大阪ガスマーケティング株式会社 リビング事業本部 CX推進部 カスタマーサポートチーム コンタクトセンターグループ チーフ 福岡浩仁氏

大阪ガスマーケティング株式会社
リビング事業本部 CX推進部
カスタマーサポートチーム
コンタクトセンターグループ チーフ

福岡浩仁氏

「期待通りの効果が出ていますが、まだ100%ではありません。導入して3年、いまだに新用途への可能性などの気づきがあります。NTT Comと連携してさらなる改善を進めていく計画です」

大阪ガスマーケティング株式会社 リビング事業本部 CX推進部 カスタマーサポートチーム コンタクトセンターグループ 村井寿行氏

大阪ガスマーケティング株式会社
リビング事業本部 CX推進部
カスタマーサポートチーム
コンタクトセンターグループ

村井寿行氏

「我々のセンターは問い合わせの領域が広いため、アナログな教育だけでオペレーターを独り立ちさせるのは困難です。これからはオペレーターの育成、システムによる支援の両軸がマストだと考えています」

 

課題

センターの諸課題を解決、さらなる応答率の向上を目指し
NTT Comと共同で新たな音声認識サービスの開発に挑む

大阪ガスマーケティングは、エネルギーや固定通信などのインフラサービスの販売および保守、ガス機並びに住設機器などの販売およびメンテナンスなど、暮らしのお困りごとへの各種サービスの提供を通じて、家庭用の要望や期待に応えるため、2020年4月に事業を開始。現在も「安心・安全」、「快適・便利」、「省エネ・エコ」を提供する「住空間と暮らしのパートナー」を目指している。さらに、従来のサービスにとどまらず、中古マンション×リノベーションサービス「マイリノ」といった独自の新サービス創出により、意欲的に事業の拡大を図っている。同社において顧客接点の重要な窓口となるのがコンタクトセンターだ。

昨今のコンタクトセンター運営を取り巻く環境は、慢性的な人材不足、離職率の高さ、人材育成の困難さ、他部署との連携不足など、さまざまな課題を抱えている。これらを解決することで目指すKPIは1つしかないと語るのは、同社でコンタクトセンター運営を担う福岡浩仁氏(以下、福岡氏)である。「唯一のKPIとは、応答率を高めることです。あらゆる課題を解決することによって、応答率を高い水準で維持することを最優先すべきだと考えています。私たちはお客さまの暮らしに関わるすべてのサービスを提供しているため、他のセンターよりオペレーターに求められるスキルは1段、2段ほど高く、応答率を上げることは容易ではありません。そこで、通話音声をリアルタイムにテキスト化して活用することで、諸課題を解決し、応答率をアップできるのではないかと考えたのが今回のプロジェクトの発端です。」

当時はテキスト化をするにはフルスクラッチでシステムを構築する必要がありましたが、社内の方針によりサービスとして導入する必要があったため、長年、コンタクトセンターをはじめとする音声基盤まわりのビジネスパートナーとして信頼関係のあるNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)に相談を持ち掛け、私たちの要望を満たす新たなサービスの開発をお願いしたのです」(福岡氏)

こうして「サービスが存在しないなら、つくればいい」というチャレンジングな取り組みがスタートした。

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対策

通話音声をリアルタイムにテキスト化するSaaSを協働開発
さまざまな試練を乗り越えて急ピッチで全席一斉導入が完了

通話音声をリアルタイムにテキスト化できる新たなサービスをつくりあげることは、想像以上に困難の連続だった。「NTT Comでサービススペックが決まっていない中で検討を進めていったため、品質、契約、キャパシティなど、いろいろな要件をすり合わせてつくり込んでいきました。先に実装のスケジュールは決まっていたため、我々は“間に合わせてほしい”、NTT Comの開発チームは“できません”の押し問答を重ね、少しずつ前に進めました。かなり無理なお願いもしましたね(笑)」(福岡氏)

大阪ガスマーケティングのコンタクトセンター全席への一斉導入が決まっていたものの、最後まで解決できなかった問題が2つある。1つめはキャパシティの問題だ。新サービスは当初は最大400席までに対応する想定だったが、最大400席では大阪ガスマーケティングのコンタクトセンターの規模に対応することはできなかった。そこで、キャパシティ拡大に向けた開発・検証を大至急行うことで、同社センターの規模でも問題なくサービスを利用することが可能になった。もう1つはセキュリティポリシーの問題だった。「我々の設備内にあるDNSサーバーのドメインと、新たにつくったサービスのドメインがセキュリティ上、疎通できないことが判明しました。急遽、我々の設備内にNTT Comの機器を置いてサービスにアクセスできる環境を構築しました」と、福岡氏とともにコンタクトセンター運営にあたる村井寿行氏(以下、村井氏)は当時の苦労を振り返る。

