BCP対策をリモートワークの延長線で推進するには

BCP対策をリモートワークの延長線で推進するには

目次

すでにBCPの「土台」ができている企業は多い?

2022年の調査によるとBCP(事業継続計画)を「策定している」と回答した企業は17.7%、「現在、策定中」(7.6%)、「策定を検討している」(24.6%)を含めると49.9%となり、BCPを策定する意識はいっそうの高まりを見せています。この背景にある理由としては、想定するリスクが地震や風水害、噴火などの「自然災害」(71.0%)に次いで、新型コロナウイルスの影響による「感染症」(53.5%)、近年の急増するサイバー攻撃を受けて「情報セキュリティ上のリスク」(39.6%)、そして昨今の世界情勢を受けて「戦争やテロ」(19.0%)も大幅に上昇しています。

事業の継続が困難になると想定しているリスク

事業の継続が困難になると想定しているリスク

※出典:帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(2022年)より

自然災害を想定したBCP対策は時間軸で3つに分かれます。「初動・情報収集フェーズ」では緊急地震速報を受けて社員のみならず、設備、さらには取引先、協力会社などの安否、被災状況を把握する必要があります。続いての「状況共有フェーズ」では情報収集したデータを社員間で把握、共有し、具体的な対策を立てて実行していきます。そして「復旧フェーズ」では具体的な対策に基づき、粛々と復旧作業を進めていきます。ここで肝要となるのはロケーションフリーで働けるリモートワーク環境の整備、社内のみならず社外間との共同作業ができる環境づくりです。

このように3つのフェーズをふまえた組織横断的な取り組みがBCPにおいては重要になります。ここで押さえておきたいことは最新のITをどのように組み込んでいくかです。すでにお気づきかもしれませんが、コロナ禍において在宅勤務などのリモートワーク環境の整備に取り組んだ企業は少なくありません。つまり、社員が出社しなくてもコミュニケーションが取れる環境があることは、BCPの土台ができているとも言えるのです。ここを起点に取り組みを進めていけば、大規模災害などを想定したBCP対策にも充分に活かせるのではないでしょうか。

いまのリモートワーク環境は本当にBCPに役立つのか

一般的なリモートワーク環境のBCP観点での有効性を探ってみます。

まず、リモートワークの浸透に伴い普及が進むSaaSなどの「クラウド活用」です。オンプレミスからクラウドへの移行で得られるメリットは運用コストの削減、急変する事業環境に即応できる柔軟性や拡張性の高さなどが挙げられます。そのうえ、多くのクラウドサーバーは堅牢なデータセンターに設置されているため災害に強く、有事でも事業を継続できる強みもあります。BCPの観点からもクラウド移行は合理的な対策といえるでしょう。

続いて、自宅などのさまざまなロケーションからのサービス利用、社員間コミュニケーションに欠かせない「ネットワーク」です。リモート拠点によって通信品質は変わるため、どこからでも安定してネットワークがつながる環境整備がリモートワークの生産性を高めるためには重要です。有効なリモートアクセスサービスの選定、SaaS利用などにおけるボトルネックを解消するローカルブレイクアウト、センター回線の帯域増強などの対策が有効になります。これらにより安定したネットワーク環境が整備できれば、災害時の事業継続にも活用できます。万一の災害に備える対策のみにコストを確保することは困難ですが、リモートワーク環境の取り組みと併せて推進できれば予算も確保しやすくなるでしょう。

そして在宅勤務などのリモートワークに最も不可欠なPCなどの「デバイス」です。会社からPCを支給する際に配慮すべきは、社員にとっての使いやすさ、会社にとっての安全性を担保することにあります。これらを両立がリモートワークを継続する上では重要になります。もちろん、災害時のBCPでも同様です。リモートワークに必要なPCを通信回線、セキュリティ対策をセットで提供するパッケージサービスなどもありますので、検討してみるといいかもしれません。

要するに、クラウドへの移行を加速し、ネットワーク環境を整備、そして利便性と安全性を両立する社員PCを用意するリモートワークへの取り組みを進めることで、そのまま災害時のBCP対策における強固な土台にもなるのです。

災害に有効なIT導入でより万全なリモート環境へ

オフィスと同等の働き方を実現できるリモートワーク環境が整備できたら、次の段階は災害時の事業継続に向けたITサービスの拡充です。ここで各フェーズにおけるツールの活用例をご紹介します。

まず「初動・情報収集フェーズ」では「 緊急地震速報配信サービス 」により、速報に加えて各種機器制御と連携することで、安全なシステム停止を実行できます。

また、安否確認サービスでは、従業員や取引先関係者に自動で安否や設備の状況確認を行い、回答を手間なく集計。収集した大容量の写真、動画などをファイル共有サービスなどで集約することで、店舗・工場・オフィス等の被災状況や、可視化を迅速に実行できます。被災状況を時間や手間をかけずに把握することで、災害対策本部の立ち上げ、災対メンバーや社員への指示連絡などが速やかに行えるようになります。

「状況共有フェーズ」では安否確認サービスのWeb掲示板メニューを使って社員への行動指示、被災・復旧の最新状況を掲載し、円滑な情報共有を行います。さらにWeb掲示板にファイル共有サービス専用URLを案内することで、大容量のファイルや動画でもブラウザから確認できます。また、ファイルやフォルダへのアクセス権限設定によって、経営層、社員、取引先などに向けた柔軟かつセキュアなアナウンスも可能です。多拠点間でのコミュニケーションはWeb会議などで最新状況を共有することで、具体的な対策に向けた検討を進められるでしょう。

次の「復旧フェーズ」でポイントになるのは、暫定的に事業を継続させることです。セキュリティが確保されたコラボレーションツールの活用により、社外からPC、スマートフォンなどの多様なデバイスから資料共有やタスク管理、 Web会議などで容易に共同作業が行える環境が実現します。

そして、リアルタイムなコミュニケーション手段として必要不可欠なのが電話環境です。PBXのクラウド化によって、災害時の電話網の輻輳、通信規制の影響を受けず、平常時と同様の音声通話が可能になります。さらにスマートフォンなどからでも場所を問わず内線通話が利用できるメリットもあります。

このほかにも有効なツール活用によって、BCPに関する包括的な対策が可能になります。設備投資を抑え、低コストに利用できるクラウドサービスであれば、事業規模を問わず比較的簡易に導入できるため、まずはスモールスタートしつつ拡充していくのもよいでしょう。また、事業や経営戦略を踏まえて、災害による影響が大きな要素などで優先的に取り組むべき課題から検討することも重要です。これから災害時のBCP対策に取り組むのであれば、リモートワークの延長線で考えるのがセオリーといえるかもしれません。

災害フェーズの対策シナリオと活用サービス例

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