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人事・労務部門を取り巻く3つの環境変化と課題
企業の人事・労務部門を取り巻く環境は大きく変化しています。1つ目は少子高齢化に伴う人手不足です。もちろんこれは人事・労務部門に限った話ではありませんが、働き手が減っていく中、ペーパーレス化などで業務のムダを省き、生産性を上げていくことは、人事・労務部門にとっても欠かせません。
2つ目は働き方の多様化です。コロナ禍をきっかけにテレワークが当たり前となり、働く場所を自由に選べるハイブリッドワークが広がりました。多様な場所で働く従業員をいかに管理するかは、人事部門の重要な課題です。
3つ目は人事業務の広がりです。従来、人事部門はコストセンターに位置付けられがちでしたが、その役割が変わりつつあります。たとえば、一部の企業に対する「人的資本情報の開示の義務化」も、その1つです。対応するには、人の情報が集約されている人事部門が果たすべき役割は大きいのです。
さらに、従業員の能力・技能を把握して管理・活用するタレントマネジメント、従業員のモチベーション管理など、近年の人事部門には、より戦略的な役割も期待されています。
ところが、こうした変化に対し、これまで人事部門を支えてきた既存のシステムでは対応が難しくなります。そこでクラウドも含めた新しいシステムを検討する企業が増えていますが、その選定や導入を巡っては、さまざまな混乱・問題が起きているのが実態です。
意外と知られていない?
人事関連のSaaS製品が抱える問題点
現在、ほとんどの企業の人事部門には、人事、勤怠、給与などを管理する何らかのシステムが入っているでしょう。こうした人事部門向けシステムの変遷について、jinjer 執行役員 ビジネス統括本部 第2事業本部 本部長 本田泰佑氏は次のように説明します。
「2000年から2015年あたりまでは、オンプレミス型のERPパッケージを導入し、自社の業務に合わせてカスタマイズして活用するのが主流でした。しかし、投資が大規模になり、運用もブラックボックス化してしまう課題がありました。2015年ごろからはSaaS型の製品が登場し、その柔軟性や拡張性を評価して導入したり、既存のERP製品から移行したりする企業が増えていきました」(本田氏)

執行役員 ビジネス統括本部
第2事業本部 本部長
本田泰佑氏
SaaS型の製品といってもいくつかの種類があります。大きく分けると、人事管理/勤怠管理/給与管理など特定の業務に絞った特化型の製品と、「○○労務管理」「○○勤怠管理」といった同じ冠を持つが、実態は別々の製品に分かれ、APIで連携している製品です。
重要なポイントは、どちらも業務ごとにデータベースが分かれていることにあります。特化型はもちろん、APIで連携する製品もデータベースが業務ごとに分かれているため、人事部門における「データ統合」という観点では問題が多いのです。
「たとえば、Aさんの所属部署、役職、給与額、扶養の有無といった情報をX月X日といった基準日で確認しようとしてもできない製品は少なくありません。また、飲食店でシフトを作るとき、来月、他店から異動になるスタッフを想定して組むといったことも困難です。これはデータベースがバラバラで、APIでの連携も限界があるからです。しかし、データベースが1つであれば、こうした問題は起きません」(本田氏)
そして、これらのような人事データが散在していることによって起きる問題を本質的に解決できるのが、1つのデータベースで人事関連情報を管理できるSaaS製品「jinjer(ジンジャー)」です。最大の特長は、すべての業務を「1つのデータベース」で管理していることです。これにより、入社後の人事管理、勤怠管理、給与計算、ワークフロー、労務管理、雇用契約、コンディション管理など、これまで多くの企業でバラバラに管理されていた人事業務を1つのプラットフォームに集約できます。

