2021年05月28日

月額制ローカル5Gサービスを提供開始
NTTドコモと連携し導入から運用までを一括支援

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、お客さまのローカル5Gの導入・運用におけるハードルを下げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していくため、「ローカル5Gサービス」の提供を開始した。2021年3月にメディア・アナリスト向け説明会を開催すると、その内容はすぐさま各種メディアで取り上げられ、お客さまから多くの反響が寄せられている。月額制、ワンストップでローカル5Gを提供するというこのサービスがどういうものか、また、これまでNTT Comはローカル5Gに関してどういった知見を蓄積してきたのか、あらためてご紹介する。

高い期待の一方で導入へのハードルも

近年、製造業を中心としたさまざまなシーンで、大容量・低遅延の自営ネットワーク環境を構築できるローカル5Gの活用に注目が集まっている。お客さまの間でも、LTEでは実現できなかったことに活用できるのではないか、という期待が高い。

しかし、お客さまにとって導入のハードルは依然高い。電波を利用する際に必須となる無線局免許の申請は手続きが複雑で、ローカル5G機器とクラウド、エッジといった各種機能を連携させるためのネットワーク設計、保守運用には、専門的な知識・技術が必要。機器の導入費用など初期コストの大きさも課題の一つだ。

NTT Comは、パートナーと連携し、製造現場における自律走行型ロボットの遠隔操作や警備業務の高度化など、実証実験に取り組んできた。特に、ミリ波帯(28GHz帯)に比べて遮蔽物に強く通信範囲の広さに特長を持つSub-6帯(4.7GHz帯)に早くから注目。2020年12月に同帯域の実用局免許を申請して、実用化に向けた知見を蓄積している。こうしたノウハウを結実させ、サービス化にこぎつけた。

月額制のマネージドサービスでお客さまの導入・運用負担を軽減

ローカル5Gサービスは、導入時に必要な「導入コンサルティング」「免許取得」「機器構築」「保守運用」などのプロセスを分かりやすくメニュー化。高コストとなる制御装置「5Gコア」や「ユーザーデータ処理装置(UPF)」「無線基地局設備」を月額利用とし、NTT Comが提供するSmart Data Platform(以下、SDPF)のデータ収集・蓄積・分析などの各機能と組み合わせて、ワンストップで提供する。周波数帯は、実用化が最も進むSub-6帯を使用し、設備構成がシンプルになるSA(Stand Alone)方式を採用する。

NTT Comならではと言えるのが、ネットワークやクラウドといった機能とシームレスにつないでデータを融合・整理し、分析、活用できる点。月額制のため初期コストが抑えられ、利用期間を柔軟に設定できることや、5Gコアをクラウド上に配置してマネージドサービスとして提供するため、将来的な拡張に十分に対応できるのも特長だ。

ローカル5Gサービスの概要

ローカル5Gサービスの概要

サービスを提供するにあたり、NTTドコモとの連携体制も整えた。同社は、モバイルキャリアとして公衆網の5Gサービスを提供しており、豊富な経験やノウハウを持っている。そこで、2020年にはローカル5G免許申請支援での連携を開始。NTTドコモの無線に関する知見と、NTT Comが持つ法人のお客さま向けの24時間保守受付体制、ソリューションおよびネットワーク・クラウドといったサービスとの組み合わせでシナジーを発揮できるよう、話し合いを進めてきた。

ローカル5Gサービスでは、外部からの電波干渉の影響や、さまざまな構造物が存在する建物内部における電波伝搬を考慮したアンテナ位置の設計、実際の施工時のチューニングなどでNTTドコモの知見を活用し、最適かつ効率的なローカル5G環境を提供する。

費用は、機器構成によるが、初期費用は数千万円程度、月額費用は150万円からとなる。

提供するローカル5G構成

提供するローカル5G構成

安江担当部長

安江担当部長

メディア・アナリスト向け説明会で、プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部の安江律文担当部長は、NTT Comによるサポートについて次のように説明した。

「NTT Comが持つ独自ノウハウを生かして、ローカル5Gの無線局免許の取得代行を行います。さらに、無線システム構築で重要となるチューニングや検証を実施。これらにより、信頼性、安全性の高いシステムを迅速に構築していきます。監視や保守、障害発生時の駆け付け対応も行う考えです。無線設備には有資格者が必要ですが、NTT Comが代行設置をしてお客さまを支援します」

さらに、ローカル5Gの活用例として、広大な化学プラントを持つ工場への導入や、音声と映像、画像を使った作業指示、カメラによる危険予知、SIM認証によるセキュアな通信路の確立によるサイバーセキュリティリスクの低減などを挙げた。

ローカル5Gの活用例【PDF】

製造業、サービス業でのローカル5G活用が加速

池上担当部長

池上担当部長

説明会では、プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部の池上聡担当部長が、 2020年10月に発表した事業ビジョン「Re-connect X」や、その実現に向けて強化する「Smart World」「SDPF」「ICTインフラのTransformation」についても説明。NTT Comが目指すSmart Worldには7つの重点領域があるが、そのうちの「Smart Factory」と「Smart City」でローカル5Gの活用がさらに加速するだろうと述べた。

特に、製造業における工場などの現場では、大容量・低遅延かつ安定した無線通信環境が提供できることに加えて、SIMカードによる認証の特性を生かすことでセキュリティ面でのメリットを享受できる点を強調。Sub-6帯の本実用局免許を申請した田町グランパークタワーの「CROSS LAB for the Smart City」内にローカル5Gの共創環境を開設(2021年4月以降に利用開始予定)し、「お客さまやパートナーとの共創の推進、新規ビジネス、ユースケースの創出に取り組んでいきたい」と語った。

