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【高槻発】ぶどう農園を地域活性化の
拠点となる「農業テーマパーク」に

【高槻発】ぶどう農園を地域活性化の拠点となる「農業テーマパーク」に

農業系スタートアップのノウタスが、人気アイドル・村上信五さんをプロジェクトリーダーとして立ち上げた「パープルM」。その拠点となるのが、大阪府高槻市にある「ノウタス高槻農園」です。ここからぶどうを取り巻くどのような課題解決にチャレンジしていくのでしょうか。(第2回/全3回)

目次

出身地の高槻からぶどうを

大阪府高槻市樫田地区にある「ノウタス高槻農園」。ここはノウタスが大阪府高槻市と包括協定を結び、2024年6月にオープンした農園で、同社が村上信五さんをリーダーとして進める「パープルM」の拠点でもあります。

そもそも、なぜ高槻市でぶどうなのでしょうか。実は大阪は日本有数のぶどうの産地で、高槻市は村上さんとノウタス代表取締役会長の髙橋明久さんの出身地でもあります。

髙橋「村上と初めて会ったときに、その場で生まれたアイデアが『パープルM』です。偶然にも僕も村上も高槻市出身だったので、「じゃあ、高槻でぶどうをやりたいね」という話が最初から出ていました」

「パープルM」の始動と共に早速リサーチしたところ、高槻市樫田地区で10年ほど前にぶどうのパイロット農園を立ち上げていたことがわかりました。しかし、Googleストリートビューで現状を確認してみると、荒れ果てた様子で耕作放棄地にしか見えません。

10年ほど前に高槻市でぶどう農園だった場所は耕作放棄地となっていた(写真提供:ノウタス)
10年ほど前に高槻市でぶどう農園だった場所は耕作放棄地となっていた(写真提供:ノウタス)

早速、2人で現地に行ってみると、確かに以前はぶどう農園をやっていましたが、5年ほど前の台風被害を機に放置されていることがわかりました。しかし、「高槻でぶどうを作って出荷していた実績」は、「パープルM」の計画を後押しするものでした。

髙橋さんと村上さんはその足で、高槻市役所ヘ向かい、偶然、居合わせた濱田剛史市長に直談判。トントン拍子で高槻市との話が進み、耕作放棄地をノウタスに貸し出してもらうことが決定します。

地域の過疎化と農業の担い手不足が課題となっていた高槻市にとっても「パープルM」のぶどう農園は農業活性化の意味で大いに魅力がありました。

住民や関係各所への説明会には、村上さんもプロジェクトリーダーとしてオンラインやオフラインで参加。ぶどう農園にかける熱意を直接説明するなどの努力が実り、「ノウタス高槻農園」がオープンすることになりました。

ノウタス高槻農園のオープンに先立ち、2024年6月に高槻市と連携協定を締結。写真左・ノウタス代表 髙橋さん、右・濱田高槻市長(写真提供:ノウタス)
ノウタス高槻農園のオープンに先立ち、2024年6月に高槻市と連携協定を締結。写真左・ノウタス代表 髙橋さん、右・濱田高槻市長(写真提供:ノウタス)

住民や観光客、企業を巻き込む参加型農園

ノウタス高槻農園の社長には、長野のぶどう農家でノウタス専務でもある岡木宏之さんが就任。遠隔でぶどうの栽培の様子を確認し、高槻農園に常駐するスタッフに指示を出して作業を進めます。

事業の大きな柱は「観光農園」「研究開発」の2つ。観光農園としては、地域に開かれた農園を目指しています。ぶどうの産地化だけでなく、観光客や住民がかかわる参加型の農園となることで、「まちのコミュニティ拠点」にしていくつもりです。

2024年9月からは「シェアツリー」のサービスも開始。1人もしくは複数人で1本のぶどうの木をシェアし、その成長過程を見守りながら収穫を楽しむというものです。収穫だけでなく「木を育てる」ことに参加することで、農業にかかわる体験を提供していきます。

