福井県鯖江市やNTTコミュニケーションズ、セブン&アイ・ホールディングス、BuzzFeed Japan ハフポストから4人が登壇。ファシリテーターは、実行委員長の 笹谷秀光 氏が務めました。
笹谷氏は、ポスト・コロナで急速に進むカーボンニュートラル社会の実現には、「SDGsによる『経済・環境・社会』の三位一体の解決策が必須」としたうえで、次のように投げかけます。
笹谷: 「変革を担うのは『人』。そこで、『人的資本』の考え方から、人の創造性とイノベーションを引き出し、Well-beingにつなぐコツを具体的な取り組み事例から学んでいきます」
ジェンダー平等で「メガネの町」を支える
福井県鯖江市の取り組みから、人的資本や官民連携の重要性について考えました。 佐々木勝久 市長がマイクを握ります。
佐々木:
「鯖江市は国内のメガネフレームの9割以上を生産するメガネの町であり、同時にものづくりの町でもあります。メガネ産業は家族経営が多く、女性が家庭も仕事も支える役割を多く担っています」
「このため鯖江ではSDGsの主軸に「ジェンダー平等」を掲げ、さまざまな目標達成の土台としています。人を中心に経済、環境、社会で好循環を起こすために、『拠点整備』『若者を中心とする意識啓発』『情報発信』を柱に取り組んでいます」
具体例として、各社の企業リーダーが集まり、企業の意識改革を進める目的で結成した「さばえ38 ( さんぱち ) 組」、小学生から大学生までが学びながら行動を起こす「さばえSDGs部」といった独自の活動紹介がありました。
「グローカルメガネ」でSDGsを見る
SDGs推進に賛同する企業・団体の連携・交流を深める目的で設立した「さばえSDGsグローカルクラブ」では、SDGsの目標をメガネにアレンジしたデザインを採用しました。
このメガネは、SDGsの17の目標を左右8つに分け、左が世界、右が地域を見ることをイメージしています。その橋渡しとなるのが「ジェンダー平等」で、左右のレンズ(世界)をつないでいます。
BuzzFeed Japan ハフポスト日本版編集部の 泉谷由梨子 編集長は、この取り組みを評価してエールを送ります。
泉谷: 「メガネの真ん中がジェンダー平等というのが、すばらしいですね。地方の人口減少は深刻な問題で、特に地方から都会に転出する女性の割合が多くなっています。ジェンダー平等の実現は、地方が活力を取り戻す大きな原動力になると思います」
脱炭素の鍵は新技術、消費電力100分の1に
ディスカッションの話題は、カーボンニュートラルと人的資本経営に移ります。
NTTコミュニケーションズ常務執行役員の芦川隆範・ソリューション&マーケティング本部長が取り組みを紹介しました。
芦川: 「NTTでは2021年11月に『Self as We』という基本理念を掲げました。『自然との共生』『文化との共栄』「Well-beingの最大化」という3つのテーマをもとに、9つのチャレンジ、30のアクティビティに取り組んでいます」
芦川: 「カーボンニュートラル社会の実現では、グループ全体としては2040年に、NTTコミュニケーションズでは2030年に実現という目標を設定。『IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)』というICTインフラ基盤の新技術、再生エネルギーの積極活用、省エネの3本立てで実現を進めていきます」
「IOWNとは、電子に代わって光を用いてデータを送受信する技術で、消費電力を100分の1に抑えることができ、持続可能なスマート社会を実現していきます。電力消費をいかに抑えるか。それがこれからのデジタル社会の大きなキーワードです」
こうした特性を生かした取り組みに、 泉谷 編集長も関心を寄せます。
泉谷: 「SDGsは技術革新で解決できる課題も多くあります。脱炭素で解決できそうな分野があることに期待が高まりますね」
リモートワーク80%超、人的資本に力点
一方、「技術で解決できないのが人」(
泉谷
編集長)との指摘もありました。
この点で
芦川
氏は、人的資本経営として「制度・環境・風土」の三位一体でワークスタイルの変革に取り組んでいると説明しました。
芦川: 「コロナ禍をきっかけに全社的にリモートワークに切り替え、現在もリモートワーク率は80%を超えています。コアなしフレックス導入、分断勤務なども取り入れて、社員のエンゲージメント調査では、ポジティブ回答率が7割を超えています」
これには地方自治体で旗振り役を担う 佐々木 市長も、「社会の変革に合わせて企業もダイナミックに変革を行っていることがわかりました。学ぶことが多い」。
食品ロス、脱プラ…共通ゴールの意味
企業による取り組みに会場の注目が集まるなか、セブン&アイ・ホールディングスの執行役員
経営推進本部
サステナビリティ推進部、
釣流まゆみ
氏が続けます。
グループ全体で1日の来店者が2000万人を超え、店舗も2万店を越えている同社。「地域に支えられている」という原点に立ち、SDGsから7つの重点課題を作ったといいます。
釣流: 「地域との連携、多様な人々、そしてお客様の生活を大切にする。従業員のやりがいと達成感、地球環境に配慮した店舗づくりなどが挙げられます」
「2019年には『環境宣言グリーンチャレンジ2050』を発表し、『CO2排出量削減』『プラスチック削減』『食品ロス・食品リサイクル対策』『持続可能な調達』という4つのゴールで、事業会社共通の数値目標を設定して取り組んでいます」
こうした共通のゴールや数値目標を持ち、事業会社を超えたイノベーションチームを組んだことで、「取り組みが加速して、連携が深まるメリットがあった」と分析しました。
身近な負を解く「サステナブル経営」
企業間の共創もあります。
CO2排出量削減の一例として、セブン&アイグループとNTTグループが連携し、千葉県内の太陽光発電所からセブン‐イレブン40店舗の運営に100%再生可能エネルギーを20年間の長期専用契約(オフサイトPPA)を結んだ事例が紹介されました。
釣流: 「経営の真ん中にあるのは、サステナブル経営です。事業を継続することが、地域や社会に貢献することになる。地道にお客様の声を聞きながらお客様の負を解決し、よりよく働く環境づくりを進めていきたい」
同社のスーパーやコンビニ事業について、 泉谷 編集長は「1日3回も利用することもあるくらい身近な存在。消費者にメッセージを発する役割、責任が大きい」と期待を込めます。
泉谷: 「私が最近すごくいいと思ったのは小売各社の『てまえどりプロジェクト』です。これは手前にある賞味期限が近いものから商品を選ぶことを呼びかけるもの。そういうスモールステップで、みんながSDGsのアクションへとつなげられるのが、すばらしい」
「人をどう進化させ、技術を工夫するか」
今回のパネルディスカッションでは、いずれもプラットフォーマーとしての期待が大きい自治体と企業の先進的な取り組みが紹介されました。
最後に
笹谷
氏が論点をまとめて、会場に呼びかけます。
笹谷: 「見えてきた共通の焦点に、『人をどう進化させるか』ということがあると思います。また、もうひとつのキーワードが『技術や工夫の重要性』でした。
「今回のようにさまざまな事例を学ぶことで、みんなが最後には幸せになれるような工夫を進めていくことが大切です。誘われる人ではなく、主体的に誘う人になること。それがみなさんの幸せにも、Well−beingにもつながっていくと思います」
※この記事はNTTコミュニケーションズ株式会社の「NTTコミュニケーションズ 編集チーム」が制作した記事です。
この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。
取材・構成:NTTコミュニケーションズ NewsPicks +d担当
撮影:鈴木愛子
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)