2025年「空飛ぶクルマ」が大阪の空を飛ぶ
「空飛ぶクルマ」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。空飛ぶクルマは、2025年に開催が予定されている「EXPO 2025 大阪・関西万博」でも、多くのメディアから注目を集めるテクノロジーとなっています。
開催期間中に空飛ぶクルマの運航事業を行う企業は、すでに決まっています(大阪・関西万博のリリース)。ANAホールディングスと米Joby Aviationの連合(以下、ANA)、日本航空(以下、JAL)、丸紅、SkyDriveという4社が選定されています。この4社の「空飛ぶクルマ」が、万博会場と会場外のポート、および関西空港の間で運航する予定となっています。
各社ともに使用する機体は異なります。ANAは「VTOL Joby S-4」(定員:パイロット1人/乗客4人)、JALは「VoloCity」(定員:パイロット1人/乗客1人)、丸紅は「VX4」(定員:パイロット1人/乗客4人)、SkyDriveは「SD-05」(定員:パイロット1人/乗客2人)という機種を使用します。
各社ごとに細かい差はあるものの、いずれの機種も定員が少人数で、かつプロペラ(ブレード)を利用しているという点を考えると、車というよりヘリコプターに近い存在といった方が良いかもしれません。
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空飛ぶクルマがヘリコプターと異なる3つのポイント
それでは、空飛ぶクルマはヘリコプターと何が違うのでしょうか? 空飛ぶクルマとは、一体どのようなものなのでしょうか?
実は空飛ぶクルマには明確な定義はありません。国土交通省の航空局が2021年に公開した「空飛ぶクルマについて」という資料によると、空飛ぶクルマについて「明確な定義はない」「『クルマ』と称するものの、必ずしも道路を走行する機能を有するわけではない」としており、あくまでも個人が日常の移動のために利用するイメージを表すものと述べています。
同資料では、空飛ぶクルマがヘリコプターとは決定的に違う特徴も挙げています。それは「電動」、「自動操縦」、「垂直離着陸」という3点です。
「電動」については、ヘリコプターがプロペラを回すためにジェット燃料を使用しますが、空飛ぶクルマでは電池でプロペラを回転させることで飛行します。電動のため騒音も比較的小さく、整備費用も安価という特徴があります。
「自動操縦」は、現時点ではパイロットが操縦する必要があるものの、将来的にはパイロットが搭乗しない自動運転も視野に入れて開発が進められています。パイロットが搭乗しなければ、その分の人件費も抑えられるため、利用料も安くなることが期待されます。
「垂直離着陸」とは、滑走路なしで離着陸できることを意味します。ヘリコプターは着陸地点に対し斜めに離着陸しますが、空飛ぶクルマは地面に対し垂直で離着陸が可能です。そのため、ヘリポートや空港といった場所以外でも利用が可能です。
こうしたメリットを備えていることから、国土交通省では都市部での送迎サービス、離島や山間部での移動手段、観光客の輸送、災害時の救急搬送といった用途への活用が期待できるとしています。
離着陸時の騒音は?安全性は?
このように、空飛ぶクルマにはヘリコプターには無いさまざまなメリットを備えていますが、一方で課題も存在します。
1つが、「騒音」です。さきほど「電動のため、騒音は比較的小さい」と述べましたが、とはいえ都市部で離着陸をする際は、街を低空で飛行することになるため、住民の騒音問題につながる恐れがあります。
空飛ぶクルマのような垂直で離着陸する航空機の飛行場のことを、「バーティポート(Vertiport)」と呼びます。もしこのバーティポートが街中に建設された場合、その周辺にはかなりの騒音が発生することが予想されます。
加えて、安全面での不安もあります。将来的にパイロット無しでの運航が計画されていますが、たとえば降雨時や強風の際も、本当に無人で運行できるのか、その安全性を証明するためには相当な時間を要する恐れがあります。
経済産業省が2022年に発表した「空の移動革命に向けたロードマップ」という資料では、大阪・関西万博が行われる2025年度までは試験飛行・実証実験を行う一方で、2020年代後半から商用運航を拡大し、2030年代以降にサービスエリアや路線・便数を拡大していく見通しとなっています。
空飛ぶクルマが街中を無人で飛行するのは、まだまだ遠い未来の話のようですが、とはいえ2025年の大阪・関西万博の際に、空飛ぶクルマが人を乗せて大阪の空を飛ぶことは決まっています。万博の空を飛行する姿が世界の人々の興味を惹くことで、空飛ぶクルマの進化のスピードが速くなるかもしれません。