2018年10月4日
AIを活用した生産プロセスの高精度なモデルを構築
〜仮想的なプラント再現に向けて複数の予測モデルを搭載したシミュレータの実行に成功〜
NTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:庄司 哲也、以下 NTT Com)は、横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市、代表取締役社長:西島 剛志、以下 横河電機)、および横河ソリューションサービス株式会社(本社:東京都武蔵野市、代表取締役社長:村井 哲也、以下 横河ソリューションサービス)と、各社のAI/IoT技術を連携させることで、プラント内の反応器の状態を予測するモデル(反応器状態予測モデル)を構築し、そのモデルを横河電機のプラント制御シミュレータ※1と組み合わせ、仮想的にプラントを再現するために必要なシミュレータを構築した結果、予測誤差の累積による乖離を起こすことなく、連続的にシミュレータを実行することに成功しました。その結果、状態変化に影響を与える各要素の影響度を分析できるようになりました。
この技術により、生産プロセスに影響する変動要因の特定や制御パラメータの自動最適化、オペレータ手動操作の自動化など生産制御技術の高度化が期待されます。
なお、本AIはNTTグループのAI関連技術「corevo(コレボ)」※2を活用しています。
1. 背景・目的
化学業界や製紙業界をはじめとする製造業のお客さまは、効率的な多品種少量生産の実現、環境規制への対応、品質管理や安全管理の強化、熟練工が持つ暗黙知の継承、生産設備の老朽化対応といったさまざまな課題を抱えており、AI/IoT技術によるプラントのデジタライゼーションによる、生産制御技術の高度化が期待されています。
プラントに必要な計測機器や制御システムなどを開発・製造する横河電機、および同社の子会社で国内制御事業を担う横河ソリューションサービスは、2017年5月から、高度EMS(エネルギー・マネジメント・システム)※3による生産最適化技術の開発に取り組んできました。この高度EMSの構築にあたり、2017年10月から、AI/IoT技術活用のノウハウ※4およびクラウド、ネットワーク、セキュリティなどのICTインフラ基盤を持つNTT Comと共同で、プラント制御の高度化に向けた実証実験を行っており、今回、生産制御技術のさらなる高度化に向けて、2018年4月から以下の共同実証実験を実施しました。
2. 本実験の概要
2018年4月からの共同実証実験では、NTT ComのAIモデル化技術の活用により、蓄積されたプロセスデータから反応器の状態変化を予測する、「反応器状態予測モデル」を生成しました。このモデルでは、状態変化に影響を与える16項目の変数を対象に、それぞれのモデルを生成・結合し、さらに横河電機が持つ、実際のプラント制御をシミュレートするプラント制御シミュレータと組み合わせ、10日分の生産プロセスに対して、反応器の状態変化とその変化に対する制御を連続的に実行する環境を構築しました。予測誤差の累積による乖離を起こすことなく、連続的にシミュレータを実行することに成功し、その結果、状態変化に影響を与える各要素の影響度を分析できるようになりました。
<実証実験の概要>
3. 今後の展開
今後NTT Comは、横河電機、横河ソリューションサービスと共同で、生産プラントにおけるデジタルツイン※5の実現に向けた第一歩となる本実証実験の成果を活用し、さらなる生産制御技術の高度化を継続して進めてまいります。また、お客さまの生産現場への提供を目指し、本技術の早期商用化に向けた検討もあわせて進めていきます。
4. 出展情報
2018年10月4日・5日に開催する「NTT Communications Forum 2018」、および2018年11月7日から11月9日に開催される「SCF2018/計測展2018 OSAKA」のYOKOGAWAブースにて、本取組みを紹介予定です。
「NTT Communications Forum 2018」
会期:2018年10月4日(木) 9:30〜18:00(9:00受付開始)
2018年10月5日(金) 9:30〜18:00(9:00受付開始)
会場:ザ・プリンス パークタワー東京
URL:https://www.ntt.com/business/go-event.html
「SCF2018/計測展2018 OSAKA」
会期:2018年11月7日(水)〜11月9日(金) 10:00〜17:00
会場:グランキューブ大阪
※1:制御対象に対して、測定値(PV)と設定値(SV)の偏差・積分・微分によって操作量の大きさ(MV)を導出する制御手法(PID制御)を仮想的にシミュレートするもの。
- PV(Process Variable):センサーからの入力信号から得た値
- SV(Setting Value):制御を行うときの目標となる値
- MV(Manipulated Value):操作量の大きさ
※2:「corevo®」は日本電信電話株式会社の商標です。http://www.ntt.co.jp/corevo/
※3:EMS(Energy Management System)は、ISO/DIS 50001として国際規格化されたエネルギー管理体系であり、電気やガスなどのエネルギーの使用状況を適切に把握・管理し、最適化するシステムを指す。
※4:「corevo®」を活用したAI技術の1つである「ディープラーニング」を用いた原料・生産プロセスと生成物の関係性のモデル化を、20分先の未来の製品品質を高精度で予測に成功。
※5: 実際のプラントを仮想的にリアルタイムで再現し、高度な予測に活用する技術。
ガートナー社の、2018年度に企業や組織にとって戦略的な重要性を持つと考えられるテクノロジトレンドのトップ10にデジタルツインが選ばれている。
https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20171026-01.html
関連リンク
本件に関するお問い合わせ先
NTTコミュニケーションズ株式会社
2018-R089