1.製造業は「現地・現物・現実主義」から
脱却すべき
製造業界では「現地・現物・現実主義」という“三現主義”の文化が存在します。これは、ものづくりの「現場」に足を運び、そこで製造される「現物」をよく見て、「現実」を認識したうえで問題解決を図るという考え方です。日本の経済成長を支えてきた、素晴らしい文化ですが、業界全体が人手不足に悩まされるなか、人材獲得や業務効率化のために、「リモート(遠隔)化」も視野に入れなければならない時期にきています。
今や、多くの企業でリモート会議は、当たり前となりました。こうしたリモートによるコミュニケーションを、製造業に取り入れられれば、業務の効率化はもちろん、働き方の多様化にも対応することができます。
製造業ではこれまでにも、業務効率化のため、一部の作業において自動化やスマート化が取り入れられてきましたが、次に製造業に必要なのは、先に上げたリモート会議のような「コミュニケーションのリモート化」です。たとえ現場主義の製造業であっても、テレワークなど現場以外の場所で働ける環境が必要な時代になったといえるでしょう。
2.現場に行かなくても、現場は管理できる
これまで「現場」を重視してきた製造業界では、どのように業務を「リモート化」すれば良いのでしょうか?
具体的な手法の1つが、「遠隔監視」です。これは、現場から遠く離れている場所でも、リモートで現場の状況を監視するというものです。
現場責任者や担当者が、製造現場を見て回るのには時間がかかります。特に工場が海外など遠方にある場合は、移動や宿泊に伴うコストも発生します。しかし、遠隔監視を導入すれば、時間やコストの負担は大きく軽減できます。現場に行かなくても、現場の危険な状況やトラブルの可能性、現場作業員の不正などが監視できます。
さらに、従来は実際に現場に同行してスキルやノウハウを伝えるのが一般的だった「技能支援」についても、遠隔で行うことが可能になります。遠隔でサポートできれば、コストや人員の削減につながり、多くの製造業の現場で課題となっている技能継承問題の解消に役立ちます。
加えて、遠隔での「情報共有」も可能です。たとえば、機器の故障やトラブルの原因になり得る箇所などの映像を、現場社員が遠隔地にいる専門家に送信して、的確なアドバイスを受けることもできます。ちょっとした異変にもすぐ対応でき、重大な事故を未然に防ぐことにつながるでしょう。
これまで「現地・現物・現実主義」を重視してきた製造業界において、「遠隔」を導入するのはハードルが高いと考える企業もあるかもしれません。しかし、導入にあたって必要なものは、動画撮影用のカメラと、映像を遠隔地に伝送するためのシステムだけなので、実はそこまで難しいものではありません。もちろん、ビジネスで利用する以上、セキュリティや通信の安定性には注意すべきですが、その点をクリアすれば、低価格で簡単に導入できるサービスも多くあります。
3.製造業以外もリモート化できる
ここまで取り上げたように、製造業の現場でリモートを導入することによって、業務効率化や安全確保などが期待できますが、何も製造業に限った話ではありません。たとえば、製造業同様、リモート化が難しいとされていた医療業界でも、こうしたリモートサービスは注目されています。
たとえば、自宅介護を受ける患者と、病院にいる医師や看護師をリモートでつなげば、離れた場所にいても、気軽にアドバイスを受けやすくなります。あるいは、医療関係者同士をつなぎ、情報共有に活用する、といったことも可能です。さらにいえば、専門外の分野の診察をする医師が、遠方のクリニックにいる専門医とリモートで治療方針を相談するといった使い方も考えられます。
リモートの活用は、さまざまな分野で広がっています。特に、移動や宿泊に伴うケースや人手不足に悩んでいる企業にとっては、多くのメリットが生まれることでしょう。