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身近なデジタルとエンタメの魅力で
新しい農業を体感

身近なデジタルとエンタメの魅力で新しい農業を体感

2022年に設立したノウタスでは、農業とエンタメをかけ合わせた造語「agritainment(アグリテインメント)」で関係人口を増やす、としています。農業がもっと身近で、やってみたいと思えるものになるためには、何が必要なのでしょうか。ノウタスのビジネスモデルから探っていきます。(第3回/全3回)

目次

誰もが気軽に農業にかかわれる仕組みづくりを

現役アイドルの村上信五さんがプロジェクトリーダーを務める「パープルM」で注目されているノウタスですが、もちろん事業はそれだけではありません。

「Agriculture」と「Entertainment」をかけ合わせた造語「Agritainment(アグリテインメント)」をキーワードに、人や企業と農業をつなげるサービスをさまざまな形で展開しています。

髙橋さんは農業が抱える構造的な課題を解決していくには、多様な人々、企業、さらには官公庁や研究機関などを巻き込む仕組みづくりが不可欠だと語ります。

髙橋「現在、国内の専業農家は約100万人。農業人口の減少を解決するために、さらに100万人専業農家を増やすのは非現実的でしょう。

その一方で、潜在的に農業に興味・関心を持つ人や企業はかなりの数いると感じています。何か機会があれば、農業にかかわりたいと思っている人のほうが多いのではないでしょうか。

100%の専業農家を増やすのは難しくても、9割本業+1割農業という「10%農家」を100万人増やすことは決して実現不可能ではないと考えています」

何らかの形で少しだけ農業にかかわる人を増やすことは現実的にありえる話だと語る髙橋さん。
何らかの形で少しだけ農業にかかわる人を増やすことは現実的にありえる話だと語る髙橋さん。

もちろん、10%農家では農業をビジネスとして成立させるのは難しいかもしれません。それを解決するのがテクノロジーの力です。

髙橋「これまでの農業は家族型経営でひとつの農家が種をまくところから販売するまでのすべてを担う「垂直統合型」でした。しかし、これからは農業にも水平分業が求められる時代です」

テクノロジーを活用して、農作業全体を可視化&データ化することで、誰でも気軽に農作業に参加できるようになります。

「今週末は近くの農園で収穫作業があるから、手伝おうかな」と思える仕組みを作る。そこからもしかしたら「農業って面白いからもっと本格的にやりたい」という人もでてくるかもしれません。

また、ある作業のエキスパートがその分野に特化したエキスパートとして働くというスタイルもあるかもしれません。

例えば、ぶどうの粒を間引く作業のエキスパートが、日本中のぶどう農園を回りながら、その作業だけを特化してやる、というイメージです。しかも、普段は別の仕事をしていて、その作業がある時期だけ農作業に従事するという働き方ができるかもしれません。

髙橋「これまでは、農業に興味関心はあるけれど、どうかかわればいいかわからない人が大半でした。農業とつながる「はじめの一歩」となる機会をできるだけ増やすことが、関係人口を広げていくことになります。

そういう仕組みをどんどん作っていくことで、新しい農業に挑戦したいという意欲あふれる若い農家も育っていくはずです」

スタートは「オンライン果物狩り」

関係人口を増やすうえで大事なのは、「エンターテインメント」だと髙橋さんは語ります。もともとノウタスはコロナ禍中の「オンライン果物狩り」からスタート。果物狩りが自宅で楽しめるというエンターテインメント性が世の中から大きな支持を集めました。

コロナ禍で注目を浴びた「オンライン果物狩り」(写真提供:ノウタス)
コロナ禍で注目を浴びた「オンライン果物狩り」(写真提供:ノウタス)

オンライン果物狩りと言っても、使うのはスマートフォンとZoomなど、既存のありふれたデジタルツールだけ。しかし、そういったごく身近なデジタルツールだからこそ、農家も簡単に取り入れることができたのです。

髙橋「農業のテクノロジーというとドローン技術やロボット技術など最先端のものがたくさんあります。もちろん、それらがこれからの農業に必要なのは確かですが、農家にとってまだ少し遠い存在という側面もあります。

そういう農家への選択肢として、今ある優れたデジタルツールをうまく農業に活用すればいいのではないか、と気づかされました」

このオンライン果物狩りから発展したのが、農業SaaS「クダモノガリプラス」です。予約、チェックイン、キャッシュレス精算などの一連をデジタル化したパッケージにすることで、農家は過大な投資をせずに観光農園を始めやすくなりました。