こうして新たに開発されたSaaSは、2021年4月に同社のセンター全席に一斉導入された。「おそらく、従来なら構築に1年半はかかる要件を、約3カ月にギュッと詰めていただいた感じです。並行してPoCで課題の抽出と改善を行いながら、どうにか予定通りに一斉導入が完了しました」(村井氏)

開発したSaaSの新サービス「COTOHA Voice Insight」は、NTT Comよりリリースされている。これはAIによる音声認識で通話音声をテキスト化するサービスで、現在はコンタクトセンター向けの「音声マイニングプラン」、NTTドコモのモバイル通話をテキスト化する「ビジネス通話プラン」を提供。大阪ガスマーケティングが導入した音声マイニングプランは、NTT研究所で40年以上研究・開発してきた独自の音声認識AIエンジンにより音声データを可視化。リアルタイムな音声認識とテキスト化に加えて、FAQ連携や感情分析など多くのオプションを備えたプランになっている。

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効果

テキスト化によるオペレーター支援でKPI以上の応答率を達成
全通話対象の業務評価により現場のモチベーションもアップ

すでに「COTOHA Voice Insight」を導入して3年以上が経過、その間にもNTT Comと二人三脚で改善を重ねてきたことで、センター運営にさまざまな効果が出始めている。「お客さまからのクレームはかなり減っています。オペレーターの応対内容がリアルタイムにテキスト化され、キーワード登録で出るアラートを管理者が瞬時に把握できるようになり、お客さまを待たせることなく的確な応対ができるようになったことが大きいですね。ちなみに、言ってはならないNGワードに加え、冒頭の名乗りやお礼など応対に必要なキーワードも登録しているため、言い忘れがあってもアラートが上がる仕組みになっています」(村井氏)

さらに、応対内容と連動して適切なFAQが立ち上がる仕組みも導入されており、オペレーターの的確な受け答えを支援している。これらにより唯一のKPIである応答率も高いレベルで維持できているようだ。「現在、応答率はKPI以上の水準を維持できており、これはエネルギー業界において暮らしに関わる間口の広いサービスの問い合わせがある窓口としては非常に高い数値だと自負しています」(福岡氏)

現在、オペレーターの通話内容すべてがテキスト化されるようなったことで、オペレーターたちのモチベーションにも大きな変化が出ている。「従来は通話内容をランダムにピックアップをして業務評価に活用していましたが、ピックアップした内容により濃淡があり、オペレーターへの評価に課題がありました。現在はすべての通話内容をもとに評価ができるため、オペレーターたちの仕事に向き合う姿勢が変わりましたね。なお、かなりシステムも現場になじんでいるようです。先日、引っ越しの際に2週間ほどシステムが使えないことがあったのですが、そのときは“業務ができません!”とすごく怒られました(笑)」(村井氏)

現在、大阪ガスマーケティングでは次のフェーズとしてVOC分析ツールの導入を進めている。「コンタクトセンターに特化したVOC分析を行い、FAQの改善といったシステムのアップデートはもちろん、ゆくゆくはお客さまのサービスに対するさまざまなニーズを集約、分析して他社に販売できる商材として売り出すといった新たな価値を創出したいと考えています。COTOHA Voice Insightのようなサービスは、導入がゴールではありません。導入前に顕在課題でもいいので、テキスト化でどのような未来が描けるのかを考えておくべきです。導入して回していくうちに潜在課題も見えてくるので、歩みを止めないことが重要になります。まずはNTT Comとしっかり議論を重ね、同じゴールを共有することが成功の秘訣です」(福岡氏)

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導入サービス

COTOHA Voice Insights

COTOHA Voice Insight(音声マイニングプラン)はコンタクトセンター向けの音声認識サービスです。コンタクトセンターの生産性向上、新人育成強化、データ利活用促進といった課題を解決することができます。

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大阪ガスマーケティング株式会社

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事業概要
住空間と暮らしのパートナーを目指し、2020年4月に事業を開始。家庭用ガス・電気の販売・保守、リフォーム・リノベーション、固定通信、デジタルプラットフォームサービスなどの事業を展開している

URL
https://www.osakagas-marketing.co.jp


(掲載内容は2024年12月現在のものです)


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