日本電信電話株式会社,NTTコミュニケーションズ株式会社

2025年3月31日

日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社

オープン仕様に基づくIOWN APNにおいて1Tbps級光ネットワークの自動設定を実現

~光波長回線をオンデマンドに即時に提供する技術をOFC2025で実演~

発表のポイント:

  • 光ネットワーク技術の世界最大級の国際会議「OFC2025」展示会で、NTT、NTT Com、Orange、Telefonicaが連携しIOWN GF(※1)、Open ROADM MSA(※2)、TIP(※3)のオープン仕様(※4)に基づいた装置を接続し、All-Photonics Network(以下APN)(※5)を動態展示します。
  • 本APNにおいて、実測した光伝搬パワーレベルを仮想設備上にてシミュレートし1Tbps級の高速光波長回線を自動設定する運用技術である光ネットワークのデジタルツイン(※6)を実演します。
  • 今回実証した運用技術は、光波長回線のオンデマンドな提供に有効な技術であり、今後APNに機能追加していくことで、リモートプロダクション(※7)、遠隔手術支援、データセンタエクスチェンジ(※8)などのサービスの即時提供が可能になります。

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)とNTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小島 克重、以下「NTT Com」)は、オープン仕様に基づく装置を接続したAPNにおいて、光ネットワークのデジタルツインによる1Tbps級光波長回線自動最適化技術の世界初の動態展示を行います。本動態展示は米国サンフランシスコで2025年4月1日~3日(米国時間)に開催されるThe 2025 Optical Fiber Communication Conference and Exhibition (OFC2025)にて実施します。

1.背景

IOWN(※9)構想に基づく光ネットワークであるAPNは、光技術を活用し、大容量・低遅延・省電力に光波長回線をお客様に提供できるネットワークです。NTTグループは2023年にAPNを活用したサービスであるAPN1.0[1]を開始しました。

NTTはAPNによりお客様に提供できる価値をさらに発展させるため、IOWN Global Forum(以下、IOWN GF)の規定するAPNアーキテクチャを利用して、光ネットワーキング技術の研究開発を進めています[2]。また、NTT及びNTT Comは共同で、多くのパートナー企業とAPNの技術発展を促進するためIOWN GF、Open ROADM MSA、TIPと連携し、複数ベンダのコントローラと通信装置を接続可能なオープン仕様の標準化を進めています。OFC2025展示会にて、これまでのNTTグループの活動成果に基づく最新技術と、オープン仕様に基づいて社会実装されたAPNをNTTとNTT Comが共同で実演します(図1)。

2.展示の内容

展示ではブース#5029「IOWN Networking Hub」とブース#5128「OpenROADM MSA」にて、複数社(表1)が連携し、オープン仕様に基づく装置を接続したAPNを構成します(図2)。その上で、複数ベンダによる実設備を仮想設備により再現し、光ネットワークのデジタルツインにより1Tbps級光波長回線の自動最適化を行う技術を実演します。本技術は、リモートプロダクション[3]や遠隔手術支援[4]、データセンタエクスチェンジ[2]といったAPNを活用するサービスの即時提供に有効です。

図1オールフォトニクス・ネットワーク(APN)における光波長回線自動設定

表1 光ネットワーク共同検証:協力団体・企業

図2. 光ネットワークのデジタルツインで制御を行うオープン仕様に基づくデモネットワークの構成

■オープン仕様に基づく装置を接続したAPN

IOWN GF、Open ROADM MSA、TIPといったオープンフォーラムでは、複数社の通信システムが相互に接続可能なオープン仕様の規定が進み、複数社の製品にてAPNを構成できるようになりました。OFC2025では、NTT、NTT Com、Orange、Telefonicaと、オープンフォーラム(IOWN GF、Open ROADM MSA及びTIP)が連携し、オープン仕様に基づく複数社の装置を接続したAPNの光波長回線の接続を実演します。Open ROADM MSAおよびOpenLab@UT Dallas(※10)によりブース#5128に構築されるマルチベンダネットワークとブース#5029「IOWN Networking Hub」の光トランシーバ(※11)を400Gbpsおよび800Gbps、1.2Tbpsで接続することで、遠隔データセンタ拠点間のエンドツーエンドの高速光波長回線の提供を実演します。

データセンタに配備された通信装置への光のままの装置監視制御回線

遠隔データセンタに設置される通信装置に対する監視制御は、遠隔拠点まで装置監視制御回線(※12)を拡張することが重要です。IOWN GFとOpen ROADM MSAはAPNのエンドツーエンド光波長回線の要件に合わせた光のままの監視制御回線の提供方法を規定しています。展示では通信装置ソフトであるBeluganos(※13)を用いて、遠隔拠点の通信装置が光のまま制御情報を受信する機能を実現し、データセンタに配備された通信装置の遠隔制御を実証します。