髙橋「我々はノウタス高槻農園をひとつのテーマパークにしていこうと思っています。農業にまつわるいろいろな体験ができることで、エンターテインメントとしての農業を楽しんでもらいたいですね」

関西大学の学生もノウタス高槻農園の農作業に参加(写真提供:ノウタス)
関西大学の学生もノウタス高槻農園の農作業に参加(写真提供:ノウタス)

研究開発では、大学と連携し、遺伝子解析の技術を活用した品種開発研究を行う予定。栽培される数が減ってしまった品種を引き取り、希少品種の保存区画を作る計画もあります。

さらに再生エネルギーの分野での研究もあります。桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授とは次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池)の鳥獣被害対策用電源への活用の検証を行います。

農業分野における再生可能エネルギーの活用を研究する場としても(写真提供:ノウタス)
農業分野における再生可能エネルギーの活用を研究する場としても(写真提供:ノウタス)

一方、マネタイズとしては、ぶどうや加工品の販売、観光農園事業のほか、企業との提携による収入も見込んでいます。最先端の育種研究施設を建設することで、企業からの新品種開発依頼や実験にも活用していく考えです。

企業トップ層からの強い関心

企業のニーズはそれだけにとどまらないと、髙橋さんは語ります。

髙橋「コンサルタントとして企業の異業種参入を手伝う中で、農業参入支援も多くあります。その実践の場として企業に活用してもらうケースもあると思っています。

新しい技術の実験の場とするだけでなく、農園近くでテレワークをしながら、農作業の現場に携わる経験を社員に提供したいと考える企業もいるはずです。そのためのコワーキングスペースも今後、用意していきたいと思っています」

企業からも多くの関心や協働のオファーを受けているノウタスですが、その背景には、企業トップの高い社会貢献意識があります。

髙橋「ノウタスを立ち上げたときに、企業の経営層の方々から『話を聞いてみたい』と言われて、プレゼンする機会が幾度もありました。

現場の方と話していても、企業の興味・関心の高さは感じていたのですが、それ以上にハイレベルなトップ層がこれほど農業に関心を持っているのかと驚かされました。

ビジネスとしてはもちろんですが、社会貢献として、僕らのようなビジネスを応援したいという気持ちがトップ層になるほど強いのを目の当たりにしましたね」

都市生活の延長にある農園に

高槻市は、農業テーマパークとして展開するのに、地理的に恵まれている場所ともいえます。高槻市は京都と大阪のちょうど真ん中にあり、農園はどちらからも車で1時間ほどです。

髙橋「都市の生活の延長線上の場所に農園があるのは大きなメリットです。休みの日に気軽に足を伸ばせる。そんな農園にしていきたいですね」

さまざまな計画が盛りだくさんですが、取り組みはスタートしたばかり。年内は耕作放棄地だった土地を整理し、2025年からは新種研究開発の施設の建設に着手する予定です。

髙橋「生きているぶどうの木もあるので、それを収穫して地域の方に食べていただきました。地域の方にも僕らがやろうとしていることを知っていただき、いろいろな機会に参加してもらいたいと考えています」

ノウタス高槻農園として初めてのぶどうを収穫。地域住民を招いて、収穫を楽しんだ(写真提供:ノウタス)
ノウタス高槻農園として初めてのぶどうを収穫。地域住民を招いて、収穫を楽しんだ(写真提供:ノウタス)

「人生に農を足す」=ノウタスとして走り出して2年。「パープルM」プロジェクトがノウタス高槻農園として形になったことは、大きな飛躍のチャンスといえます。

最終回では、ノウタスが農業×エンターテインメントにかける思いやそのビジネスモデルを深掘りしていきます。

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。

構成・取材・文:久遠秋生
撮影:安部まゆみ
バナー写真提供:ノウタス
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)

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