1.「緑ナンバー」では当たり前だったアルコール検査が「白ナンバー」にも義務化
運送業や運搬業など、業務で「緑ナンバー」(営業ナンバー)の社用車を使っている企業は、すでに道路交通法の取り決めに従って、アルコール検査を定期的に行っているでしょう。
しかし2022年度からは、道路交通法の施行規則改正によって、「白ナンバー」の社用車を扱う企業にも、運転者の酒気帯び有無の確認と記録の保存が義務化されることになりました。
そもそも「緑ナンバー」の車とは、旅客/貨物自動車運送事業者が扱う社用車のことで、簡単にいえば顧客から金銭を受け取り、旅客や貨物を載せて運ぶ車・バス・トラックのことです。これらの車両は、ナンバープレートが「緑」の車両を使うことが、道路運送車両法の第19条にて取り決められています。
一方で社用車であっても、旅客や荷物を取り扱わない車は、一般的な自動車と同じ「白ナンバー」となります。たとえば営業スタッフが顧客訪問時に使う車や、工場と別の工場を運搬するトラックなどは、基本的には白ナンバーの車両を使うことになります。
緑ナンバーの社用車を使っている企業については、2011年より、点呼時にアルコール検知器を用いたアルコール検査が義務付けられていましたが、白ナンバーの社用車については検査の対象外でした。
しかし2021年6月に、千葉県八街市で白ナンバーの社用トラックによる飲酒運転死傷事故が発生。このような飲酒運転事故の再発を防ぐため、同法が改正され、白ナンバー車でもアルコール検査が義務化されることになりました。
2.アルコール検査を担当する「安全運転管理者」って何?
今回の道路交通法の改正では、運転者の運転前後のアルコールの検査を行う役割として、各事業所が選任した「安全運転管理者」が指定されています。
安全運転管理者とは、一定数以上の自動車を保有する事業所において、安全運転の指導を担う人物のことです。安全運転管理者の業務は、事業所における交通安全教育や、点呼、運行計画の作成など、多岐にわたります。
2022年4月1日以降の新ルールでは、安全運転管理者の業務に、運転者の運転前後におけるアルコールチェックが追加されることになります。具体的には、(1)運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること、(2)酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存することの2点です。
ちなみに道路交通法では、安全運転管理者を設定しなければいけない事業所の条件として、乗車定員が11人以上の白ナンバー車を1台以上保有していること、または乗車人員に関係なく、白ナンバー車を5台以上保持していることの2点が挙げられています。
裏を返せば、乗車人員が10人以下の白ナンバー車を1台だけ持っている事業所、もしくは白ナンバー車を1~4台所持している事業所は、引き続き安全運転管理者を用意する必要はないため、安全運転管理者によるアルコールチェックの義務もない、ということになります。
3.2022年10月からはアルコール検知器の使用が義務化されるはずだったが……
この制度自体はすでに2022年4月1日からスタートしていますが、同年10月1日からは、さらにルールが厳格化される“はず”でした。
当初の予定では、10月1日からは先に挙げた2点のアルコールチェックの方法が、(1)運転者の酒気帯び運転の確認を、アルコール検知器を用いて行うこと、(2)アルコール検知器を常時有効に保持すること、に変更されるはずでした。
しかし2022年9月、警視庁はアルコール検知器による検査の義務化について、検知器の供給状況を理由に、「当分の間、適用しない」と発表しました。一部報道では、世界的な半導体の不足により、アルコール検知器の供給が追いついていないことが報じられています。
そのためしばらくの間は、4月1日からスタートしている(1)運転前後の運転者の酒気帯びの有無を目視等で確認すること、(2)酒気帯びの有無を記録し、1年間保存する制度のみで継続されることになります。
アルコール検知器の使用の義務化は延期となりましたが、2022年10月1日には安全運転管理者の選任義務違反に対する罰金額が変更されており、「5万円以下」から「50万円以下」に引き上げられています。
アルコール検知器が無いからといって、検査自体をおざなりにすることは許されません。ずさんな検査体制で営業を続け、飲酒運転事故が発生してしまった場合、企業のイメージは凋落し、ビジネス面でも甚大なダメージを受けることになりかねません。
検知器の使用の義務化は延期されましたが、アルコール検査の義務は引き続き継続されます。白ナンバー車を多く抱えている企業、これから白ナンバー車を追加しようと検討中の企業は、検知器があろうとなかろうと、確かな検査体制を構築しておくべきといえるでしょう。