労働条件通知書の未交付は違法
企業は従業員を雇用する際(労働契約の締結)、労働者に対して、労働条件を明示しなければなりません。これは労働基準法第15条第1項に「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されているためです。
具体的には、以下の事項を明示する必要があります。
【必ず明示しなければならないこと】
- 契約期間に関すること
- 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
- 就業の場所、従業する業務に関すること
- 始業・終業時刻*、休憩*、休日*などに関すること
- 賃金の決定方法、支払時期などに関すること
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
- 昇給に関すること
このうち、昇給に関すること以外は原則として書面での交付が必要(一定の場合にはFAXやSNS等による通知が可能)です。
そのほかにも、使用者が定めをした場合に明示しなければならないこととして、以下の事項があります。
【定めをした場合に明示しなければならないこと】
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
(参考)厚生労働省:令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります。
https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/newpage_00847.html
こうした事項が記載された労働条件通知書の交付は、正社員、契約社員、アルバイト・パートといった雇用形態にかかわらず行なう必要があります。雇用契約書がなく、口頭での約束のみであっても、雇用主と労働者双方が合意していれば違法とはなりませんが、労働条件通知書の未交付は違法となるので、人事や採用担当者は気をつけなければなりません。
2024年4月、求職者に対して明示しなければ
ならない労働条件が追加
2024年4月から、求職者に対して明示しなければならない労働条件の追加などを内容とする、改正職業安定法施行規則が施行されました(※)。これに伴い、求職者への労働条件明示のルールなどが変更となります。
具体的には求職者に対し、明示しなければならない労働条件に以下の事が追加されます。採用担当者は求人を行う際に、以下の情報を適切に伝える必要があります。
① 従事すべき業務の変更の範囲 ※
② 就業場所の変更の範囲 ※
③ 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)
※ 「変更の範囲」とは、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中における変更の範囲のことをいう
出典:厚生労働省:求職者への労働条件明示のルールなどが変わります!
https://www.mhlw.go.jp/content/001114166.pdf
この変更は、2024年度の求人募集より適用されるため、企業の人事・採用担当者は求人募集において上記内容を掲示できるよう準備を進める必要あります。
デジタルツールは厳格化・複雑化する労務管理に向いている
今回紹介した労働条件明示のルールはもちろん、近年企業と労働者を取り巻くルールは厳格化しています。こうした労働条件や勤務時間をおろそかにすると、企業にとっても後々悪影響を及ぼしかねません。一方でテレワークや時短勤務など、働き方や働く場所は多様化しており、管理が難しくなっていることも事実です。このような人事・労務に関する課題に有効なのがドコモビジネスで提供している「dX勤怠・労務管理」です。
dX勤怠・労務管理は、勤怠・給与・労務・経費・社員情報のまるごと一元管理が可能になるツールです。人事・労務領域の業務効率化はもちろん、労働労基準法への対応も支援しているため、法改正やルール変更にも焦らず対応することができます。
従来のような「口約束で」というような方法は、もはや通用しなくなっています。従業員を新たに採用する際は、あらためてルールを確認し、適切な方法で雇用することが、自社のメリットにもつながるはずです。
※本記事は2023年11月現在の情報を元に制作されています。最新かつ正確な情報は官公庁や自治体のホームページなどをご確認ください。