メタバースにおけるビジネスイベントは
もはや当たり前に
コロナ禍を経た今、ビジネスシーンでデジタル技術を活用することはもはや当たり前になりつつあります。テレワークやリモート会議はもちろん、報道向け発表会や業界向けのイベントもリモートのライブ配信で開催されることも珍しくありません。
こうしたビジネスシーンのオンライン化が進む中で、新たに導入されはじめている技術の一つが「メタバース」です。
メタバースとは、コンピュータグラフィックで表現された仮想空間のことで、インターネット上の世界で自分の分身となるアバターを介して、他の参加者とコミュニケーションが取れる点が特徴です。メタバース内でショッピングをしたり、イベントを楽しむことも可能です。
メタバースはビジネスシーンにおいても活用されており、特にバーチャルイベントの会場として活用される例が多くなっています。
たとえばある企業は、メタバースの4つのトレンドに関するプレゼンをメタバース内で実施しました。参加者はアバターで登場したプレゼンターを、自らのアバターを通じて視聴します。プレゼンの資料のダウンロードリンクがバーチャル会場に用意されるといった工夫も見られました。
また自動車会社では、新車のバーチャル発表会をメタバース上で開催。発表会では、バーチャル空間の街にギャラリーが作られ、VRを通じた試乗会も行われました。
メタバースにおけるビジネスイベントの実施は、これ以外にも多数実施されています。企業の対外アピールの手段のひとつとして定着しつつあるといっても過言ではないかもしれません。
メタバース内に
大規模な「バーチャルコネクトセンター」が誕生
一方で、メタバースをイベント以外の用途として活用するケースも出始めています。たとえばNTTコミュニケーションズとトランスコスモスでは、2022年8月より「バーチャルコネクトセンター」という実証実験にて、メタバースを活用しています。
コネクトセンターとは、電話やメール、チャットやSNSなど多様なコミュニケーションツールからの問い合わせに対応するカスタマーサービスの部署・部門のことです。トランスコスモス社のコネクトセンターは、国内・国外に拠点が点在していたり、オペレーターが在宅勤務をしているなど分散拠点化しています。この分散化した拠点をメタバース上に集約するのがバーチャルコネクトセンターです。
バーチャルコネクトセンターでは、各地に分散したオペレーターたちが、メタバース上のバーチャルコンタクトセンターに集まることで、あたかも現実世界の大規模コンタクトセンターで一緒に働いているかのような体験ができることを狙っています。実証実験では、リモートワークにおけるオペレーターの孤立感の解消や、メタバース上のスムーズな情報共有などが検証されています。
企業や自治体も簡単に
メタバースへ参入できるサービスがある
最近では、企業や自治体が手軽にメタバースに参入できるサービスも登場しています。
NTTコノキューの「DOOR」というサービスでは、メタバース上で商品販売やライブ配信、会議を行いたいと考えている企業や自治体に向け、バーチャルルームを提供しています。サービスにはテンプレートや3Dアイテム、画像や動画などの素材が用意されており、簡単にメタバースのルーム作成ができます。
すでに多くの企業や自治体が、DOORにてメタバース空間を構築しています。たとえば学習塾「RAKUTO」を運営する株式会社らくとは、DOORに広報用のルームを開設しています。ルーム内にはRAKUTOの教育コンセプトを伝える動画や、子どもたちが授業で制作した作品を展示しており、メタバース上の部屋を一周することで、塾全体のコンセプトが理解できる空間となっています。
愛知県岡崎市では、市内の成道山大樹寺が所蔵する重要文化財である「大方丈障壁画」をメタバース上に公開しています。ルーム内では、壁画が部屋をぐるっと一周するようにパノラマ式で表現されているため、まるで実際に目の前にしているように鑑賞できます。このように、観光分野におけるメタバースの活用も可能です。
メタバースは仮想空間に現実のような世界が展開できるため、現実世界におけるほとんどのことを再現することが可能と言われています。もともとはコロナ禍におけるイベントの代替手段として活用され始めたメタバースですが、それだけに留まらない可能性を秘めているといえるでしょう。
※本記事の内容は2023年3月現在の情報で作成されています。