「ネットが遅い、なんとかして」と言われても・・・
ネットワークなどのITに関するトラブル、まず矛先が向かうのは社内の情報システム担当です。「資料のファイルが送信できなくて仕事が進まない」「いつまで報告書のメールを待たせるつもりだ」など、拠点間通信が遅いからなんとかしてと言われても、できることはネットワークサービス事業者に問い合わせることくらいしかありません。しかも事業者からは「原因を調べるので待ってください」「いずれ改善するから様子を見てください」といった定型の回答しか返ってこない。いっこうに遅延は解消されぬまま、肩身の狭い思いをしている担当者も多いのではないでしょうか。
おそらく、こうした拠点間通信の遅延を巻き起こしている原因の多くは、各拠点とVPNを結ぶアクセス回線に「インターネット」を利用していることにあります。不特定多数の利用者が回線をシェアするインターネットは、時間帯やシーズンの利用状況により通信速度が低下します。しかも利用者は法人ではなく、圧倒手的多数の個人が占めるインターネットにおいて、混雑による遅延は避けられないのです。
この遅延のメカニズムをわかりやすく解説します。インターネットを利用するアクセス回線の多くはISPが提供しています。たとえばISPの設備が東京と大阪にある場合、東北の拠点であれば東京、九州の拠点であれば大阪の設備にある入口(アクセスポイント)を経由して各拠点に接続する必要があります。この入口がボトルネックになり通信の遅延が発生します。たとえるなら、大型連休や長期休暇に高速道路の入口が渋滞するようなものです。このような大渋滞の状況がインターネットでは日常的に起きています。
インターネットの仕様に起因する拠点間通信の遅延問題を解決するのがSD-WANです。煩雑なクレーム対応から情報システム担当者を解放し、本来の業務に注力させるSD-WANの魅力を解説します。
あわせて読みたい記事
SD-WANはネットワークに「蛇口」をつける技術
私たちはキッチンで水を注ぐ際には水道を使いますが、コップ、鍋といった容器に応じて水量を蛇口の開け閉めで調整します。この蛇口のような機能をネットワークに取り付けたものがSD-WANです。たとえば、利用頻度の高いアプリケーションを別の水道管(通信経路)に切り替えて使いやすくしたりできます。
しかもSD-WANには水道メーターのような機能も付いており、「いつ」「どのアプリケーションが」「どの程度の通信量で」利用されているか、ネットワークを流れる通信量をリアルタイムで把握できます。拠点間通信の遅延、不適切な通信が見られる際などに適切な対策を講じることも可能です。しかも、これがサービスを提供する事業者ではなく、利用者側で自在にコントロールできることが大きな強みと言えます。
さらに、SD-WANの特長として注目したい機能がオーバーレイルーティングです。アンダーレイ (アクセス回線の回線種別など) に依存することなく仮想的なネットワークを構築。拠点立ち上げ、移転に伴うネットワークを開通する際も回線種別を意識することなく、迅速な対応が可能になります。
拠点間通信の遅延を解消するために、もうひとつ、SD-WANと合わせて押さえておきたいのがIPoE方式を採用したアクセス回線です。これは従来のPPPoE方式より大容量化した設備を利用することで混雑しにくいネットワーク構成になっています。さらに混雑の原因となりやすい個人向けサービスのトラフィックを論理的に分離し、高速で安定したインターネット接続が可能になります。
しかも、IPoE方式のもうひとつの特長として挙げられるのが、東京、大阪といったISPの設備がある入口(アクセスポイント)を経由する必要がないことです。たとえば、九州の福岡であれば最寄りにある「空いている」入口を使えるため、ISPの設備と距離が離れている拠点ほど通信速度は向上できます。わざわざ福岡から大阪のインターチェンジまで下道を使って東京に向かうのではなく、福岡のインターチェンジを使ってダイレクトに東京に向かえるようになるのです。
さらに最近では閉域網内で通信を折り返し、特定拠点へ直接VPN接続する「フレッツ折り返し」という機能を提供するSD-WANも登場。たとえるならナビ付きの自動運転で最短距離を通って目的の拠点に案内する機能です。最寄りの入口(IPoE方式)を使い、自動運転(フレッツ折り返し)により最短距離で目的の拠点に向かう。これが拠点間通信で実現できれば、遅延は劇的に解消され、高解像度の画像データもすばやく送信できるようになります。
つまりSD-WANとIPoE方式のアクセス回線を併用すれば、拠点間通信の遅延に関するクレームを受けて、情報システム担当者が自らの手ですばやく対応、復旧できるようになります。
高い? リスキー? SD-WANの誤解を解く
もともとSD-WANは大規模ネットワーク向けのサービスとして登場しました。このため、導入できる企業の規模が限定されていましたが、最近では数十拠点の拠点間通信でも利用できる規模、コストのサービスも登場しています。まさに中小企業における導入のチャンスは拡大しているのです。
さらに海外発のSD-WANのほとんどはインターネット利用が前提になっており、ここを導入のハードルに感じている企業も多いかもしれません。このようなセキュリティの課題を解決するために、閉域網上でSD-WANを利用できるサービスも登場しています。
SD-WANの「利便性」とエントリーVPNの「安全性」「経済性」のいいとこどり。NTT PCの「Master‘sONE CloudWAN」はNTTグループで開発したSD-WAN技術を用いたネットワークサービスです。日本企業向けに適した機能をシンプルな料金体系で安価に利用できます。
「Master‘sONE CloudWAN」は、先に紹介したネットワークに蛇口、水道メーターをつけるSD-WAN機能に加えて、閉域網内で通信を折り返し、特定拠点へ直接VPN接続する自動運転のようなフレッツ折り返しも提供。きわめて短期間、低コストで拠点間接続の遅延を解消できるサービスと言えるでしょう。
初期費用0円、最低利用期間1カ月間のスモールスタートも可能になっているため、まずは使って効果を実感してから、じっくり上層部を説得してみてはいかがでしょうか。社内対応にかかる情報システム担当者の稼働を軽減できれば、本来の企画、開発業務に集中できる環境をつくる第一歩になるはずです。