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商談化率も受注率も倍に。
ABMの全体像と基本プロセス(vol.1)

商談化率も受注率も倍に。ABMの全体像と基本プロセス(vol.1)

BtoBマーケティングの新たなアプローチ、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)が注目を集めています。特定企業との関係構築に焦点を当てるABMは、従来の手法とは一線を画す戦略です。そんなABMの“超基本”を3回に分けてお伝えしていきます。
本記事では、ABMの基本概念と実践プロセスを解説いたします。(1回目/全3回)

目次

(イラスト:bsd studio / gettyimages)
(イラスト:bsd studio / gettyimages)

※本記事はBtoBマーケティングや法人営業・新規事業のコンサルティングサービスを提供する株式会社才流(サイル)の記事「ABMの基礎知識を学ぶ|ABM入門と実践ガイド第1回」より抜粋・一部再編集しました。

不特定多数のリード獲得ではなく、特定企業との接点をつくり、広げるABM

才流では、ABM(AccountBasedMarketing:アカウント・ベースド・マーケティング)を次のように定義しています。

  • ターゲットアカウント(企業)を個社の単位まで定め、アカウントからのLTV最大化を目指すときに最適な戦略既存
  • 顧客・新規顧客を問わず、営業とマーケティングを中心とした各部門連携のもとで、ターゲットアカウントごとにカスタマイズされた、マーケティングおよび営業活動を行う

ターゲットアカウントとは、自社の商品・サービスが課題解決や価値提供に貢献し、同時に自社の事業成長を促進する企業のこと。ABMにおいて、もっとも重要な要素です。

実際に、ABMを取り入れたことで売上が伸びた事例を紹介しましょう。

株式会社ユーザベースの営業DXソリューション「FORCAS」(現・「スピーダ 顧客企業分析」「スピーダ 顧客企業データハブ」)は、2017年にリリースされました。

さまざまな企業で導入が進みましたが、ローンチから1年後には受注が横ばいの状態になってしまいました。マーケティングもインサイドセールスもKPIを達成していたのですが、受注につながらないのです。

フィールドセールスは1日に何件も商談しているのに、受注できない。そこで、各部署の責任者が集まり「ターゲットアカウントを絞ろう」という意思決定をしました。

それまでの商談化率と受注率などを分析してわかった2つのセグメントから、600社のターゲットアカウントを定めた同社は、「この600社以外には営業しない」と決めます。

そして、マーケティングもインサイドセールスも、ターゲットアカウントのリード獲得や商談創出へ向けた活動に注力しました。

その結果、商談化率も受注率も2倍近く向上。さらに、受注までのリードタイムも、3か月から2週間へと大幅に短くなりました。

FORCAS(現・「スピーダ 顧客企業分析」「スピーダ 顧客企業データハブ」)のABMシフトの流れ
FORCAS(現・「スピーダ 顧客企業分析」「スピーダ 顧客企業データハブ」)のABMシフトの流れ

このように、A社、B社と個社の単位までターゲットアカウント(企業)を絞り、そのアカウントに対して顧客戦略を立て、営業、マーケティングが一丸となってアプローチしていく。

この一連の取り組みが、ABMです。

ITSMA社のABMフレームワーク

ABMの先駆者といわれ、現在もABMのリーダー的存在であるアメリカの企業・Momentum ITSMA社は、ABMには3つのタイプがあると提唱しています。

出典:Momentum ITSMA『Three types of account-based marketing』を参考に、才流作成
出典:Momentum ITSMA『Three types of account-based marketing』を参考に、才流作成

3つのタイプを、簡単に紹介します。

Strategic ABM

個別のターゲットアカウントに対して、専門のアカウントチームが1対1で対応する(One to one accounts)。アカウントのビジネス課題を深く理解し、アカウントプランに沿って、アカウント別にカスタマイズされた営業、マーケティング活動が求められる。

ABM Lite

似たような課題やニーズを持つターゲットアカウント群に対し、一定の方向性でカスタマイズされたマーケティングを行う(One to few accounts)。アカウント数の目安は、5〜10社。対象が複数のアカウントになるため、テクノロジーを活用した面のアプローチが求められる。

Programmatic ABM

テクノロジーを活用し、数百のターゲットアカウントリストに対して、マーケティングを行う(One to many accounts)。

ABMの成功はターゲティングにあり

Momentum ITSMA社のフレームワークでも見られるように、ABMでは、ターゲットアカウントの設定がとても重要です。しかし、「ターゲティングは普段から行っている」という方が多いのではないでしょうか。