記者から、公衆網とローカル5Gの連携について問われた際には、「弊社もMVNOとして公衆網を提供しています。将来的にはローカル5Gとのシームレスな連携も検討しています」と説明した。

Smart Factoryにおけるローカル5Gの取り組み【PDF】

NTT Comが重ねてきた実証実験、技術開発事例を紹介

説明会では、プラットフォームサービス本部 ソリューションサービス部の柿元宏晃主査とイノベーションセンターの桐山直樹担当課長が、ローカル5Gを活用した3つの実証実験と、開発事例について紹介した。

【事例1】ローカル5Gを活用した自律走行型ロボット(AGV)稼働実験

DMG森精機様の伊賀事業所内では、AGV(Automatic Guided Vehicle:自律走行型ロボット)をローカル5Gに接続し操作する実証実験を行った。柿元主査は、AGVが収集する「障害物が周りにあるか」「人が居るか」などの大容量の情報(データ)を、ローカル5Gを使用してリアルタイムかつ安定的にサーバーに取り込むことができていると紹介。この検証が、AGVをはじめとする生産の自動化設備の高度化に資する取り組みであると語った。

ローカル5Gの取り組み事例1、ローカル5Gを活用した自立走行型ロボット(AGV)稼動実験

※この検証について詳しく紹介したShines記事もご覧ください。
ローカル5Gの構築だけではもったいない! ビジネスのDXへの可能性を拓くSmart Data Platformとの連携

【事例2】広大な工場敷地内での大容量データ送受信・通信品質実験

ブリヂストン様の工場では、ミリ波帯とSub-6帯の両方で実験試験局免許を取得し、工場内で電波伝送試験と通信性能試験を行った。この実証実験の今後について柿元主査は、アプリケーション試験として、4Kカメラを用いた検知ソリューションをローカル5Gに接続し、接続性やソリューションの有用性を順次検証していくと説明。工場におけるローカル5G導入モデルの1つとしていきたいと述べた。

ローカル5Gの取り組み事例2、広大な工場敷地内での大容量データ送受信・通信品質実験

※この検証について紹介したリリース記事もご覧ください。
製造現場におけるローカル5Gの本格検証を開始

【事例3】ローカル5Gを活用した警備業務の高度化に関する実証実験

綜合警備保障(以下、ALSOK)様、京浜急行電鉄(以下、京急電鉄)様とは、羽田空港第3ターミナル駅のホームにおいて、警備ドローンと警備ロボットをローカル5Gに接続し、4K映像を監視センターに送信して、不審者の自動検知や、白杖を使用している方、サポートを必要としている方の検知を行った。

この取り組みは、総務省の令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を受託したもの。柿元主査は、人手不足により警備業務における人件費が高騰している状況を説明し、「マンパワーを中心とした警備モデルからの変革が求められている」とこの実験の背景を説明した。

ローカル5Gの取り組み事例3、ローカル5Gを活用した警備業務の高度化に関する実証実験

※この検証について紹介したリリース記事もご覧ください。
ローカル5Gを活用した警備業務の高度化に関する実証実験を推進 (総務省 令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を受託)

【技術開発事例1】自社施設で4.7GHz帯を使った映像伝送実験を実施

開発事例としては、NTT Comのラグビーチーム・シャイニングアークスの活動拠点「アークス浦安パーク」のローカル5G環境と田町グランパークタワーの5Gエミュレーター設備を接続し、QoSによる経路制御を行いながら映像ストリームの伝送実験を行っている。

ローカル5Gの技術開発事例1、自社施設で4.7GHz帯を使った映像伝送実験を実施

※この検証について紹介したShines記事もご覧ください。
NTT Comが描くローカル5Gの世界 4.7GHz帯の電波特性や、データ伝送時の柔軟な経路選択手法を検証

【技術開発事例2】エッジコンピューティングによるリアルタイム映像解析

エッジコンピューティングと組み合わせることで、スポーツシーンなどの映像に、ボールの軌跡や確度、初速度、最高到達点、飛距離などのデータを描画できることを紹介した。桐山担当課長は、「Smart Factoryの分野でも、こうした技術を適用し、ローカル5Gと映像解析の技術を用いたソリューションの提供を目指して技術開発試験を進めていきたい」と展望を述べた。

ローカル5Gの技術開発事例2、エッジコンピューティングによるリアルタイム映像解析

※この検証について紹介したリリース記事もご覧ください。
Sub-6帯・スタンドアローン(SA)方式による本格的ローカル5Gの提供に向けた低遅延通信、エンド・ツー・エンドスライシング機能の実証実験を開始

SDPFにおける強力なデータ収集ツールとなる「ローカル5Gサービス」。お客さまの導入・運用負担を軽減させることで、さらなるユースケースの発掘や新規ビジネスへの発展が期待されている。さらに事例を積み重ねていくことで、NTT Comのローカル5Gへの期待や信頼もますます高まっていくにちがいない。NTTドコモとの連携という面でも広がりが期待できる。今後の動きにもぜひご注目いただきたい。

記事内に掲載したローカル5G事例資料【PDF:1.7MB】

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社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズデータプラットフォームサービス部

伊佐 英里

「ローカル5Gサービス」のサービス企画を担当しています。ローカル5Gは「Smart World」の実現においても注目されています。「ローカル5Gサービス」は導入から運用までを一貫してサービス提供し、お客さまのDXを支援します!

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