言葉も「タイパ」なZ世代
4月から新社会人になるZ世代のみなさん、おめでとうございます。社会では、これまでとは違う言葉づかいを要求されることが多くあります。どんな言葉選びがOKで、何がNGなのか、不安な人もいることでしょう。
一方で、Z世代を迎え入れる上司や先輩も、「Z世代はよくわからない」と少し身構えてしまうところがありそうです。
ここで改めて、Z世代のコミュニケーションの傾向についておさらいしておきましょう。

Z世代の言葉の使い方は一言でいうと、「なんでも短縮・省略形」ということに尽きます。「タイパ(タイムパフォーマンスの略)」という言葉は、ビジネスの世界でもかなり浸透していますが、Z世代の言葉こそまさに「タイパ」。
できるだけ短く、簡単に、というのが、彼らの流儀です。「了解しました」を「り」で終わらせる、なんていうのは、典型的な例ですね。
いつの時代も、大人からみると若者言葉は「理解できない」となりがちですが、Z世代はそんな言葉の使い方がくるくる変わるのも特徴です。本人たちも言葉の流行を追いかけるのが大変で、言葉疲れを感じる人もいるようです。
「敬語が使えない」Z世代は人事部の悩み
そんなZ世代について、会社の人事部からは「敬語が使えない」という相談を寄せられることがとても多くあります。SNSの省略した書き言葉でコミュニケーションすることが多いのに加え、学校や家庭でも敬語を使うことがほとんどないのがその一因のようです。上下関係を嫌い、フラットな人間関係を好むZ世代は、先生など目上の人ともタメ口で会話することが珍しくありません。
敬語を使う経験値が圧倒的に低いため、会社に入ってから上司や先輩、取引先と話すシーンになると言葉につまってしまったり、間違った敬語を堂々と使ってしまったりする。なかには友だちと話すような言葉づかいをビジネスでも持ち込んでしまう、こともあります。

「マルハラ」は本当にハラスメントなのか?
また、最近、メディアで話題なのが「マルハラ」です。「マルハラ」とは、メールやチャットのやりとりで、文末に句点の「。」をつけて文章を終えると、冷たい印象を与えるというもの。それがハラスメントになるのでは? という指摘があります。
「。」で終わる文章について、若者がテレビの街頭インタビューで「相手が怒っているような気がする」とか、「コミュニケーションを一方的にブチッと絶たれた印象がある」などとコメントしているのを見たことはありませんか。
Z世代が「。」を嫌がる理由としては、単語中心のSNSでは文章のやりとりが少なく、さらに最後に「。」をつけることもあまりないからでしょう。そのため「。」のある文章を見ると、それが必要以上に強調されて感じられ、「怖い」と思うようです。
例えば、
Z世代「今回の飲み会はここのイタリアンでいいでしょうか?」
というメールに対して、
上司「そこでいいと思う。」
と返信すると、その「。」を見て、「上司は何か怒っているんじゃないか?」と思うというのがマルハラです。

とはいえ、メディアは面白おかしく煽っていますが、それが本当にハラスメントなのかは、大いに疑問です。
Z世代には馴染みがなくても、ビジネスシーンの書類やメールの作成で「。」が使われるのはごく普通のこと。「『。』って使っちゃいけないの?」など、なんでもかんでもハラスメントと考えて過剰に反応する必要はないと思います。
そもそもZ世代のみんながみんな、そこまで文章に「。」がつくことを気にしているとも思えません。
Z世代が嫌がる「おじさん(おばさん)構文」
「マルハラ」よりも気をつけたいのは、「おじさん(おばさん)構文」です。おじさん(おばさん)構文とは、SNSで絵文字をたくさん使って、妙に馴れ馴れしいメッセージを送ることを指します。
例えば「電車が遅れて、遅刻します」と連絡したら、上司が「えっ、大丈夫??? 心配だなあ〜」という文章に、これでもかというくらい絵文字が入っているパターンです。親しみを込めて「◯◯ちゃん、おはよう<絵文字の太陽マーク>」などと上司からメッセージをもらっても、「キモイ」と受け取られるだけです。
特に悪気がなく、くだけたやりとりで親近感を出したいだけかもしれませんが、ビジネス上の関係で絵文字多用のおじさん(おばさん)構文はNGです。シンプルに、要点のやりとりに徹するのが正解でしょう。

また、Z世代は、性別やLGBTQに関する言葉にも敏感です。「男だから」「女らしく」「新人なのに」など性別や立場でその人に役割を押しつけたり、偏見で決めつけたりする言葉は、Z世代に限らず、いまどきNGなワードとされているので、気をつけるようにしたいですね。
成長できない会社は「ゆるブラック」
学校を卒業して社会に出たばかりの新入社員ですから、ビジネスシーンでの言葉の選び方、コミュニケーションの取り方で間違えることがあるのも仕方がありません。最初は間違えてもいいので、それをビジネスにふさわしいものに直していけばいいのです。
そのためにも、上司や先輩がきちんと間違いを指摘して、正してあげることが大切です。Z世代の気に障らないように、ハラスメントと思われないようにと神経質になりすぎるのは考えもの。若者に迎合して、彼らが成長する機会を失うことがないようにしたいですね。
世の中には「ゆるブラック」という言葉があります。一見すると上司と部下が友だちのように仲がよく、数字などのノルマもない「ホワイト企業」に見えるのですが、そのゆるさが実は問題。ぬるま湯のような環境で、ビジネスパーソンとして成長もできず、給与もそれほど上がらない、スキルが身につかないから転職もできない。そんな会社のことを「ゆるブラック」というようです。そうならないように新入社員を迎える側も気をつけたいですね。
なにごともTPOが基本です。けじめがなさすぎると、将来的にもデメリットが多くなってしまいます。上司や先輩などの周囲は、しっかり本人の成長をサポートし、Z世代の当事者も社会で経験を積んで学ぶ謙虚な姿勢を大切にしたいですね。
この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。
文:大野萌子
構成:久遠秋生
デザイン: 山口言悟(Gengo Design Studio)
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編集:中村信義