2025年2月25日

新たな事業創造に向けて両社の総意で提携合意に至ったNTT Comの推進力
―トランスコスモスとの戦略的事業提携 第1回―

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は2024年7月17日、海外34の国・地域で法人向けアウトソーシング事業を展開するトランスコスモス株式会社様(以下、トランスコスモス、敬称略)との戦略的事業提携を発表。 NTT Comが持つAI技術をはじめとしたテクノロジーやインフラと、トランスコスモスが持つ業務に精通した高度なノウハウおよびDX人材を組み合わせ、お客さま企業・自治体におけるDX支援を強化。豊かな社会の実現に貢献していく。そして将来的にはグローバルでの展開も見据える。

そこでShinesでは、トランスコスモスとの戦略的事業提携について連載。第1回となる今回は、プロジェクトの主要メンバーにインタビューした内容を紹介する。

大型プロジェクトを推進する中での事業提携の狙いや苦労、工夫、交渉術など、ビジネスソリューション本部(以下、BS本)第五ビジネスソリューション部(以下、五BS)の坂倉俊介 担当部長と、BS本 ソリューションサービス部の石原瑛美 担当部長にお話しいただいた内容をお伝えする。

石原担当部長(写真左)、坂倉担当部長(写真右)

11月に動き出し、12月には布陣を固める

提携の検討は2023年11月ごろ始まった。今回の提携プロジェクトでNTT Com側のPMO(Project Management Office)を務めている坂倉担当部長は、「五BSだけの収益や一つの分野に限った提携ではなく、全社的視点でNTT Com全体にそのシナジー効果が出る幅広い戦略的提携に仕立てようということで、まずはどんな領域でどんな組み方が考えられるか、関係部署と相談してスコープを決め、それに応じた弊社側の体制を整えました。年末12月の最終営業日近くに、その枠組みをトランスコスモス様側と具体的な折衝を開始しました」とプロジェクト初期を振り返る。

プロジェクト総責任者に社長、推進責任者にBS本部長、各スコープの責任者に組織長を配する弊社としての“本気度の高い”布陣を、早期に打ち出した。前のめりになるのは、全社のビジネスに好影響を及ぼす提携に育てたかったからだ。

石原担当部長

コンタクトセンター(以下、CC)基盤などに携わる石原担当部長は、日頃の現場の実感を次のように語る。「私たちはお客さまの課題に対してITシステムを提供します。しかし、お客さまはITシステムが欲しいわけではなく、CCの効率的な運営やCXの向上をめざしているのであり、業務改善の悩みを抱えておられます。われわれに業務部分まで踏み込むケイパビリティがないことは課題に感じていました」

トランスコスモスはBPO(Business Process Outsourcing)サービスにおける国内最大手。業務ノウハウや人財の領域に強みを持っており、まさにNTT Comに足りないところを補完し得る企業だ。

坂倉担当部長は「ドコモビジネスのICTと、トランスコスモス様のBPOをワンストップで提供できるようになることで、顧客企業のさまざまな事業の現場にBPOを通じてさらに深くアプローチできます。弊社のめざす方向性の一つであるとともに、まだ道半ばであるLOB(Line of Business)開拓も加速することを狙っています」と期待する。

試行錯誤して見つけたWin-Winの協業領域

次にスコープだが、設定において、インフラ、システム/アプリケーション、BPO/アウトソースの3層で両社のアセットや強み、課題を整理した。

「両社が相互に補完関係にあって、この領域でこう組むのが理にかなっているということを相手に深く納得してもらうため、客観的な指標も交えて3層を俯瞰(ふかん)しました」(坂倉担当部長)

こうして見いだした協業スコープは、最終的にスコープ1「特定分野向けDigital BPOの提供」、スコープ2「ソブリンAIソリューションの開発」、スコープ3「Digital BPOソリューションの開発」にまとまった。

事業提携スコープ全体像【PDF】

実は、スコープ3は当初、トランスコスモスのCC基盤にNTT Comのソリューションを組み込むことでビジネス規模拡大を構想していた。また建設業界向けDXソリューションの提供も構想し、一つのスコープに仕立てる考えだった。しかし、さまざまな事情や事業戦略をくみ取って、現在の形に落ち着いた。

