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2019年6月19日

日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社

超大容量1テラビット/秒光信号の長距離伝送に成功

~商用環境において世界最長1,122kmの伝送を実現~

日本電信電話株式会社(以下 NTT)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)は、商用環境において1テラビット/秒光信号の長距離伝送の実証実験(以下 本実験)に成功しました。

本実験では、NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブル*1を用い、NTT独自の①高品位な多値光変調信号を送受信するために光送受信機内部の不完全性を補償する高精度校正技術、②最先端のデジタルコヒーレント技術*2を実装したデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機、③伝送路設計技術によって、1テラビット/秒光信号による波長多重伝送を実施し、世界最長*3となる1,122kmの長距離伝送試験に成功しました(以下 本成果)。

本成果は、現在の実用システム(1チャネルあたり100ギガビット/秒)の10倍の伝送速度、及び8割以上のビットあたり消費電力低減を見込み、5Gサービスの普及や、将来のIOWN*4構想実現につながる大容量通信ネットワーク技術として期待されています。

1.背景

近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に加え、5Gサービスなど新しい情報通信サービスの普及に伴い、トラヒックは増大し続けることが予想されます。このような状況に対応するためには、基幹系の光通信ネットワークにおいても、さらなる大容量化を経済的に実現することが求められています。そこで、NTTとNTT Comは、既設の光伝送システムの経済的な容量拡張に向けた、世界最高水準の技術の開発を進めてまいりました。

2.概要、特長

本実験にあたり、NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブルと、NTTが新たに開発した光送受信機を用いて、1テラビット/秒光信号による波長多重信号の1,122km伝送環境を構築しました(図1)。

<図1 伝送実験の構成>
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1テラビット/秒光信号生成のため、最先端のデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機によるデジタルコヒーレント技術を用いて、光の偏波、位相、及び振幅に情報を乗せることで情報量の増大を実現する偏波多重32QAM*5変調信号(1波長あたり500ギガビット/秒)と、2波のサブキャリア多重*6を利用しています。これにより、現在の実用システムの1チャネルあたり100ギガビット/秒の10倍となる1テラビット/秒に伝送速度を高速化することが可能となりました。1波長あたりの伝送容量を拡大させることにより、ビット当たりの消費電力も既存装置と比較して、8割以上の削減を見込むことが可能となります。

加えて、NTT独自の技術を用いて、光送受信機内部の不完全性(信号経路長や信号経路による損失ばらつき等)を高精度に校正することにより、受信信号を理想信号に近づけることが可能となり、高品質な信号の送受信が可能となりました(図2)。これにより、高い信号品質が要求され、技術的難易度が非常に高い32QAM多値光変調信号において、世界最長となる1,122kmの長距離伝送の実証に成功しました(図3)。

なお、本実験の一部は、総務省の委託研究「巨大データ流通を支える次世代光ネットワーク技術の研究開発」および「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」により得られたデジタルコヒーレント光伝送技術を利用しています。

<図2 高精度校正技術のイメージ>
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<図3 報告されている実験結果と本成果>
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3.今後について

IOWNの実現に向けて、End-Endでのフォトニクス技術をベースにした大容量、低遅延、かつ柔軟性、消費電力に優れた革新的なネットワークをめざして、最先端の1テラビット/秒級の光伝送技術をさらに拡張発展していきます。その成果を活かした大容量光伝送システムと高性能な光ファイバ伝送路を含めた経済的かつ大容量なネットワークの実現を推進します。併せて、国内外の機関とも連携して、成果のグローバル展開をめざしていきます。

※1:コア拡大低損失光ファイバケーブルとは、光ファイバを通過する光の減衰量を従来のファイバよりも低減し、かつ光ファイバのコア径を拡大して光ファイバ伝送中の非線形光学効果を低減することにより光信号の波形の劣化が抑えられた新しい光ファイバです(ITU-T G.654.Eに準拠)。

※2:デジタルコヒーレント技術とは、デジタル信号処理とコヒーレント受信と組み合わせた伝送方式です。コヒーレント受信とは、受信側に配置した光源と、受信した光信号を干渉させることにより、光の振幅と位相を受信することが可能な技術です。偏波多重や位相変調などの変調方式により周波数利用効率を向上させるとともに、デジタル信号処理を用いた高精度な光信号の補償と、コヒーレント受信により、大幅な受信感度向上を実現します。

※3:2019年5月現在。NTT Com及びNTT調べ。

※4:IOWN(アイオン):「Innovative Optical & Wireless Network」
「NTT Technology Report for Smart World:What's IOWN?」の発表について
http://www.ntt.co.jp/news2019/1905/190509b.html

※5:QAM(Quadrature Amplitude Modulation)とは、信号光の振幅と位相の両方に情報を乗せる変調方式で、32QAMは一度に5ビット分の情報を送ることができます。この変調方式を、光信号の持つ2つの独立な偏波光信号の各々に対して適用することにより、偏波多重光信号として伝送容量を更に2倍拡大することが可能となります。

※6:サブキャリア多重とは、1つの超高速チャネルを形成するために複数の波長の光信号(サブキャリア)に分割して多重伝送する方式です。偏波多重32QAMによる500ギガビット/秒の光信号を2つのサブキャリアで多重して、1チャネルあたり1テラビット/秒の光信号を生成しました。

本件に関するお問い合わせ先

日本電信電話株式会社

先端技術総合研究所 広報担当

046-240-5157


2019-R055

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