみたり、組織横断的なチームが同じ場所(物理的に同じとは限らない)で作業しているような感触を得ることができる状態を創り出すことが重要となります。
3つ目の「不確実性を計画する」は、組織重力の第3法則「進行中のプロジェクトは、それを承認した一番上の人が止めない限り、止まることはない」から脱却するための原則です。
顧客からのフィードバックがあり失敗することが明らかな場合であっても、失敗の責任を上司が取るのであれば、悪い知らせを伝えること自体が無意味であり、結果的に上司に問題を伝えるより、プロダクトの失敗の方が低リスクと思えてしまいます。また、意思決定するリーダーは顧客から遠いところにいるので、自分では学習できません。結果として、現場からリーダーへのフィードバックは選別済みの役に立たないものになって届いてしまうことになります。
この重力から脱却するアジャイル原則が「不確実性を計画する」です。不確実性の高い世界においては、意思決定をする組織のリーダーが、プロジェクトには必ず変化の余地を残さなければならないことを理解し、会社全体のタイムスケジュールの中に固定の短いサイクルを設定し、実験を仕事に組み込み軌道修正をしながら、より良い計画を立てることが重要です。
本書では、実践に役立つプラクティスがいくつも紹介されていますが、その中から3つピックアップしてご紹介します。
1つ目の「顧客から始める」を実践するために有効なプラクティスは、スプリント(イテレーション)です。短い期間のスプリント(イテレーション)ごとに評価が可能な動くソフトウエアを顧客へ届け、顧客からのフィードバックを受け取って次の計画に反映していくことで、顧客が本当に求めるものを早期に見つけることができます。
2つ目の「早期から頻繁にコラボレーションする」を実践するために有効なプラクティスは、デイリースタンドアップ(朝会/昼会/夕会)です。毎日の短い時間(負荷が少ない)でコラボレーションし、協力しながらゴールを目指すことができます。また、タイムボックス化することで、他の組織の会議にも参加しやすく/されやすくなる効果があります。
3つ目の「不確実性を計画する」を実践するために有効なプラクティスは、振り返りです。強制的に個人やチームとして立ち止まる時間をつくり、仕事の仕方を再検討することができるとともに、振り返り~振り返りの間での実験と軌道修正を可能とします。
講演会には、募集時点で300人を超えるエントリーがあり、書籍のタイトルにある「みんなで」のように、開発エンジニアだけでなく、セールスやマーケティングのスタッフ、マネージャーや経営幹部など、あらゆる職種・立場の社員が参加し、質疑応答も活発に行われ、大変得るものが多いセッションとなりました。
講演内容についてさらに詳細をお知りになりたい方は、ぜひ書籍をご購読いただければと思います(書籍についてはこちらをご覧ください)。また、吉羽さんはPodcast(fukabori.fm: 32. みんなでアジャイル w/ ryuzee)にも出演し、直接この書籍について解説してくださっていますので、併せてお聞きください。
なお、本書籍のまえがきは、同じくNTT Com技術顧問の及川卓也さん(Twitter: @takoratta)が担当されています。
NTT Comグループは、社外技術顧問の強力な支援を活用しながら、真の「DX Enabler®」としてお客さまから選び続けていただけるサービス、ソリューションを開発する力を身に付け、Smart Worldの実現、ひいては社会的課題の解決に一層取り組んでいきたいと思っています。
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植田 純生
ヒューマンリソース部が掲げる「人は競争力の源泉」というビジョンの下、全社の人材開発を担当しています。技術顧問をはじめ、NTT Comにおけるさまざまな人材開発の取り組みをお届けします!
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2020年06月25日
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