石原担当部長が、スコープ決めの経緯を振り返る。

「トランスコスモス様は弊社のお客さまですが、大企業層のCC案件でしばしばぶつかる競合相手でもあります。そのような環境のなかでもWin-Winになる領域を見つけよう、中堅・中小企業層の開拓なら両社にとってホワイトスペースだと考えました。弊社にはDCC(NTTドコモ・NTT Com・NTTコムウェア)連携で得られた中堅・中小企業層向けの営業部隊があり、トランスコスモス様としても協業を歓迎できる領域のはずだと思ったのです」(石原担当部長)

両社で膝を突き合わせながら話し合いを続けていく中で、両社とも可能性を感じたのが、自治体と流通業界だった。

「早速、ソリューション&マーケティング本部(以下、SM本)へ問い合わせて、当社の自治体ビジネスの現況を教えてもらいました。その結果、LGPF(Local Government Platform)に窓口機能としてCCを組み合わせるアイデアが出ました。さらにSM本の皆さんの前向きな検討を経てアイデアが発展し、今のようなスコープ3になり、スコープ1の特定分野に自治体が入るかたちになりました」(石原担当部長)

マイルストーンの設置や計画書作成で“見える化”してプロジェクトを推進

3つのスコープの下、各スコープの両社メンバーは週に1回の推進定例会議を持った。石原担当部長は、「最初にPMOから“マイルストーン”の設置という課題が出て、大きくいつ頃に何を成すのかを決めました。それから、スコープごとにプロジェクト計画書を作っていきました。表紙1枚にゴール、ターゲット、ソリューション、提供価値、お互いのアセットなどを言語化して記載したものです。大きなプロジェクトだからこそ、方向性を明確にしてブレないようにしました」(石原担当部長)

「SI(System Integration)・BPO業界では“脱・受託ビジネス”が叫ばれていますが、経験のないオファリングビジネスを単独で始めるのはなかなか難しいと思います。NTT Comは昔から、お客さまに言われたことをやるというより、自分たちで最適なものを考えて作って売るという企業文化で、そのノウハウの価値が今は以前にも増して高まっているように感じます」(坂倉担当部長)

“社長会見”を実現し、世の中にインパクトを

7月17日の報道発表が近づいてくると、その形式と内容に関して議論が始まった。まず、形式については、報道発表をプレスリリースの配信だけで済ませるのか、それとも両社の社長がそろう共同記者会見にするのか――。

「検討すべき論点をシンプルにして、『この社長会見をやった場合とやらない場合、将来1年、2年経ってどちらがこのプロジェクトがより成功に近づいていると思いますか』と問いかけ、『社内をしっかり説得して大きく前に進んでいきませんか』とお話ししました。選択肢を用意して判断に資する材料を提示し、両社の意思決定をサポートしていく中で、歯車が前に進んだ実感があります」(坂倉担当部長)

最終的には両社長が出席する記者発表会を行うことで最終合意。記者発表の内容については、先述のスコープ別会議のおかげで内容の詰まったものになっていたが、両社幹部とも相談し、提携のシナジーのスケールをより具体的に表すことにした。記者発表で「両社で、5年間で1000億円のビジネス規模をめざす」としたのは周知の通りだ。

「世の中にインパクトを放ちお客さまを呼び込み、実案件を獲得していこうという考えがあったのと、両社にとっても全社を挙げて結果を出していくという推進力になると考えました」(坂倉担当部長)

記者発表会には日本経済新聞やテレビ朝日など、30社を超える多くの報道陣が参加した。

「非常に反響が大きく、両社営業経由をはじめ、さまざまな形でお客さまやパートナーからの問い合わせが多くなっております。業界ナンバーワン同士の事業提携がマーケットにとってどのような価値があるのか広く知っていただき、両社の皆さんで価値を創造していきたいという思いです。弊社は1999年の創立から、2010年代に法人事業にかじを切ってクラウド・セキュリティ事業にチャレンジし、2020年代前半にはモバイル事業を手に入れ、常にお客さまニーズに合わせて自ら変革をしてきています。2020年代後半に向けてこの事業提携をてこにしてBPOなどを新たな武器の一つとし、皆さんと共に2兆円の達成、その先へ未来を開いていきたいと考えています」(坂倉担当部長)

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社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 第五ビジネスソリューション部

坂倉 俊介

NTTに入社後、コンシューマ向けビジネス、法人向けソリューションビジネスを経て、現在はICT業界におけるアライアンスによる新規ビジネス創造に従事。NTT ComのICTとパートナー企業のアセットのタッグにより、社会課題やお客さま企業の課題解決実現に向けて日々取り組んでいる。

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