2025年3月4日

年度内に第1号案件獲得へ! “ほぼ自動”のGHG排出量算定サービスでめざす場所
―トランスコスモスとの戦略的事業提携 第2回―

トランスコスモス株式会社様(以下、トランスコスモス、敬称略)との戦略的事業提携について深掘りする連載企画。第2回はGX領域での協業について取り上げる。GX協業においてNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)側のサブリーダーを務めるビジネスソリューション本部(以下、BS本)スマートワールドビジネス部の藤浪俊企担当課長と、トランスコスモスのアカウント営業を担当しているBS本 第五ビジネスソリューション部の鎌田麻生さんに、GXソリューション検討の背景や今後について話を聞いた。

左から、鎌田さんと藤浪担当課長

NTT ComのGHG算定ツール×トランスコスモスのBPOが生み出した仕組み

2024年7月に戦略的事業提携を発表したNTT Comとトランスコスモス。両社は現在、3つのスコープで協働している。(1)特定分野向けデジタルBPO販売、(2)ソブリンAIソリューション開発、(3)デジタルBPOソリューション開発の3つだ。今回は(1)特定分野向けデジタルBPOのスコープで取り組みが具体化してきたGXソリューションについて取り上げる。

目下、両社が連携して取り組むGXソリューションは、GHG(温室効果ガス)排出量の算定サービスである。NTT ComのGHG排出量可視化サービス「CO2MOS®(コスモス)」に、トランスコスモスのBPOサービスを組み合わせたものだ。

藤浪担当課長は、GHG排出量算定の基本的なプロセスを「まず全体戦略を立て、その戦略に沿って各所から必要なデータを収集し、算定・可視化することになります。さらには算定結果を基に、排出量削減策のシミュレーションをしてアクションにつなげます」と説明する。

この流れの中でボトルネックになっているのが、例えば統合基幹業務システム(ERP)や電気代などの紙の領収書など、さまざまなデータソースからデータを収集する工程と、収集したデータを整形・加工してツールに投入する工程。非常に煩雑であり、ユーザー企業各社が頭を悩ませているところだ。ここをBPOで賄う。

「BPOを組み合わせると、お客さまの手間がぐっと減り、お客さまから見るとほぼ自動的にデータ収集から算定、分析、削減策のシミュレーションまでできるようになります」と藤浪担当課長。

鎌田さんも「GHG排出量を算定する必要性を感じていても、算定に工数がかかり過ぎるので足踏みをしているとか、ツールは導入したけれどデータ収集・加工・入力に毎月何時間も費やしているとか、そういったお悩みは各社お持ちのようです。そこをフォローする仕組みができたのは大きいですね」と話す。

「GXを切り口にお付き合いを始めて、関連サービスを提供し、最後はネットワークやクラウドを売り込んでいくという、これまでとは逆のビジネス拡大アプローチが取れる」と話す藤浪担当課長

市場の反応は上々で、警備、運輸、建設業界など、いくつかの企業に対して提案を始めている。

藤浪担当課長は「提案を前向きに聞いていただけているので、手応えを感じています。一つ実績ができれば横展開も可能だし、他のお客さまからも安心してお任せいただけるようになるはず。ぜひ2025年3月期中にファースト案件を獲得したいと思っています」と意気込む。

PoC、展示会、ウェビナーで認知度向上に成功

鎌田さん

NTT ComとトランスコスモスがGX領域での協業を検討し始めたのは約2年前。きっかけは、幹部レベルの懇親会だった。鎌田さんは経緯を次のように振り返る。

「懇親会の席でトランスコスモス様から、今後注目する市場の一つとしてGXに言及され、『何か一緒にできるといいですね』といったご発言があったようです。そのことが、NTT Com側の出席者から私たち担当営業へ情報共有され、その翌月には両社の担当レベルでミーティングを開きました」

会議では、GX領域での両社のアセットを紹介し合って、協業の可能性を探った。その後、やや時間が空いて2024年2月ごろにイベントへの共同出展をトランスコスモス側が提案。その時は出展を見送ったが、以降は週1回ペースで両社合同の定例会議を開き、協業スキームなどを検討するようになった。春ごろからは藤浪担当課長らサービス側も会議に加わり、夏には実証実験を開始した。

「実証実験は、第一交通産業株式会社様(以下、第一交通産業、敬称略)のタクシー車両のEV(電気自動車)化によるGHG排出量の削減効果を検証するもの。実証実験を通じ、さまざまな気づきを得ました」(藤浪担当課長)

第一交通産業のニュースリリースから引用【PDF】

【PDF】

2024年10月初旬には、3日間で約4万人が来場した「脱炭素経営EXPO」(主催:RX Japan株式会社)に共同出展。両社の連携やPoC(概念実証)の概要などを展示した。

鎌田さんは「ブースを見て『この2社が一緒にやっているんだ』と関心を持ってくださる方も多く、中には『理想的なサービス』とまで言ってくださる方もいました」と手応えを語る。

訴求する材料をすぐにそろえて出展したため、準備は急ピッチで進められた。

「裏側はドタバタでしたが、おかげで一体感が生まれました。それまではオンライン会議が中心だったので、顔を合わせて一つのものを作り上げることができて良かったです。完成したブースを見た時、思わず両社スタッフで手を握り合いました(笑)」と鎌田さんは明かす。

脱炭素経営EXPOの会場の様子。左上は両社の対応メンバー

さらに2024年10月下旬には両社共同のウェビナーを開催。自動車や鉄鋼、電機など、幅広い業界から50社が参加し、良質な顧客候補リストを獲得できた。この回はトランスコスモス主体で行われ、2025年2月にはOPEN HUB ParkにてNTT Com主体で対面セミナーを開催した。今後も四半期に1回程度のペースで、両社で交互に運営を担当しながら継続する予定だ。

