京セラ株式会社
業務革新プロジェクトで間接業務の効率化を推進
AI翻訳サービスの全社導入でグローバル連携を強化
京セラ株式会社
経営管理本部
経営情報システム部長
平野 克幸氏
「多言語対応の翻訳サービスについて、ドイツの拠点のトップから『このサービスはいいね』というお墨付きをもらいました」
京セラ株式会社
経営管理本部
経営情報システム部
システムデザイン1課責任者
岡本 賢一氏
「まずはトライアルで使ってもらうこと、そうすれば必ず効果を実感して導入の流れになるサービスだと思っています」
京セラ株式会社
経営情報システム部
システムデザイン1課 1係責任者
上田 童夢氏
「トライアルの際にできるだけいろんな部門のキーパーソンを巻き込むことが、スムーズな全社展開につながるポイントです」
課題
DXの推進に向けた業務革新プロジェクトが始動
中国拠点で成果を出したAI翻訳サービスの検討を開始
独自の経営管理手法である「アメーバ経営」で多角的な事業をグローバルに展開する京セラ株式会社(以下、京セラ)。同社の事業部はそれぞれ独立したIT部門を擁しており、事業に応じて柔軟にITを導入し活用している。これら事業部の経営数値を総合的に管理する基幹システムを構築し、運用管理を手掛けているのが経営情報システム部だ。2019年1月に基幹システムの再構築を終えた同部門に課せられたミッションは、新プロジェクトの推進だった。
2019年1月に基幹システムの再構築を終えた同部門が、次に取り組むべきミッションは同社の重点施策である『事業拡大』を支えるIT基盤作りだった。経営情報システム部長の平野克幸氏は次のように説明する。
「生産性倍増、業務革新は幾つかある会社の重点施策の中で、経営情報システム部が寄与しないといけないものです。生産性倍増は工場の自動化、自律化に向けたロボット導入、不良分析、故障予知にAIを活用していくもので、経営情報システム部は事業部のIT部門と連携してインフラ面などを支援していきます。一方で業務革新はペーパーレス化、文書管理の効率化、デジタル化などによる間接部門の生産性を高めるための取り組みで、経営情報システム部が率先して推進すべき取り組みです。その中の1つがAI翻訳サービスの利活用でした」
経営情報システム部の岡本賢一氏は、かつての赴任先である中国・天津の拠点で、AI翻訳サービスの効果を体験していた。「日本企業が点在する天津では、中国語の通訳不足が慢性化しています。言語の壁がボトルネックになり、コミュニケーションの行き違いがしばしば起きていました。そんな矢先、AI翻訳サービスの話を聞き、試しに導入しました。すると、大枠の中国語が把握できるようになり、コミュニケーションの質が格段に向上したのです」
経営情報システム部の上田童夢氏は、中国での導入効果が広まる一方、日本でもAI翻訳サービスのニーズは確実に高まっていたと明かす。「各事業部のIT担当者にヒアリングしたところ、日本語と英語の翻訳ニーズが高く、事業部単独で導入を検討しているケースも少なくありませんでした。そこで私たちが主導して全社導入する流れになったのです」
このページのトップへ
対策
安全性、コスト、使い勝手でサービスを選定
小規模のトライアルを経て全社へ本格展開
同社ではAI翻訳サービスの全社導入に向けて複数サービスの比較検討を開始。選定の決め手となったのはセキュリティ、コストだったと説明する。「まず、クラウド上にアップロードした翻訳文や辞書データなどの情報はすべて暗号管理できること。さらに翻訳エンジンを専有できる安全性の高さはEUのGDPRにも準拠していると伺いましたので、グローバルでの展開にも適していると判断しました。さらにID無制限で利用できるコストパフォーマンスの高さが、全社展開を見据えると有益であると判断し、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)の『COTOHA® Translator』の導入を決断しました」(上田氏)
