フリーランスは、
企業から不当な扱いを受けている?
2023年5月、フリーランスの働く環境を整備する「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以下、フリーランス新法)という法律が公布されました。2024年秋頃に施行される予定となっています。
この法律は、フリーランスの事業者が、企業など発注事業者から業務委託を受ける場合における取引の適正化と、フリーランスの就業環境の整備を目的としたものです。
フリーランスで働く人達は、企業に雇用されているわけではありません。そのため、労働基準法などの労働関係法令は基本的には適用外となります。企業との取引も弱い立場になりがちで、相手側の企業から突然契約が解除されたり、業務内容が十分に提示されないといったケースも起きているようです。
2021年に内閣官房・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁が共同で実施したフリーランス4,243人に対するアンケート調査(※)では、「直近3年間の取引で、依頼者から納得できない行為を受けた経験がある」は39.2%、「取引条件や業務内容が十分に示されていない/全く示されていない」は44.4%でした。約4割のフリーランスが、企業とのビジネスにおいて、不当な扱いを受けている結果となりました。
※内閣官房新しい資本主義実現本部事務局、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」
https://www.jftc.go.jp/file/flmovie_script.pdf
フリーランス新法では、発注事業者側がフリーランスに対し、先に挙げたような不当な扱いを行わないよう、さまざまなルールや遵守事項が設けられています。
なお本法律におけるフリーランスとは、業務委託の相手方であり、かつ従業員を使用しないフリーランス事業者を指します。つまり、企業に対し“単独で”委託業務を受ける人が対象です。たとえフリーランスであったとしても、従業員を使用していたり、一般消費者を相手に取引をしている場合は、本法律においては対象外となる予定です。
フリーランス新法で企業が遵守すべきルールとは
フリーランス新法によって、新たに設けられたルールは以下の7点となります。
【1】書面等による取引条件の明示
発注事業者がフリーランスに業務委託をした場合、書面等による「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の取引条件を明示することが義務付けられます。
【2】報酬支払期日の設定・期日内の支払い
発注事業者は、フリーランスから発注した物品などを受け取った場合、その日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことが義務付けられます。
【3】禁止事項
発注事業者は、フリーランス側に対し責任が無いにも関わらず、「発注した物品を受け取らない」「受け取った後に返品する」「発注時に決めた報酬額を後で減額する」など、法律に定める行為をすることは禁じられます。
【4】募集情報の的確表示
発注事業者はフリーランスの募集をする際、 虚偽の表示、誤解を与える表示をすることが禁止され、内容を正確かつ最新のものに保つことが義務化されます。
【5】育児介護等と業務の両立に対する配慮
発注事業者はフリーランスが業務と育児や介護を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をすることが求められます。
【6】ハラスメント対策に係る体制整備
発注事業者はフリーランスに対するハラスメント行為を防止するための体制整備などの措置を講じることが求められます。たとえば、自社の従業員に対し、ハラスメント防止のための研修を行うことや、ハラスメントに関する相談の担当者を決めることが含まれます。
【7】中途解除等の事前予告
発注事業者はフリーランスに対し業務を解除したり、契約を更新しない場合は、原則として30日前までに予告する義務を負います。
もし発注事業者がこれらのルールに違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣が、発注事業者に対し、違反行為について指導や立入検査、勧告などを行う場合があります。場合によっては、50万円以下の罰金が求められる恐れもあります。この罰金は、法人だけでなく違反行為者にも科せられる「法人両罰規定」となります。
※参考
厚生労働省「フリーランスの取引に関する 新しい法律ができました」
https://www.mhlw.go.jp/content/001124404.pdf
もう口約束では仕事を依頼できない!
冒頭でも触れたように、フリーランス新法の施行日は2024年秋頃となっています。現時点で施行日は未定ですが、あらかじめ施行前から準備をしておくことで、法改正後の正しいビジネススタイルに、スムーズに移行することができます。
企業の中には、馴染みのあるフリーランスに電話など口約束で仕事を依頼していたケースもあるかもしれません。しかし、こうした発注方法は、フリーランス新法における【1】の「書面等による取引条件の明示」に違反する恐れがあります。
たとえメールやSNSのDMのように書面として残る形で依頼したとしても、支払いに関する連絡が欠けている場合は、【2】の「報酬支払期日の設定」に抵触する可能性も考えられます。
新法施行後のビジネスシーンでは、たとえフリーランス相手であっても、正式な書面で契約を交わすことは必須といえるでしょう。
契約の手間は「dX電子契約」で解決できる
これまで口約束でビジネスを続けてきた企業とフリーランスにとっては、取引内容を書面で確認するという手間が増えることになりますが、こうした手間は契約をサポートするWebサービスを利用することで、簡単かつ確実に契約を結ぶことができます。
たとえばドコモビジネスでは、オンライン上で契約締結ができる「dX電子契約」というサービスを展開しています。
dX電子契約は、インターネットのブラウザを利用するだけで、取引先との契約締結、契約書の回覧、契約書原本の管理などが可能です。ハンコや紙、郵送代や保管費用、印紙も不要のため、コスト削減も期待できます。もちろんフリーランスとの契約締結にも対応しています。
ほかにも、クラウド型の請求書発行サービスであるdX電子請求書発行を利用すれば、負荷の大きい請求書作成・印刷・封入・発送作業をゼロにし、業務効率化やコスト削減を実現することが可能です。
繰り返しになりますが、新法はフリーランスの人々を守るために作られたものなります。新ルールに対応する手間は企業側・フリーランス側ともに必要になりますが、その手間はビジネスを円滑に進めるためには必要不可欠といえるでしょう。そしてこの手間は、dX電子契約やdX電子請求書発行といった、デジタルツールで軽減することができます。フリーランス新法を始めとするルール変更を機に、一度検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事は2023年11月現在の情報を元に制作されています。最新かつ正確な情報は官公庁や自治体のホームページなどをご確認ください。