カスタマサポートとカスタマサクセスは何が違うのか
お客さまとのコミュニケーションにおける新たな形として、昨今広まり始めているのが「カスタマサクセス」です。
従来のカスタマサポートはお客さまからの問い合わせに対して回答するなど、企業側は受け身の姿勢でコミュニケーションを行います。
一方、カスタマサクセスは顧客の成功のために企業側から働きかけ、顧客ロイヤリティやLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上を目指す取り組みを指します。
顧客満足度を高め、そして売上の拡大を目指していく上ではどちらも重要な活動ですが、一方で昨今の人材不足により、それぞれに十分なリソースを割り当てることは容易ではなくなっています。このような背景から、カスタマサポートやカスタマサクセスといった顧客コミュニケーションにおいて求められているのが、さらなる業務の効率化です。
業務可視化のための分析指標例
この業務の効率化や改善を目指す際、まず取り組みたいのが現状の業務の可視化です。これにより、どのようにコミュニケーションが行われているのかを把握し、その結果を分析することにより、省くことができる無駄や改善の余地がある業務が見えてくるでしょう。
この可視化を行う際の指標としては、問い合わせ件数とそれに対する応答率、1件あたりの平均処理時間(AHT:Average Handling Time)、応答するまでにかかった時間の平均である平均応答速度(ASA:Average Speed of Answer)などがあります。
たとえば問い合わせ件数は増加傾向にあるが、応答率は低下し続けているといった場合、問い合わせ数の増加にリソースの増強が追い付いていないと判断することができます。ただ、新たに顧客応対のための従業員を雇用することが難しいということであれば、1人の従業員が対応できる問い合わせ数を増やすために、平均処理時間の短縮のための施策を検討するといったことが考えられます。
コール品質向上のための調査分析
顧客とのトーク内容の分析も、カスタマサポートやコンタクトセンターにおける業務効率化には欠かせません。
分かりやすい例としては、従業員間での平均処理時間に差がある場合が挙げられます。短時間で対応している従業員とそうでない従業員の応対は何が違うのか、トーク内容を具体的に精査するというわけです。
このようなトークの分析を行う上で、積極的に活用したいのがAIを用いた音声認識システムです。
通話内容の分析
音声認識自体は決して新しい技術ではありませんが、従来は認識精度が低いという根本的な課題がありました。しかし昨今ではAIを組み合わせることにより、飛躍的に認識精度を高めた音声認識ソリューションが登場しています。これを利用すれば、録音した内容を簡単にテキスト化することが可能になり、その結果を元にトーク内容を分析することができます。
音声認識ソリューションを使ってテキスト化されていれば、録音した内容を聞くよりもトークの内容や使われているキーワード、お客さまの反応などを容易に把握することができるため、より精緻な分析が可能になります。
こうして分析した結果を元にトークスクリプトを改善すれば、個人のオペレーターが持つスキルをコンタクトセンター全体で共有することにつながり、業務効率の向上に大きく寄与することが期待できます。
問い合わせ内容の分析とFAQの活用
顧客からの問い合わせ内容を分析することも、業務効率の向上を考える上で極めて有効です。これによって特定の質問が多いことが把握できれば、オペレーター向けの回答マニュアルに記載することで応対スピードの向上を図れるでしょう。
またWebサイト上にFAQコンテンツを用意し、そこでよくある質問に対する回答を掲載することも有効です。これにより、わざわざ電話やメールで問い合わせることなくお客さまが問題を自己解決することができれば、コール数の削減につながり、各種指標の改善が期待できます。
ただWebサイトにFAQを掲載しても、お客さまが目的の回答に辿り着けず、結局コンタクトセンターに電話で問い合わせることが多いといった課題を抱えるコンタクトセンターも少なくありません。そのため、お客さまが目的の回答を自分で見つけることをサポートするツールの導入なども検討すべきです。
ヘルススコアの定義と改善
カスタマサクセスの観点で分析を行う場合に、重要な指標となるのがヘルススコアです。カスタマサクセスに取り組む理由の1つに、お客さまがサービスを継続して利用するように導き、離脱(解約)を防ぐことが挙げられます。ヘルススコアはお客さまのサービスの利用状況を把握するための指標であり、その結果からサービスを解約される可能性が高いと考えられる場合には、企業側からサービス継続を働きかけます。
ヘルススコアをどう定義するかは、サービスの内容やビジネス形態によって大きく異なります。たとえば昨今広まっているサブスクリプションサービスであれば、顧客のサービス利用状況をヘルススコアとして定義し、定期的にモニタリングします。
その結果、サービスの利用頻度が下がっていて、サービスが解約される可能性があると考えられる場合には、企業側から顧客に対してサービスをもっと利用してもらえるように(=サービス利用を継続するように)働きかけるというわけです。
このカスタマサクセスのための顧客とのコミュニケーションにおいても、業務効率化に向けた分析と改善は欠かせません。人的リソースを有効に活用するためにも、本当にサービスを解約してしまうお客さまを見極めるヘルススコアは何かを検討したり、お客さまに解約を思いとどまらせるにはどういったトークが有効であるかなど、多角的に分析する必要があるでしょう。
業務可視化に役に立つNTTコミュニケーションズのソリューション
ここまで解説したように、カスタマサポートやカスタマサクセスの業務内容を可視化することは、効率的なコンタクトセンター運営を実現する上で欠かせません。そのためのツールの1つとして活用できるのが、「ナビダイヤル」のオプションである「トラフィックレポート作成ツール」です。
トラフィックレポート作成ツールを利用すれば、総コール数、つながったコール数などの基本的なデータに加え、発信者単位でみたコール数や、着信に至らなかった理由など、コンタクトセンターのパフォーマンスを把握できる詳細分析データを得ることができます。
またお客さまの自己解決の支援と問い合わせ数の削減を目的として、FAQを提供する際にぜひ組み合わせて利用したいのがNTT Comの「COTOHA Chat & FAQ®」です。
COTOHA Chat & FAQ®には、キーワードではなく質問の意味を解釈して答えを検索するセマンティック検索を行うAIエンジンが組み込まれており、お客さまに適切なFAQを提示することが可能です。
またお客さまが入力した質問内容の分析や、FAQページの閲覧回数を自動集計する機能があります。これを利用すれば、お客さまが抱えている課題の把握が可能になり、FAQページを拡充する際の参考に使えるのはもちろん、マーケティングや商品開発時におけるお客さま分析にも応用できます。
トークの分析には、NTT Comの「COTOHA Voice Insight®」を活用できるでしょう。40年以上蓄積されたNTT研究所の技術を採用し、高い音声認識率を実現しているほか、コンタクトセンター向けに厳選した単語でチューニングが行われており、お客さまとオペレーターの会話を高い認識率でテキスト化することができます。
これからさらに少子高齢化が進み、労働人口が減少し続けることを考えると、業務の効率化に向けた取り組みは今後さらに重要になるのは間違いありません。そのための第一歩として、まずは現状の可視化から取り組んでみましょう。