オープン仕様の制御インタフェースによる光トランシーバ制御

APNの検証のため、NTTグループとOrangeがOpen ROADM MSA準拠のオープンソースコントローラであるTransportPCE(※14)にデータセンタ装置の制御インタフェースであるOpenConfig(※15)を拡張実装し、データセンタにある通信装置をOpenConfigインタフェースで直接制御することでオンデマンド接続のニーズに対応しました。加えて、TIPのMANTRA(※16)で想定される“IP over DWDM”(※17)を実現するため、Telefonicaが中心となり開発されたIPレイヤ装置用のオープンソースコントローラであるTeraflow(※18)を、OpenConfigを利用して光トランシーバの制御に活用し、IPレイヤと光レイヤの統合制御を行います。

■光ネットワークのデジタルツインによる1Tbps級光波長回線の即時オンデマンド設定

オープン仕様の装置を接続したAPNでは、複数社の通信装置でAPNを構成できる一方、光波長回線の提供時に最適な光伝搬パワーレベルを把握し、回線の設定をすることが困難でした。今回展示する光ネットワークのデジタルツインでは、光伝送路可視化技術[5]により、通信装置の光信号を利用した計測データを解析し、光伝搬パワーレベルを回線の伝搬経路に沿って正確に推定します。この情報を用い、デジタル空間に光ネットワークを再現して光波長回線の性能を最大化させる光伝搬パワーレベルの最適化を行い、通信装置に設定します。また、AIのサポートのもとオペレータがインタラクティブにAPNの状態を把握する仕組みも取り入れました。今回の実演では株式会社日立製作所から検証用に提供されたAIエージェント(※19)を活用しています。このように、高度な光伝送の専門知識なしで光ネットワークの運用が可能となり、複数社の製品が混在する光ネットワークにおいて、オンデマンドに1Tbps級の光波長回線を即時提供することが可能となります。

3.今後の展開

オープン仕様に基づく装置を接続したAPNにおいて光ネットワークのデジタルツインを利用し、高速波長回線サービスの即時提供に必要となる自動設定技術を実証しました。実証した技術は商用導入に向けてAPNのネットワークシステムへの機能拡張をめざします。そのため、NTT Comでは、オープン仕様に基づくAPNにおける光ネットワークのデジタルツイン技術のフィールド検証を進めています。

NTTグループは、リモートプロダクション、遠隔手術支援、データセンタエクスチェンジなどの省電力・大容量・低遅延のAPNを利用したサービスにおいて、お客様要望に従って拠点間を自在に接続する光波長回線の提供を進めていきます。

エンドースメント

“Open ROADM MSA is pleased to integrate IOWN requirements into the definition of its models and specifications. The demonstrations performed on IOWN GF and UT Dallas booths at OFC 2025 illustrate how collaboration between standardization forums efficiently contributes to build the future considering the most advanced optical technologies on the one hand and innovative concepts introduced in All Photonics Networks definition on the other” Olivier Renais, Open ROADM MSA Chair.

“TIP is proud to collaborate with NTT, IOWN Global Forum, Open ROADM and the TIP participants in the MANTRA subgroup to demonstrate the recent open and disaggregated IP over DWDM solution in a joint demonstration at OFC conference towards the realization of All-Photonics Network (APN) use cases. We believe the collaboration among different open forums is key to accelerate the development of open and disaggregated optical networks." said Arturo Mayoral López de Lerma, Head of Open Transport Technology at Telecom Infra Project. ”

“OpenLab @ UT Dallas is a neutral non-profit host facility supporting open networking including optical and 5G. Being able to show the state of the art solutions compliant with open standards from Open ROADM MSA, TIP, IOWN-GF, and other open initiatives at OFC, the largest optical exhibit in the world, is exciting for our Team. Hosting equipment from the leading suppliers in the industry to showcase their multi-vendor interoperability and programmability leading to deployable solutions for the network operators is key to our mission. We thank the open standards groups such as OpenROADM MSA, TIP, and IOWN-GF, equipment suppliers, component suppliers, and network operators for their continued backing in making many live demonstrations succeed.”, Andrea Fumagalli, OpenLab Director.

“The OpenDaylight optical network controller, TransportPCE, was originally designed to provide a reference implementation of Open ROADM models. The extension demonstrated by NTT at OFC 2025, in support of the All Photonics Networks developed in the IOWN Global Forum, usefully extends the TransportPCE support of the most widely adopted standards” says Eric Hardouin, VP, Networks and Infrastructures Research at Orange, and member of the IOWN Global Forum Board of Directors. “This achievement complements the effort towards building an open control platform handling not only full, but also partial disaggregation, leveraging Open Line Systems and alien terminals through T-API and Netconf-Open ROADM/Openconfig APIs, respectively.”

