2024年6月24日
国立大学法人神戸大学
株式会社NTTドコモ
NTTコミュニケーションズ株式会社
株式会社メディカロイド
神戸市
国内初、安定した通信を提供する「5Gワイド」を用いた遠隔ロボット手術支援の実証実験に成功
~無線の混雑環境下でも安定した遠隔ロボット操作を実現し、早期社会実装に向けて一歩前進~
国立大学法人神戸大学(以下、神戸大学)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、株式会社メディカロイド(以下、メディカロイド)、神戸市は、5G SA(スタンドアローン)の商用ネットワークにおいて、混雑エリアや時間帯においても安定した通信を実現する「5Gワイド」※1を活用し、無線の混雑環境下で若手医師のロボット手術を熟練医師が遠隔で支援する実証実験(以下、本実験)に国内で初めて※2成功しました。
実証実験のシステム構成イメージ
本実験は、兵庫県神戸市の統合型医療機器研究開発・創出拠点(MeDIP)に、手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)™サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)※3と遠隔操作用のサージョンコックピット※4を配置して、川崎拠点の商用5G SAおよびクラウド基盤(docomo MEC®※5、MECダイレクト®※6)で接続します※7。また、実運用時のネットワーク環境を想定し、複数台の5G端末から大容量データ伝送を行い、上りの無線通信の混雑環境を構築した上で評価を実施しました。一般の5G回線では混雑環境下において医師がスムーズにロボットを制御できなかったり、手術映像が乱れたりなど、手術支援を円滑に進めることができないケースがありましたが、「5Gワイド」を用いることで、混雑環境下においてもロボット制御や映像伝送に影響が出ることなく、安定して遠隔ロボット手術支援を行えることを確認しました。
なお、本実験は神戸市が産官学医連携事業で推進している「神戸未来医療構想」※8の一環として取り組むものです。
神戸大学、ドコモ、NTT Com、メディカロイド、神戸市の5者は、5Gを活用した遠隔ロボット手術支援ソリューションの実用化をめざし、臨床利用を想定した技術・機能の開発や、ロボット手術トレーニングなどの検証を進めてまいります。また、早期社会実装に向けて行政や学会に制度設計の準備などの働きかけを行うなど引き続き連携して取り組むとともに、次世代ネットワーク5G Evolution & 6Gを導入し、より低遅延・高信頼な遠隔医療を実現することで、医療業界のさらなる発展に貢献してまいります。
※1 「5Gワイド」は、NTT Comの5G総合コンサルティングサービスdocomo businessプライベート5Gのメニューです。スライシングにも活用可能な無線ネットワークのパケット優先制御機能により、混雑エリアや時間帯においても通信の安定化・速度向上に貢献します。
※2 神戸大学・ドコモ・メディカロイド調べ(2024年6月24日現在)。
※3 メディカロイド製の手術支援ロボットで、2020年8月に内視鏡手術を支援するロボットとして泌尿器科領域で製造販売承認を取得。同年12月に1例目の手術を実施しました。2022年10月には消化器外科・婦人科、2024年4月には呼吸器外科においても適応について承認を取得し、現在、使用症例を増やしています。
※4 手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」のユニットの一つで、執刀医が3Dビューアをのぞき込みながら、手や足の操作で、実際に手術を実施するオペレーションユニットに取り付けられた3Dビデオスコープやインストゥルメントを操作する装置です。
※5 「docomo MEC」は、5G時代に求められるMEC(Multi‐access Edge Computing)の特長である、低遅延、高セキュリティなどの機能を持つドコモのクラウドサービスです。法人のお客さまへはNTT Comより提供しています。
※6 「MEC ダイレクト」は、ドコモが提供する接続端末とクラウド基盤を直結して通信経路を最適化することで、5Gによる低遅延・高セキュリティ通信を実現するサービスです。法人のお客さまへはNTT Comより提供しています。
※7 遠距離でも遅延なく手術支援ができることを検証するため、川崎のMECダイレクト拠点を利用しています。
※8 内閣府の地方大学・地域産業創生交付金事業に採択された、神戸市において医療機器開発のイノベーションを継続的に生み出すエコシステムを形成するための取り組みです。
* 「hinotori」は株式会社メディカロイドの商標です。
* 「docomo MEC」「MECダイレクト」は株式会社NTTドコモの登録商標です。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
神戸大学
総務部広報課
078-803-5083
株式会社NTTドコモ
6Gネットワークイノベーション部(2024年7月1日以降 モバイルイノベーションテック部に名称変更)
6g_medical_ml@ml.nttdocomo.com
株式会社メディカロイド
経営企画部
078-303-8769
神戸市
企画調整局医療産業都市部
078-322-6373
<別紙>
実証実験の概要
1.概要
遠隔ロボット手術支援ソリューションの早期社会実装に向けて、災害時などネットワーク混雑が想定される場面での利用を見据え、ネットワークの混雑度を模擬した環境下においても、「5Gワイド」(無線ネットワークのパケット優先制御機能を有する通信安定化サービス)を用いることで、遠隔ロボット手術支援が安定して実施できるか評価しました。
2.システム構成
本実験は、統合型医療機器研究開発・創出拠点(MeDIP)〔兵庫県神戸市〕で実施し、手術支援ロボット「hinotori」のオペレーションユニットと遠隔操作用のサージョンコックピットを設置しました。5G SA方式を利用し、クラウド基盤(docomo MEC〔川崎拠点〕、MECダイレクト)を介して大容量・低遅延・セキュアなネットワークで両装置を接続しました。また、混雑環境を模擬するために、5G端末を複数台用意して、各端末から大容量データ伝送を行い、上りの通信に対して外部トラフィックを加えました。混雑環境下にて、本実験では「5Gワイド」を用いる場合と用いない場合での医師による遠隔ロボット手術支援の主観評価および無線などのログデータを取得して客観評価を行いました。
実証実験の各拠点の様子
3.評価ポイントと結果
検証結果として、「5Gワイド」を用いる場合は、大容量データを伝送する5G端末を増やし、外部トラフィックが大きい場合においても、遠隔地から安定したロボット手術支援が可能になりました。一方で、「5Gワイド」を用いない場合は、5G端末を増やすと手術映像が乱れるなど、遠隔ロボット手術支援に影響が発生しました。これらの結果から、実運用時に想定される、ネットワーク混雑環境下においても、「5Gワイド」を用いることで、安定した遠隔ロボット手術支援が可能と言え、早期社会実装に向けて一歩前進しました。
「5Gワイド」の有無による遠隔サージョンコックピットの受信データ量比較
4.各者の役割
神戸大学 | 手術支援ロボットの開発指導、遠隔ロボット手術システムの全体監修 |
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ドコモ・NTT Com | 商用5G SAとクラウド基盤、通信安定化サービス(5Gワイド)の提供、遠隔制御向けIPネットワークの構築 |
メディカロイド | 国産手術支援ロボットの開発、有線・無線ネットワークへの適用に向けた接続方法の改良 |
神戸市 | プロジェクトの支援 |