2013年ダイアログ
私たちは、さまざまなステークホルダーとの対話の機会を設け、コミュニケーションを深めるべくダイアログを実施しています。
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事業のグローバル化とともに、
CSR活動もグローバル化へ
NTTコミュニケーションズグループでは、「Global ICT Partner」をスローガンに、事業のグローバル化を推進しています。今回のダイアログでは、グローバルなCSRの動向に精通されている上智大学の上妻義直氏をお迎えし、今後のグローバル展開においてどのようなCSR活動が重要になるかを語り合いました。
1、ICTが本来もつ環境特性を、さらに高めていく
- 上妻
- 前回のダイアログでは、2013年に重視するCSRの取り組みとして、「データセンターのグリーン化」「クラウド技術を活用した新しいICTサービスの開発・普及」「アジア地域への積極展開」の3点を挙げられていました。まずは、これらについての進捗を教えていただけますか。
- 森
- 「データセンター」と「クラウド」は、昨今における弊社のビジネスの力点でもありますので、まずはそこから説明します。
データセンターは、社会全体におけるデータ処理量の急増にともない、ますます需要が高まっていますが、その一方で、環境対応型の施設としても注目されています。というのも、各企業が個々にサーバールームを構築・運用するよりも、高度な環境対策を施したデータセンターに集約することで、社会全体でのエネルギー消費やCO2排出量を少なくできるからです。
さらに、クラウドサービスを活用することで、お客さまは自社サーバーではなく、「クラウド」上の共有サーバーに情報を格納することになります。これにより、社会全体でのサーバーの稼働効率が向上しますので、大きな省エネ効果が期待できます。
- 上妻
- 改めて考えてみれば、そもそもICT自体に環境貢献性という側面があります。
- 森
- おっしゃる通りです。ICTには、情報移動を高速化・低価格化させることで人の移動を削減するという利点があり、移動によるエネルギー消費の抑制につながります。今では当たり前のようになっていて気がつかないのですが、改めて「CSR」や「サステナビリティ」といった観点でみると、まさにICTイコール環境貢献なんですね。そうした取り組みを加速させていけば、本業を頑張れば頑張るほど環境に役立っていくという、まさにCSV、つまり、「攻めのCSR」になっていくと思います。
- 上妻
- 今、話題に出たCSV、Creating Shared Valueとは、「ビジネスをすることが、社会を良くする」という考え方であり、そのコンセプトは通信というビジネスに非常にマッチしていると思います。今後も社会のニーズに沿った事業活動に期待しています。
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2、ICT事業のリスクを見据え、適切な対策を
- 上妻
- 御社グループの事業が果たす環境貢献には大きな期待が持てますが、ひとつ懸念されるのはトレードオフです。たとえば、気候変動は産業革命以降の経済成長のトレードオフですが、同じようにビジネスの成長にもさまざまなトレードオフが伴います。御社がデータセンターを運用するうえで、その環境負荷をどう低減するかについて、具体的な対応策をお聞かせください。
- 森
- 上妻
- 森
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3、グローバル市場で求められるCSRとは?
- 上妻
- 残る 1点ですが、「アジア地域への積極展開」についてはいかがでしょうか?
- 森
- 弊社グループは現在、「Global ICT Partner」というスローガンのもと、事業のグローバル化を推進しています。グローバル活動の拠点として、アメリカ、ヨーロッパは当然ですが、やはり「アジアの中の日本」ですから、世界を視野に入れつつも、少なくともアジアではナンバーワンの存在にならなくては、と考えています。
- 上妻
- 御社のCSR報告書を拝見したところ、グローバル展開を重視されているということですが、そこでのリスクに関する取り組みが見えてこないのが気になりました。
- 森
- ご指摘はごもっともだと思います。そもそも、今までは「グローバルにやるぞ!」という方針や戦略に重点におき、リスクに関する記述が足りませんでした。今後、NTTグループ全体で海外の子会社も含めた情報開示を積極的にやっていこうとしていますので、その参考にするためにも「ここは不足しているじゃないか」という点はドンドン指摘してください。
- 上妻
- 素晴らしい姿勢だと思います。アジア地域といっても、新興国として成長著しい国もあれば、まだ開発途上といえる国もあり、国ごとに事情がまったく異なります。会社全体、あるいはグループ全体として、地域ごとのリスクに対するトータルなマネジメントについて、どのようにお考えですか。
- 森
- 企業活動がグローバル化するなか、それぞれの国や地域での事業活動のありかたについては、グループ海外会社との会合も頻繁に実施して、技術面や制度面など、さまざまな問題を調整しています。そうしたファイン・チューニングをやりながら、積極的に事業を広げていくというのが大きな方針です。
まずは、主要顧客となる日本企業が進出している国に重点を置いて、日本企業からの信頼を基盤として展開するなかで、地元企業の日本・アジア進出も助けていく、というように、徐々にではありますが、視野や活動を広げているところです。
- 上妻
- グローバルビジネスのリスクについてですが、たとえばヨーロッパには、環境規制をはじめヨーロッパ独自の基準があります。日本企業も現地の物差しで評価されてしまうため、どうしても現地企業に比べれば不利になってしまいかねません。
- 森
- グローバル展開する以上、それぞれの国/地域の法律に従ってやるのは当然のことです。今、言われたようなCSR基準の違いについても十分に理解し、やるべきことはしっかりやるのは当然のことです。それに加えて、現地社会の課題にどう貢献できるかなど、私たちの強みをしっかりと宣伝・アピールしていくといった情報開示が重要になると思っています。
- 上妻
- 情報開示に関して言えば、CSR報告書のような持続可能性に関する広報物は、何ヵ国ほどでお作りになっていますか?
- 森
- これも良いご指摘だと思います。現在では、日本語と英語でしか作っていません。言語としては英語があれば充分かもしれませんが、今後は地域ごとに特化したページを作ることも検討すべきかもしれません。
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4、CSR経営のトップランナーを目指して
- 上妻
- 最後に、来年の重点項目を挙げていただくとすると、どのようになるでしょうか?
- 森
- 上妻
- 森
- 上妻
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上妻 義直 氏 上智大学経済学部教授 上智大学大学院経済学研究科博士後期課程満期退学後、名古屋工業大学助手、オランダ政府給費によるリンパーク研究所客員研究員、静岡県立大学経営情報学部助教授、上智大学経済学部助教授を経て現在に至る。 |