国立大学法人 長岡技術科学大学
ロボットの安全な遠隔制御のカギになる低遅延の閉域通信環境を
技術系人材の育成・交流・活躍を支援する“テックメタバース”に活用
国立大学法人 長岡技術科学大学
協働ロボット研究室
三好孝典教授
「我々が待ち望んでいるのは安全かつ低遅延のモバイルネットワークです。いずれ、日本全国、どこに行ってもほぼ遅延がなく、リアルタイムにつながる世界を実現して欲しいですね」
国立大学法人 長岡技術科学大学
技術革新フロンティア教育センター
廣井悠紀氏
「こちらの要望に対して、常にドコモビジネスは親身になって、素早く対応していただける。特に、壁にぶつかって次のフェイズに進めないときに、いろいろ手を尽くしてくださるので助かっています」
課題
ロボットの遠隔制御で5Gモバイル環境を活用
さらなる低遅延、安全性を担保する対策が必要に
大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う国立大学法人 長岡技術科学大学。同学では2030年を目途に高専―技科大路線の核となる教育研究システムを新たに構築し、教育、研究、社会連携、グローバル化、大学運営(組織・業務運営、財務)、デジタルキャンパス化を推進している。
同学の協働ロボット研究室は、国内はもとより世界でも唯一、「安全」に重きを置いた学科であるシステム安全工学分野に所属し、遠隔制御や力覚フィードバックを用いたロボットの研究・開発を行う。「多くのロボット研究・開発は性能向上を目的としていますが、我々は安全の担保と保証を目的にしています。いくら高性能でも危険なロボットが世の中に普及することはありませんので、たとえば、ロボットが人に危害を加えない安全な遠隔制御などの研究・開発を行っています」と語るのは協働ロボット研究室 三好孝典教授(以下、三好教授)である。
かねてより、三好教授は遠隔制御、AIといった研究シーズを活かして電気電子情報工学分野の岩橋教授とともに、匠の技を持つ職人が遠隔地のロボットを安全かつ正確に操作する研究を推し進めてきた。これらの研究シーズを軸に令和3年の文部科学省の「国立大学改革強化推進補助金」の公募に申請し、採択されている。
三好教授の目指すロボットの安全な遠隔制御を実現するために欠かせない、要となる技術の1つが職人とロボットを結ぶネットワークだ。その足掛かりとして三好教授が選択したのはNTTドコモの5Gモバイル環境だった。「学内の屋内外に8カ所の5G基地局を敷設してもらい、屋外はもちろん、研究室などの屋内のどこからでも品質の高い5Gでダイレクトにインターネットにつながる環境を構築しました。有線ではなくモバイル回線を選んだ理由は、ロケーションを問わず同じ条件で実験できることです。加えて他の大学や企業と一緒に実験をする場合に有線よりモバイルの方がセキュリティポリシーのクリアも容易なこともあり、日本全国どこでも同一条件ですぐに実験ができる利便性を評価しました」(三好教授)
低遅延、高速・大容量、多数同時接続の特長を持つ5Gモバイル環境をベースとして、安全なロボットの遠隔制御を行うためには、さらにクリアすべき2つの条件があったと三好教授は明かす。「遠隔制御のネットワークでいちばん重視されるのはRTT (Round Trip Time・通信の往復時間)の遅延が短いことです。通信の帯域は狭くてもいい、リアルタイムなロボットの遠隔制御では5Gの低遅延をしのぐ遅延の短さがカギを握ります。もう1つの条件となるのはネットワークの安全性を担保するセキュリティです。第三者による乗っ取り、なりすましを未然に防ぐ通信の閉域性をクリアする必要がありました」
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対策
ユーザー端末とサーバー間を5Gモバイルで
低遅延、かつ閉域で安全に結ぶ「docomo MEC®」を導入
ロケーションを問わず学内外でつながる5Gモバイル環境は実現できた。しかし、安全なロボットの遠隔制御を行うためには、より低遅延で高い安全性を担保できる仕組みが必要になる。そこで長岡技術科学大学では、ドコモビジネスの「docomo MEC®」の導入を決意。これはユーザー端末の近くに「MECサーバー」というクラウドサーバーを分散して配置、データ処理をMECサーバーで行うことで通信の低遅延を実現するサービスだ。加えて、「docomo MEC®」に最適な無線環境を提供する「MECダイレクト®」の活用により、ユーザー端末とサーバー間を閉域網で接続。ロボットの遠隔制御の条件、安全性の担保もクリアした。
「低遅延もさることながら、高いセキュリティが担保されているため非常に安心して実験ができるようになりました。VPNなどでもソフト面でのセキュリティ対策ができますが、絶対に安全とは言い切れません。その点、ハード面での対策として、専用SIMの所有者しか接続できない閉域網になっていますので、知らないうちにパスワードが盗まれてなりすましをされるといった心配をしなくていいので助かっています。なにより、全国どこからでも安全に接続できる利便性の高さを評価しています」(三好教授)
こうして「docomo MEC®」の導入により、安全なロボットの遠隔制御(および映像伝送)の実験環境が整備された。さらにGPUを追加してエッジサーバーの処理能力を高めることで、大型機器を操作するシミュレーション環境も構築。遠隔からの教育・研究ができるシステムが順調に完成していった。
