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建築分野の法律が続々改正。すべての建物が「省エネ基準」をクリアする必要がある

建築分野の法律が続々改正。すべての建物が「省エネ基準」をクリアする必要がある

2022年6月、カーボンニュートラルの実現に向け、住宅や建築物の省エネ対策に関するさまざまな法改正が行われました。どのような変更点があるのでしょうか?

目次

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建築関連の法改正の裏に、カーボンニュートラルあり

「カーボンニュートラル」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を吸収量と均衡させることを指します。

日本政府は2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指しており、その中間目標として2030年度に温室効果ガスの46%削減(2013年比)を掲げています。これらの数値目標の達成に向けて、国内ではさまざまな法改正がスタートしています。

2022年6月に発布された、「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」(※)も、カーボンニュートラルの実現に向けた法律の一つです。これは住宅や建築物の省エネ対策を強力に進めることを目的としたもので、同法によって建築物省エネ法、独立行政法人住宅金融支援機構法、建築基準法、建築士法が変更されることとなります。

国土交通省「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について」

すべての建築物が「省エネ基準」に適合しなければいけない

すべての建築物が「省エネ基準」に適合しなければいけない

カーボンニュートラル実現のために、建築関連の法改正が行われることになった背景には、建築業界とエネルギー消費の密接な関係があります。

実は日本のエネルギー消費量の約3割は、建築物分野で占められています。そのため、カーボンニュートラルを実現するためには建築物分野を無視することができません。今回の法改正では、建築物の省エネ対策を加速するためのルールが追加されることとなりました。

具体的には、全ての建築物に省エネ基準の適合が義務付けられました。省エネ基準とは、住宅を省エネ化するために掲げられた基準で、断熱性能や照明、換気設備など建築物のエネルギー消費性能を総合的に評価したものです。

従来までは、同基準への適合の対象となったのは、建築基準法で定義される中・大規模の非住宅建築物のみで、小規模の非住宅・住宅は説明義務に留められていました。しかし今回の法改正で、小規模の建築物についても、省エネ基準への適合が義務付けられるようになりました。

さらに、より高い省エネ性能の建築物を選ぶことができるよう、エアコンや冷蔵庫など家電の性能表示のように、省エネ性能の表示も推進されるようになります。

分譲マンションについては、新たに「住宅トップランナー制度」の対象となりました。住宅トップランナー制度とは、住宅を新築する住宅事業建築主に対し、建築物省エネ法に基づいて定められている規定です。供給する住宅を省エネ向上の基準に照らし、必要があれば国土交通省が省エネ性能の向上を建築主に勧告できるようになっています。

このほかの変更点としては、住宅を省エネ化する際に必要な金額を低金利で融資する低利融資制度、市区町村に対して太陽光発電などの再生エネルギー設備の導入を促進する制度が追加されることになりました。

カーボンニュートラルには「木材」が効く?

カーボンニュートラルには「木材」が効く?

さらに今回の法改正では、木材の利用促進についても盛り込まれています。住宅や家具に木材を利用することは、木材の中に含まれる炭素を放出せずに長期間貯蔵する「炭素貯蔵効果」が期待できるうえ、製造や加工に要するエネルギーが少ないという特徴もあります。

このような特徴を持つ木材が利用しやすいよう、現行の建築基準法の防火規制が見直されることになりました。現行のルールでは、木材を使用する場合は不燃材料で覆い、耐火構造にする必要がありましたが、改正後は外壁に耐火性能を採用することで、木材の使用が認められることになりました。

さらに、今までは認められていなかった大断面材(太い集成材を用いた、断面寸法の大きな部材)の使用が、防火区画の中では認められ、高層と低層に分かれた建築物でも、低層部分の木造化が許可されました。

木造3階建て建築物に関しても認められました。これまで木造3階建ての建築物は、高さ13m以下かつ軒高9m以下のものであれば、二級建築士でも設計できる簡易な構造計算で建築可能でした。今回の法改正では、この高さが「16m以下」となり、軒高の制限は撤廃されました。

今回紹介した新しいルールの施行日は、記事執筆時点ではまだ決まっていませんが、近い将来にスタートすることは間違いありません。もし自社のオフィスを移転する場合、省エネ基準の高い物件を選ぶことで、照明や空調などのコストが抑えられる可能性があります。

カーボンニュートラルに向け、これから社会のさまざまな面でルールが変わっていくことが予想されます。その変更に合わせて、自分の会社を変えていくことで、やがて自社のビジネスもカーボンニュートラルに近づいていくことでしょう。

※本記事は2022年9月時点の情報を元に作成されています。

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