RPAとAIの違いとは?
あたかもロボットがパソコンを操作しているかのように、人間が行っている業務を自動化するためのソフトウェアがRPAです。具体的には、あらかじめ人間が作成した「シナリオ」などと呼ばれる指示書に従い、WordやExcelといったオフィスアプリケーションやWebブラウザなどを制御し、シナリオに記述された作業を自動で行います。
このRPAを使うことにより、たとえばWebブラウザで業務アプリケーションにアクセスして必要な項目の値をコピーし、それをExcelシートに貼り付けて報告書を作成するなどといった業務を自動化することが可能です。その間、人間は別の作業を行えるようになり、これによって業務効率化が図れることがRPAの最大の魅力となっています。さらにRPAであれば24時間365日稼働することが可能なため、日中に収集されたデータのシステム登録を深夜に行うといったことが可能であることもメリットでしょう。
このRPAと混同されることが多いテクノロジーがAIで、人工知能などと呼ばれます。現在のAIは事前に人間が学習させた結果に基づき、さまざまな判断を自律的に行うことができます。
すでにAIはさまざまな領域で使われ始めていますが、業務の効率化の観点で大きな注目を集めているのが「AI-OCR」です。これはAIを利用することにより、手書き文字を高精度に認識するソリューションです。さらにコンタクトセンターでの顧客との通話内容をテキスト化するなど、AIによる音声認識も広まっています。いずれも事前に学習した結果に従い、手書きされた文字が何かを判断したり、あるいは発話した内容が何かを判断してテキストデータに変換しているというわけです。
ただ、これらはAIの用途のごく一部に過ぎません。AIに対して適切な学習を行えば、商品の需要予測やデータの分析など、幅広い領域で利用することができます。
このRPAとAIは似た技術であるかのように感じるかもしれませんが、実際は大きく異なります。RPAは人間の代わりに作業を行うもの、AIは人間に代わって判断できるものと考えればよいでしょう。言い換えれば、RPAは指示(シナリオ)に従って動く「手」であり、AIは人工知能という名前のとおり、さまざまな判断を行うことができる「頭」だと言えます。
RPAの限界とは?よくある問題点や課題
昨今、RPAが大きな注目を集めています。その背景にあるのは人手不足でしょう。特に日本では少子高齢化が進んでおり、働き手となる生産年齢人口が減少しています。このような背景から、人材募集してもなかなか応募が来ないと悩む企業は少なくありません。そこでRPAを用いて業務の一部を自動化することにより、人手不足に対処しようというわけです。
ただ、RPAでは自動化できない、あるいは自動化することが極めて難しい業務も数多くあります。その代表的な例が作業手順が明確化されていない業務です。前述したように、RPAは事前に人間が作成したシナリオに沿って作業を行います。作業手順が明確化されていなければ、シナリオを作成することができないため、作業の自動化も不可能になります。
高度な判断を必要とする業務もRPAが苦手とする分野です。Excelの特定のセルに入力されている数値が100以上か100以下かなど、単純な判断であればRPAでも可能ですが、たとえば見積り依頼があったときに、相手との関係性を考慮して値引き額を算出するなどといった業務にRPAを適用することは極めて困難です。
また、状況によってイレギュラーな処理が発生するといった業務も少なくないでしょう。このような業務をRPAで自動化すると、場合によってはRPAが処理した内容を人の目でチェックすることになり、RPAによる自動化の効果が薄れるといったことも起こりえます。
RPAとAIの連携方法とコミュニケーションの変化
このようにRPAも決して万能ではありません。ただAIを組み合わせることで、RPAも適用範囲を拡大できるケースも数多くあります。
その一例として挙げられるのが、前述したAI-OCRやAIによる音声認識との組み合わせでしょう。
手書きで書かれた申込書の内容を人間が読み取ってシステムに登録している場合、RPAとAI-OCRを組み合わせれば手書き文字をテキスト化し、その内容をRPAでシステムに登録するといった作業を自動化することが可能です。
またコンタクトセンターであれば、AIによる音声認識で通話内容をテキスト化し、そこからさらにAIを使って必要な項目を抽出した上で、RPAを使って後続処理を自動化するといったことが考えられます。
さらにAIによる音声認識とRPAを組み合わせて、定型の応対業務を自動化するといったことも考えられるでしょう。具体的には、商品の注文受け付け業務において、顧客の注文内容を音声認識で認識し、その結果を元にした在庫の確保や注文内容の記録をRPAで自動化するといった形です。
ここで示したのは一例で、AIとRPAを組み合わせればコンタクトセンターのさまざまな業務を効率化することが可能です。それによって生じた余剰リソースを人間が行うべき業務に集中すれば、単なる人手不足への対応だけでなく、顧客満足度の向上やコンタクトセンターの高度化にも有効ではないでしょうか。
なお、RPAを使って業務を効率化するためには、ITに関する専門的な知識やRPAで作業を自動化するためのノウハウが欠かせません。このため自社だけですべて対応しようと考えるのではなく、RPAを活用した業務効率化に実績のあるパートナーを選定し、連携して進めるべきでしょう。