ABMと一般的なターゲティング手法の違いは、セグメントの粒度と精度にあります。

一般的なターゲティング手法では、業界別・企業規模別など大まかにセグメントします。しかしABMでは、自社の商品・サービスが課題解決や価値提供につながり、自社の事業成長にも寄与する企業をターゲティングします。

セグメントは、売上規模や従業員数などの定量データに加え、企業の課題や目標、ヒアリング情報などの定性データをもとに行います。そのため、ABMでは従来の手法に比べてターゲットアカウントの数が絞り込まれます。

つまりABMを実践するうえで、「従業員数500人以上の企業」といった大まかな基準でのターゲティングは、適切ではありません。この粒度では、企業の成長可能性や実際のニーズを無視することになり、ターゲット外の企業も含まれてしまいます。

ABMでは提案先が限定的となるため、より戦略的なアプローチが必要です。そこで、個社ごとにカスタマイズしたマーケティングや営業の活動計画である「アカウントプラン」の作成が推奨されています。

アカウントプランは、各ターゲットアカウントに対して、どのようなアプローチを行うかを具体的に示したものです。この取り組みにより、限られたリソースを最大限に活用し、効果的な顧客との関係構築を目指すことができるのです。

日本の商習慣に適したABMモデル

Momentum ITSMA社のABMフレームワークは、とても合理的です。しかし、自社のビジネスに当てはめようと考えたとき、「ちょっと違うな」「うまくはまらないな」と違和感を覚える方もいるのではないでしょうか。

それは、ABMの発祥地であるアメリカと日本では、商習慣や組織文化に大きな違いがあるからだと考えます。

日本国内のビジネスにおいてABMを成功させるためには、日本の商習慣や組織文化に適したABMのアプローチが必要です。

そこで才流では、日本の企業に適した3つのABMモデルを提案します。なお、LTVは目安です。モデルは、その他の要件も踏まえ、総合的に判断してください。

ABMの全体像と実践の基本プロセス

では、ABMの全体像と実践プロセスを見ていきましょう。

ABMは、ターゲット選定、プランニング、アクションのプロセスに沿って進めます。そして、ABMの活動を支える基盤として、モニタリングと体制の整備も行います。

ターゲット選定

アプローチするアカウントの基準を設定し、ターゲットアカウントリストをつくります。

プランニング

ターゲットアカウントに対して何を実施し、何をしないかを決めます。リソースの最適な配分を行います。

アクション

ターゲットアカウントにどうアプローチするか、具体的なアクションを決めます。

ABM活動のモニタリング

ABMの一連の活動を継続的に観察、測定、評価し、アカウントプランどおりに活動できているかを確認します。アカウントプランどおりに進捗していない場合は、対応策を考え実行します。

体制の整備

営業とマーケティングが連携してターゲットアカウントへアプローチできるように、各部の役割の定義を決め、必要に応じて部署を新設します。また、データ整備、コンテンツ制作の強化やその管理など、活動をスムーズに進められるような体制を整えます。

<執筆者プロフィール>
政次貴弘
コンサルタント。日系SIerでの金融機関向けERPの販売や、メガベンチャー企業にて医療法人向け採用コンサルティングの営業やPM、セミナー企画・講師などの経験を経て、2018年に株式会社セールスフォース・ドットコム(現 株式会社セールスフォース・ジャパン)に入社。エンタープライズ営業で大手企業の開拓・達成経験を積んだ後、関西SMB領域の営業部長に就任し、マネジメントを行う。才流では営業コンサルタントとして活動中。また、ABM入門と実践ガイドブックの執筆や、ABMに関する外部研修や講演も行っている。

名生和史
コンサルタント。楽天グループ株式会社、株式会社SmartHRを経て才流に入社。EC・SaaS業界での営業・マーケティング経験をもとにした、リード獲得~ナーチャリング体制の構築を得意とする。また、エンタープライズ企業開拓のためのBDR体制構築も可能。才流ではマーケティングコンサルタントとして活動。

さまざまな業種・業態の企業を支援している才流が培ってきた手法やメソッド、豊富な実例がまとまったe-BOOK『ABM入門と実践ガイドブック』はこちらから無料ダウンロードできます。

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。

協力:水谷真智子(才流)
図版:才流提供
バナーイラスト:Nadezhda Kozhedub / gettyimages
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:奈良岡崇子

ABMの設計について(全3回)

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