農家は事務作業や雑用に忙殺されることなく、観光客とのコミュニケーションをとることができ、それがリピーターへとつながっていきます。

観光客にとっても、果物の種類や収穫の目安などの基本情報は、QRコードから動画をチェックすればいいので、より簡単に果物狩りを楽しめます。デジタルによる多言語で、外国人観光客にも対応できます。

「クダモノガリプラス」ではスマートフォンやQRコードなど身近なツールを駆使して、簡単に観光農園の仕組みを導入できる
「クダモノガリプラス」ではスマートフォンやQRコードなど身近なツールを駆使して、簡単に観光農園の仕組みを導入できる

クダモノガリプラスは、愛媛県デジタル実装加速化プロジェクトに2023年から2年連続で採択されるなど、自治体からの引き合いもあります。

髙橋「最低限のデジタル化で一気通貫したパッケージなので、ITリテラシーが乏しい農家でもシンプルに使えます。何よりお金をかけずに観光農園を始める仕組みであることが、ニーズの高さにつながっています」

ノウタスではこのほかにも農家向けお天気アプリ開発、リモートで働ける地方創生・農林水産業に特化した人材マッチングなどを展開。人材マッチングでは、専門分野を生かした兼業案件に特化し、コンサル業務などのマッチングも多くあります。

ラジオというエンタメで農業を発信

さらにノウタスの理念を具現化していくものとして、ラジオ番組制作というまさにエンターテインメントそのものな事業もあります。

2024年4月から文化放送で放送されている「おとなりの農家さん」の番組制作に協力。リスナーに身近な“おとなりの農家さん”や、異業種から農業へ参入した人、意外な能力で農業を支援する人など、幅広く農業にまつわるゲストを迎え、情報発信をしています。

目指すのは「農家による農家のための番組」ではなく、意外な分野から農業にかかわる人たちを取り上げて発信していくことです。

髙橋「このラジオ番組を聴いて、『そういう農業へのかかわり方もあるのか!』とか『面白そうだから、自分も農業をやってみようかな』と思ってもらいたい。ラジオを楽しんでもらうことで、農業を楽しもうという気持ちになってもらえたらうれしいです。

大切なのは『体験して、楽しい』と思えること。それこそが、まさにエンターテインメントそのものです」

ノウタスではラジオ番組「おとなりの農家さん」の制作にも協力(写真提供:ノウタス)
ノウタスではラジオ番組「おとなりの農家さん」の制作にも協力(写真提供:ノウタス)

関係人口を増やす「Fun-Fun」を

ほかにも農林水産省の「おいしい日本、届け隊」官民共創プロジェクトに参画するなど、農業行政との協力関係も構築。ビジネスの形も規模も大きく広がっています。

ノウタスのビジネスモデル

ノウタスのビジネスモデル

髙橋「予想以上のスピードでビジネスが拡大していることに、正直、驚いているところもあります。その理由のひとつに、村上信五の存在も大きいと思っています。だからこそ、まっとうに、しっかりとビジネスを成功させていかなくてはいけないと常々感じています。」

世間の注目を集めるスタートアップとはいえ、まだまだ駆け出しの現在、最大の課題は資金。メンバーそれぞれが自社事業以外にもコンサルティングやシステム開発などの仕事を請け負って売り上げをカバーしているのが実情です。

猛スピードで拡大するノウタスのビジネスの歩みを止めないためにも、資金調達をどうするかは今後の課題です。

やりたいことが次々と現れ、その実現に奔走する髙橋さんですが、中長期的な目標についてはどのように考えているのでしょうか。

髙橋「もちろん、個々の事業の目標はありますが、会社全体としては、この2年が予想外の連続だったこともあり、先のことをあまりきっちり決めてもどうなるかわからないという気持ちです。

ノウタスの経営理念は『Win-WinよりもFun-Funに』です。『Win-Win』を確約することは難しくても、『Fun-Fun』になれることは約束できます。

『Fun−Fun』であり続ける限り、道は拓ける。それが伝われば、未来には『ノウタスが手がける農業って楽しそう』『自分も参加して体験してみたい』という広がりが待っていると確信しています」

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。

構成・取材・文:久遠秋生
撮影:安部まゆみ
バナー写真提供:ノウタス
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)

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