その他

本展示の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の助成事業「オール光ネットワークのサービス機能向上技術及び遠隔制御対応光トランシーバ構成技術に関する研究開発プロジェクト」(JPJ012368G50201)及び、「1T超級光トランスポート用DSP回路実装技術に関する研究開発プロジェクト」(JPJ012368G50111)により実施されたものです。

【参考】

[1]ニュースリリース「APN IOWN1.0の提供開始について」

[2]ニュースリリース「データセンタエクスチェンジの実現に向けAPNを活用した光波長パス設定技術を確立し実証」

[3]ニュースリリース「世界初、IOWN APNによる生放送の音声リモートプロダクションを実現」

[4]ニュースリリース「IOWN APN接続による離れた2つの病院間での遠隔手術支援を実証~手術支援ロボットの高精度かつ安定した遠隔操作、同一手術室にいるようなコミュニケーション環境を実現~」

[5]ニュースリリース「光ファイバ伝送路の状態を測定器なしでエンドツーエンドに可視化できる技術を開発し、世界初、世界最高精度でのフィールド実証に成功」

【用語解説】

※1:IOWN Global Forum
これからの時代のデータや情報処理に対する要求に応えるために、新規技術、フレームワーク、技術仕様、リファレンスデザインの開発を通じ、シリコンフォトニクスを含むオールフォトニクス・ネットワーク、エッジコンピューティング、無線分散コンピューティングから構成される新たなコミュニケーション基盤の実現を促進する新たな業界フォーラム。
https://iowngf.org/

※2:Open ROADM MSA
ROADM (Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer) システムをベンダ間で相互運用できるようにするためのインタフェースや、仕様を定義しているMSA (Multi-Source Agreement)。
http://openroadm.org/

※3:Telecom Infra Project (TIP)
世界で必要とされる高品質な接続性を提供するために数百社を含む多様なメンバーが参画し、オープン化・ディスアグリゲーション化・標準化に基づくソリューションを開発・試験・展開するグローバルコミュニティ。
https://telecominfraproject.com/

※4:オープン仕様
異なるベンダの通信装置とコントローラを相互に接続するための共通のアーキテクチャとインタフェース仕様。

※5:Open All-Photonics Network (APN)
IOWN Global Forumにてオープンにアーキテクチャ策定が行われているフォトニクス技術をベースとした革新的ネットワーク。IOWNのユースケースを支えるネットワークとして、必要なときに必要な地点間を光波長パスでダイレクトに接続可能にする。
https://iowngf.org/wp-content/uploads/2025/02/IOWN-GF-RD-Open_APN_Functional_Architecture-2.0.pdf

※6:光ネットワークのデジタルツイン
実光ネットワーク設備を計測結果等に基づいてシステム上で仮想設備として再現し、詳細に解析することで高機能な光ネットワーク制御を行う技術。

※7:リモートプロダクション
映像制作において、撮影現場と制作拠点をネットワークで接続し制作を行う手法。

※8:データセンタエクスチェンジ
地理的に分散されたデータセンタ間で大容量低遅延の回線を提供するサービス。

※9:Innovative Optical and Wireless Network (IOWN)
あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤。NTTニュースリリース「NTT Technology Report for Smart World:What's IOWN?」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2019/05/09/190509b.html

※10:OpenLab@UT Dallas
オープンネットワークのイノベーションの創出をめざしテキサス大学が中心に運営する、光ネットワーク相互接続の試験環境を提供する業界団体。

※11:光トランシーバ
データ信号の光伝送を行うための送受信機能を備えた機器。

※12:装置監視制御回線
ユーザ主信号の転送ではなく、通信装置の監視制御のために利用される制御用回線。

※13:Beluganos
NTTがIP Infusion社と連携し開発したホワイトボックス装置用のNOS(ネットワークOS)。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/03/28/230328b.html

※14:TransportPCE
OpenROADM MSAの規定するデータモデルに対応した波長多重伝送装置用のオープンソースコントローラ。

※15:OpenConfig
データセンタの通信装置で一般的に使われる装置制御データモデル。

※16:MANTRA
TIP Open Optical Packet Transportのプロジェクト。OpenConfigによりL0/L3装置からプラガブルトランシーバの制御を行う IP over DWDMのユースケースを実現するオープンプロジェクト。TIP_OOPT_MANTRA_IP_over_DWDM_Whitepaper-Final-Version3.pdf

※17:IP over DWDM
ルータなどのL0/L3通信装置の光トランシーバから長距離伝送用の光波長多重ネットワークへ接続する回線提供方式。

※18:Teraflow
ETSIにて実装されるIPレイヤ、光レイヤ通信装置を統合的に制御するオープンソースコントローラ。

※19:AIエージェント
光ネットワークの動作を機械学習し、自然言語によりオペレータをサポートするソフトウェア。

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社

先端技術総合研究所

企画部 広報担当

※上記リンク先は「日本電信電話株式会社」のお問い合わせフォームになります。


NTTコミュニケーションズ株式会社

経営企画部 広報室

2025-R034

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