続いて、同学が目指す高専―技科大路線の核となる教育研究システムの布石となる施策が、令和4年の「国立大学改革・研究基盤強化推進補助金」に採択された。「日本には我々と豊橋技術科学大学、2つの技術科学大学があります。2つの大学がチームを組み、全国に約50校ある高専とメタバース空間内でつながり、遠隔から共同で教育や研究を行うことで技術系人材の育成・交流・活躍を支援する“テックメタバース”が文部科学省に高く評価され、採択につながったと聞いています」(三好教授)
この採択を受け、同学では大型機器を操作するシミュレーション環境をMECサーバーからAWSへシフトする手段を模索していた。全国の高専に対して教育、研究を行うためには新たなコンテンツやシミュレーション環境の追加が必要になるためだ。「使い慣れているAWSを使いたい気持ちはあったのですが、パブリッククラウドであるがゆえのセキュリティ、安全面の不安が障壁となっていました」と語るのは、技術革新フロンティア教育センターで三好教授の取り組みのサポートを行う廣井悠紀氏(以下、廣井氏)である。
この要望を受けてドコモビジネスでは、AWSと「docomo MEC®」を閉域でセキュアかつダイレクトに接続できる次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」を提案。廣井氏が「使い慣れたパブリッククラウドであるAWSに安全かつダイレクトに接続できる仕組みとして最適でした」と語るように、まもなく「Flexible InterConnect」は導入され、教育、研究用にふさわしいネットワーク環境が完成した。
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効果
多目的に利用できる低遅延・安全な通信環境を整備
テックメタバース上で高専との教育、研究の深化へ
ロボットを遠隔制御する実験、AWS上に構築した大型機器を操作するシミュレーション環境の構築、さらには今後想定される企業などの外部サーバーとつながる通信経路として、現在、長岡技術科学大学の取り組みに「docomo MEC®」は不可欠の存在となっている。すでに実験のフィールドは海外にまで広がっている。「閉域網でつながるMECサーバー内に特定の遠隔操作用アプリケーションを立て、そこに専用SIMで接続して機器を遠隔操作する実験に取り組みました。私自身がドイツ、スウェーデンに赴き、現地から閉域網でデータを送信して日本の3Dプリンターで印刷するというものです。現在、学内の授業で使っているのは遠隔操作の3Dプリンターだけですが、これから、どんどんバリエーションを増やしていく計画です。いずれは国内外を問わずロボットの安全な遠隔制御が実現できると思っています」(廣井氏)
一般的なモバイル回線と比較して「docomo MEC®」の通信はリアルタイム性に優れていることも確認できている。「わずかな差ですが、遠隔制御の安定性を向上させるものです。音響再生時にスピーカーから出た音をマイクが拾い、スピーカーが再生を繰り返すことで発生する不快な金属音をハウリングといいますが、ロボットの遠隔制御でも通信遅延が原因で力学的ハウリングは発生します。遅延が大きいほど制御は不安定になるため、わずかでも通信が速いことは大きなメリットです」(三好教授)
「国立大学改革・研究基盤強化推進補助金」の採択から2年が経過し、長岡技術科学大学では取り組みの成果を出すフェイズに差し掛かっている。「我々が関係者しか入れないテックメタバースの閉域空間で提供するコンテンツを開発・提供し、多くの方々に使ってもらうための取り組みを進めています。全国の高専と企業と大学との連携、研究を深化させることが直近の目標です。長期的には、やはりロボットの安全な遠隔制御の実現が目標です。長岡は冬になると毎年の大雪が降って通勤できなくなります。それが原因で工場の生産ラインが停止すると大きな損害が生じます。自宅などの遠隔制御でものづくりや出荷検査ができるようになれば、1年中、生産ラインを稼働させられます。最終のゴールはそこにありますね」(三好教授)
「NTTドコモとNTTコミュニケーションズが一体となったドコモビジネスのシナジーを活かし、長岡技術科学大学に幅広いソリューションを一括で提供できたことが、今回のプロジェクト成功要因だと思っています。今後も良きパートナーとして、社会貢献性の高い先端研究の取り組みを伴走して支えていきます」(株式会社ドコモビジネスソリューションズ 新潟支店 地域DX推進担当 担当課長 臼井満)
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導入サービス
docomo MEC®は、5Gの可能性を広げる、国内初の「MEC」サービスです。 5Gの特長を最大限に活用できる「MEC」により、リモートをよりリアルに、 リアルを楽しく・快適にする、最先端ソリューションを創出できます。
サービス概要 docomo MEC®資料請求・お問い合わせ
国立大学法人 長岡技術科学大学
事業概要
実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う大学院に重点を置いた工学系の大学として1976年に開学。学術研究ではなく、学術研究を産み出すための現場での実践を重んじている
URL
https://www.nagaokaut.ac.jp
(PDF形式/800 KB)
(掲載内容は2024年9月現在のものです)
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