これに対して、ジンジャーは1つデータベースですべての業務に対応できる
NTTコミュニケーションズが
「やさしいDX」のために
ジンジャーに注目したワケ
人事関連SaaS製品としての完成度の高さを評価して、ジンジャーを自社のサービスとして提供しているのがNTTコミュニケーションズです。
同社は現在、中堅・中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するサイトとして「ドコモビジネスオンラインショップ」を運営していますが、そのサービスの1つとして、ジンジャーをベースとした「dX勤怠・労務管理」を提供しています。
NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 コミュニケーション&アプリケーションサービス部 第三サービス部門 担当課長 天池専太郎氏は、ジンジャーを選択した理由を次のように述べます。
「1つは機能の網羅性です。勤怠管理や労務管理、給与計算など、人事部門で必要となる業務が網羅されている点を評価しました。2つ目は使いやすさです。ドコモビジネスオンラインショップの重要なコンセプトの1つが『やさしい』なのですが、UI(ユーザーインターフェース)を含めた使いやすさは、このコンセプトに合致していました。そして3つ目が価格です。小規模な数量の購入でも市場価格よりも安価に提供できることを目指しました。この3つを総合的に判断して、ドコモビジネスオンラインショップで提供することを決めました」(天池氏)。


プラットフォームサービス本部
コミュニケーション&アプリケーションサービス部
第三サービス部門 担当課長
天池専太郎氏
「dX勤怠・労務管理」は、コスト面、サポート面でのメリットも大きいです。天池氏は次のように続けます。
「まずはコストです。jinjerと直接契約するよりも割安で利用していただけます。2つ目はサポートです。我々が一次窓口となり、通常は有料となる導入支援のサポートも提供します。また、導入に必要な移行作業の支援もオプションとして用意しています。さらに、ドコモビジネスオンラインショップで提供しているその他のサービスも含めて、ビジネスdアカウントだけでログインできるのもメリットです」(天池氏)
従業員の働き方を変革、新規事業の創出も可能に
「dX勤怠・労務管理」は2021年12月から提供され、すでに多くの企業で導入・活用されています。愛媛県松山市に本社を置き、コンクリート構造物の調査・診断、補修・補強工事を行うロクマルエンジもその1社です。
従業員が現場に直行することの多い同社では、アナログな方法で出退勤を管理し、残業も都度申告していたため、社長自らが勤務時間を管理・集計していました。さらに、給与も社長自ら計算していたため、月末は夜遅くまで作業することも多かったといいます。
「そこで同社は、『dX勤怠・労務管理』を導入し、この問題を解決されました。導入後、ほとんどの従業員が出退勤の打刻をスマートフォンで行うようになり、働き方も変化しました。従来は業務を終えると、事務所に戻って出勤簿にハンコを押す必要がありましが、出勤簿を廃止できたので、直帰が可能になったのです」(天池氏)
もちろん、これまで勤怠管理、残業時間の計算、給与計算に費やしていた時間も削減されました。その結果、削減された時間を新規事業の創出に使えるようになったといいます。
製品導入の前に
まずは「人事システムの健康診断」から
1つのデータベースで人事情報を管理するジンジャーをベースにした「dX勤怠・労務管理」の完成度の高さについて、天池氏は自らの経験をもとに次のように説明します。
「これまで私は、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズで勤務してきました。人事システムに関しては、NTTドコモがスクラッチで開発した独自システム、NTTコミュニケーションズが複数の製品を組み合わせたシステムでした。どちらの使い勝手も知っている立場としては、データベースが統合された『dX勤怠・労務管理』がベストであると言い切れます。ぜひ、そのメリットを体感していただければと思います」(天池氏)
本田氏も、「まずは人事システムの健康診断を」と次のようにアドバイスします。
「DXの掛け声でソリューション選定を進める前に、まずは自社のシステムが今どのような状態なのか、各業務のデータがどこに保存されているかを整理することをおすすめします。そうすれば、いかにデータがバラバラなのかが見えてくると思います。その上で対策を考え、必要であれば『dX勤怠・労務管理』をご検討いただければと思います」(本田氏)
なお、dX勤怠・労務管理はすべての機能を含む基本プランと必要最小限の機能で構成されたライトプランが用意されています。現在の自社の状況に合わせて、適したほうを選択するとよいでしょう。
最後になりますが、SaaS製品を機能の○×表で選定するのはおすすめしません。SaaS製品は自動的にアップデートされ、機能が追加されていくからです。むしろ、「データベースが1つである」といった製品のコンセプトや根底にある思想を重視したほうがよいでしょう。その意味でも、ぜひ「dX勤怠・労務管理」に注目していただきたいです。