商機到来、建設業界から第1号案件を狙う

ニーズそのものは間違いなく旺盛だ。プライム上場企業は、2026年度(2027年3月期)以降、時価総額によって段階的に、GHG排出量などのサステナブル情報の開示を義務付けられる。法規制対応は待ったなし。顧客や投資家からの評価を損ねないためにも、GHG排出量を算定し、削減アクションにつなげたり、サステナビリティレポートに掲載したり、環境関連の国際認証を取得したりすることに意欲を持つ企業は多い。

一方で、GHG排出量の算定は大手企業でも社員がExcelのマクロ機能などを使って行っている例が少なくない。ファイルが重くなって全ての作業に時間がかかったり、マクロを組んだ担当者が退職すると使い方が分からなくなったりする。

「GX人材は今、各社で争奪戦になっているので流出しやすいという現実もあります。そもそもGXは企業の本業ではないので、リソースの効果的な配分を考える意味でも、アウトソーシングが理にかなっています」と藤浪担当課長。

データ収集・加工の煩わしさから解放するGHG排出量算定サービスは、今後一気に採用が広がる可能性がある。実際に、NTT Com側が獲得したリードのいくつかが受注に近づいている。

第1号案件の有力候補は建設業界だ。NTT Comは2024年11月、CO2MOS®をベースにした建設業界向けサービスの検討開始を発表した。建設業界のサプライチェーンを支える伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様*(以下、伊藤忠丸紅鉄鋼、敬称略)、建設現場のDXを手掛ける株式会社ネクストフィールド様(以下、ネクストフィールド、敬称略)と3社で検討を進めている。ネクストフィールドは飛島建設株式会社とNTTグループで折半出資している合弁会社だ。

建設業界にはトランスコスモスがBPOサービスを提供している顧客も多い。“既存のサービスにアドオンする形でGHG排出量算定が可能”という売り込み方もでき、その意味でも有望な市場だ。

* 伊藤忠丸紅鉄鋼と連携して、CO2MOS®をベースにした鉄鋼業界向けサービス「MIeCO2」を2023年9月から提供。

ユーザーからもパートナーからも選ばれるツールに

「両社どちらも提供できる機能・工程について、どちらが担当するのか、ルール作りは必要」だと言う。例えば、その受注案件のリードを最初に獲得してきた側が担うことにするなど、紳士協定のようなものを設けていきたいと考えている

課題は、GHG排出量算定のレッドオーシャンでCO2MOS®を磨き込み、ユーザーにとってもパートナーにとってもいかに魅力的なものにしていくか。

「われわれにとって、トランスコスモス様のBPOは強いピースですが、トランスコスモス様側にもCO2MOS®をそう捉えていただけるよう努めていきたい。例えば両社システム間のAPI開発によるBPOスタッフの手間軽減や、CO2MOS®に対するトランスコスモス様からの機能開発要望を優先するなどの対応を考えています」(藤浪担当課長)

提案資料は今後、統一のものを共同で作成し、同じ資料を携えて提案活動を進めていく方針。今は定例会議とは別に、案件について情報共有する会議も随時開いているそう

両社のコミュニケーションはこれまでのところ円滑で、異なる文化を持つ企業同士のタッグでも「ハードルというよりはポジティブな側面が多い」と鎌田さんは話す。

「例えば、営業スタイルにしてもトランスコスモス様は非常に積極的。お客さまへのアプローチ方法もNTT Comとは大きく異なっています。イベントに出展しても、ブースにつく説明員が日替わりで、新入社員の方が担当される日もありました。NTT Comにないやり方があるので、発見や勉強になることが多いです」

藤浪担当課長、鎌田さんからメッセージ

最後に、藤浪担当課長と鎌田さんから読者の皆さんへメッセージをもらった。

「GXが前に進むには、ビジネス一辺倒ではなく、社会のためになるという意識も欠かせないものです。NTTは血筋として公共性を持った会社、公共性を期待される会社であり、NTT ComがGXを手掛ける意義の一つはそこにあると思います。また、GXの担い手はサステナビリティ推進室や総務部、製造ラインなど多岐にわたるので、NTT ComにとってはIT部門以外の組織を開拓するチャンスにもなります。

営業担当の皆さんに、まずはNTT ComのGXを認識してもらい、GXに関心を持っていただけたらありがたいです。日本経済新聞のGX関連記事を読むだけでも、きっと提案時の最初のストーリーを自分の言葉で語れるようになると思いますので、ぜひともよろしくお願いします!」(藤浪担当課長)

「脱炭素経営EXPOに出展した時、ご来場のお客さまは熱量が高かったのですが、われわれの提案を聞いてもいいとのご意向を受けて後日訪ねてみると、社内はまだGXツールを入れるところまで空気が醸成されていなかったりして温度差を感じることがありました。ここを私たちが埋めていかなければいけないと思っています。

トランスコスモス様との協業で提供するサービスは、お客さまにとってまさに悩ましいところをお助けできる仕組みはもちろんのこと、各社の強みを生かすことで、GXが前進する姿を社会に示すことができるモデルになったと感じています。このようなモデルを多く創出することで、社会全体でGXへの関心、取り組みを加速していきたいです」(鎌田さん)

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社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室

藤浪 俊企

入社以来、顧客企業のインフラ設計やプロジェクト管理などの業務に従事。現在はサステナブルな社会の実現に向け、CO2排出量可視化ツールやカーボンクレジットプラットフォームなど、ICTを活用したGXソリューションの企画開発を担当している。

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