第一生命グループでは、2018-2020 年度の中期経営計画として「CONNECT 2020」を策定。これは顧客、地域・社会、ビジネスパートナー、グループ各社を「CONNECT(つながり・連帯・協働)」の視点から強化することで、成長を加速させる戦略である。同社はこの戦略により、従来の保険ビジネスの枠組みを越え、あらゆる人々のQOL向上へ貢献するグループを
目指している。
ITビジネスプロセス企画部フェローの太田俊規氏は、今回のプロジェクトを成功させるた
めには、「各戦略を支える個人、組織の生産性、競争力」を高める必要があると分析。特に従業員一人ひとりが働きがいを得て会社に貢献できる基盤づくりは、中期経営計画の重要なミッションの1つであり、そのためにはまず従業員のQOLを高める必要があると考えていた。
その一環として、同社は2019年に薄型・軽量のノートPCを全社導入。営業担当やFPなど外出の多い従業員は、導入したノートPCと会社貸与のスマホを併せて利用することで、場所にとらわれない働き方が可能になった。一方で内勤職は、ノートPCだけを持ち帰ったとしても依然として会社のデスクの上には固定電話が存在し、そこに同僚やお客さまからの電話が頻繁にかかってくる。このことが、従業員の自由な働き方を制限してしまっていた。太田氏は「ノートPCで仕事はできても、会社に固定電話がある限り、働き方改革は進まないと感じていました」と当時を振り返る。
同社の従来の固定電話による内線環境は、オンプレミスのPBXで構築されており、この部分にメスを入れない限り、従業員はオフィスに縛られてしまい、働き方改革が促進できない。同社のITビジネスプロセス企画部は、PBXのクラウド化によるスマ―トフォン型内線端末の導入を決断する。
第一生命では全国拠点に約2万3000台の固定電話を配備していた。本社や部門の代表番号は、引き続きオフィスの固定電話で受電する必要があり、従来の固定電話の方が仕事をやりやすいと考える従業員も一定数存在していた。そこで同社は、オンプレミスPBXとクラウドPBXを併用するハイブリッド構成の音声基盤構築に向けて、パートナーの選定を開始した。
「複数の候補の情報を収集して比較検討した結果、ネットワークサービスの提供やインターネット環境の構築・運用を担っていたNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)を選定しました。決め手になったのは、PBXと電話帳のクラウド上での連携において、システム構築と運用をワンストップで任せられることでした。同社では、クラウドサーバーや複数の運用支援サービスを提供しています。これらは多くの導入実績があり、品質が保証されていました」(太田氏)
こうしてパートナーに選定されたNTT Comが、新たな音声基盤として第一生命に提案したのが、クラウドPBXサービスである「フレックスモバイル」だ。フレックスモバイルは、スマホの内線利用や既存PBXとの併用などさまざまな形態に対応でき、数万という内線の収容が可能な点を特徴とする。
ITビジネスプロセス企画部マネジャーの岡田恭明氏は導入理由を「スマホの内線利用に適したサービスであること。そして、従業員へのヒアリングで全2万3000台の固定電話の約半数がスマホに移行することが既に決まっており、大規模案件の構築実績があるという信頼感を評価しました」と話す。
スマホを内線で利用するにあたり、使い勝手やセキュリティを高めるサービスとして、Web 電話帳サービス「PHONE APPLI PEOPLE(旧:連絡とれるくん)」の導入も決定した。
「弊社は保険会社ということもあり、業務を行ううえで、お客さまと密にコミュニケーションを取る必要があります。同時に、お客さまの個人情報を守る義務もあります。そのため、手軽に簡単に電話がかけられ、しかもスマホ内に情報が残らずセキュリティが担保できるPHONE APPLI PEOPLE(旧:連絡とれるくん)は、必須のサービスと考えていました。日本で200万ユーザーを超えるNo.1の実績を持つ点も、選定理由のひとつでした」(岡田氏)
さらに、多くの従業員が同時にクラウドPBXを利用しても、安定的、快適なネットワークが利用できるよう、NTT Com の「Flexible InterConnect」を採用。既存のNTT Com網と「Flexible InterConnect」を接続するネットワーク構成とすることにより、国内の千数百カ所にも及ぶ営業オフィスに、新たに機器設置や回線敷設など、設備を導入する必要がなく、コストを抑制できたといいます。つまり、現地に一度も工事に入らず、新たなネットワーク環境が構築できたというわけです。
そして2020年4月、内勤職の約1万1000人に対して内線端末の配布を開始した。
多くの従業員がスマホで内線が使えるようになり、良かったと感じています。コロナ前よりも対面で会話ができなくなった分、電話の利用頻度も急増しています。社内だけでなく、お客さまとの円滑なコミュニケーションの維持にも貢献できたと思っています。スムーズに導入できた一因は、PHONE APPLI PEOPLE(旧:連絡とれるくん)の優れたUIにあります。人事異動や入退社した従業員の情報更新も一括対応でき、最新の電話帳を維持できます」(岡田氏)
コロナ禍でテレワークを経験した従業員からは、追加で端末を手配してほしいという声があり、約1000台の端末を追加で配布し、結果的に、約2万3000台の固定電話のうち、スマホが選択された分、約1万1000台を減らすことに成功した。
「スマホは固定電話の半分以下の金額です。さらに、電話設置時の配線工事費用も不要となります。スマホの活用によりコストを削減できたことは非常に大きいと思っています。クラウドPBXはサービス提供型なので設備投資をしなくてすむこと、柔軟に内線台数変更なども可能になることも大きなメリットだと感じています。
また、プロジェクトのメンバーは、当社とNTT Comの合計10名程度で、しかも期間も限られていました。それでも、予定通りに大規模な改修が進められたことに、とても満足しています。ハイブリッド構成の音声基盤、ネットワーク、Web電話帳を含めた構築をNTT Comの1つの窓口で見てもらえ、24時間365日対応のヘルプデスクによる運用管理体制も整っているという安心感もあります。」(岡田氏)
今後については、ネットワークの整備を更に進めることで、よりスマホ端末を活用していくという。
「スマホ端末には音声だけでなくメールやチャット、リモート会議ツールなども入っていますので、今後は複数のツールを導入し、より 効果的な使い方を検討していきたいです。」(太田氏)