COTOHA® Translatorは日本語・英語間の翻訳であればTOEIC960点超レベルの翻訳精度を実現し、翻訳に要する時間を人間の数十分の一から数百分の一に短縮できるクラウド型のAI翻訳サービスだ。同社が選定したビジネスプランは翻訳エンジンの専有により情報漏洩リスクを最小化。業界特有の専門用語を登録できる辞書機能も備えている。さらに、日本語・中国語間についても日本語能力試験1級合格レベルの中国語ネイティブによる翻訳と同等の翻訳精度を備えており、先に挙げた中国・天津で導入され、大きな効果を発揮したのも当サービスだった。
各事業部のIT部門のキーマンに声をかけ、100IDでのトライアルを開始した同社では、そこで確かな手応えをつかむ。日本語・英語間の翻訳精度が高く、直感的に操作できる使い勝手の良さから、全社導入を望む声が多く上がっていた。「特にOfficeやPDFファイルがドラッグ&ドロップでそのまま翻訳できるファイル翻訳機能の便利さに驚いた利用者が多かったようです。さらに英語ネイティブの利用者からは翻訳結果を元言語に逆翻訳して確認できる機能も好評でした」(岡本氏)
トライアルの成果を受けて、同社では国内はもとより、東南アジアの生産拠点、営業拠点を中心にグローバルな拠点にも「COTOHA® Translator」が一斉導入された。
このページのトップへ
効果
A4換算で月間7万枚の圧倒的な利用率を受け
多言語展開でコミュニケーションの壁の打開へ
現在、同社は国内と海外をあわせて約25,000人の社員がCOTOHA® Translatorを利用できる環境になっている。「実際に利用した社員は7,000名弱、アクティブユーザーは研究開発、法務などを中心に2,000名ほどです」(上田氏)
利用ログの分析によると、現在はA4原稿換算で週に約15,000~20,000枚、月に約70,000枚のテキストが翻訳されている。岡本氏はすべてを外部委託すれば膨大なコスト削減効果だが、導入効果を試算するのは難しいと語る。「中国に赴任していたころは通訳が不足していたため、絶対に翻訳が必要な文書以外は漢字をななめ読みしてニュアンスで把握するしかなかったのです。これまで諦めていたことが解決できる画期的なツールなので効果を試算しづらいのです」
平野氏は社内に専門の翻訳部署はないとしながらも、翻訳にかかる人的稼働は大幅に軽減できていると分析する。「1日3,500枚、1人100枚の翻訳に8時間かかると仮定すれば、35人がかかりっきりになる計算になります。それは極端かもしれませんが、目に見えない付加価値やコミュニケーションが活性化し、品質も上がっていると思います」
図 「COTOHA® Translator」導入後の効果
日本語・英語、日本語・中国語の翻訳サービスに加え、同社では多言語翻訳サービスも全社に導入した。これは翻訳需要の多い23言語のペアをピックアップした、一般的な日本企業が必要とする翻訳ニーズの約97%をカバーできるオプションサービスだ。「英語、中国語はもとより、多言語の翻訳で言葉の壁を壊すことができれば、世界中の社員がストレスなく円滑にコミュニケーションできるため、効果は大きいと感じています」(上田氏)
昨年、経営情報システム部ではデザイン思考に基づき自由な発想で新しいアイデアを生み出すプロジェクト「KJ2020」を立ち上げた。これは8割の労力を本業に、2割の労力を新しいプロジェクトに挑戦させる取り組みです。「KJ2020では、部門をまたぐ自由なチーム編成で自発的なチャレンジができます。私たちは音声認識による議事録の自動作成、AIアシスタントによる業務の自動化など、新たな発想でプロジェクトを先導していく部門を目指しており、さまざまな先進技術の知見を持つNTT Comのサポートには大いに期待しています」(平野氏)
古くからアメーバ経営による小規模チームで事業の多角化を図ってきた京セラにとって、AI、IoTといったデジタライゼーションの潮流は大きな追い風となるのではないだろうか。
このページのトップへ
京セラ株式会社
事業概要
1959年の創業より、ものづくりに懸ける熱い思いと、挑戦する姿勢を持ち、独自の経営管理手法「アメーバ経営」で事業の多角化を推進。現在ではファインセラミック材料、半導体部品、電子部品、太陽光発電システム、医療用材料、通信機器の開発・製造・販売などの幅広い事業を展開している。
(1.1MB)
PDFファイルをご覧いただくためには、「Adobe Reader」がインストールされている環境が必要となります。
(掲載内容は2020年3月現在のものです)
関連リンク