株式会社セブン-イレブン・ジャパン
サイロ化した社内データを安全な経路でクラウドに集約
DXを推進するデータ利活用基盤を構築
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
執行役員 システム本部長
西村 出氏
「現在はGCPのみですが、将来的には他社クラウドサービスなどもFICで相互接続してDXの取り組みを推し進めていく計画です」
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
システム本部
佐藤 毅氏
「1日当たりのトランザクション量といった細かいデータをNTT Comと共有し、進められたことが今日の安定稼働につながっています」
課題
事業革新のカギは各所に点在するデータの集約
ベンダー依存脱却で迅速なデータ収集、見える化へ
昨今の消費行動の変化に対応するため、国内最大手コンビニチェーンの株式会社セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は、顧客の希望する日時、場所に商品を届ける「ネットコンビニ」の展開など、従来の店舗販売と異なるラストワンマイルへの対応に注力している。こうしたニューノーマル時代のアプローチで重要になるのがデータの利活用だ。さらに、本部や社外といったシステム内に散在している各種データも集約し、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の推進に取り組んでいた。
「DXを推進するには、当社のレガシー化したIT基盤が障害となっていました。ITの黎明期から積極的に新技術を導入してきたIT基盤はサイロ化、肥大化が進んでいたのです。しかも、基幹システムの運用管理をITベンダーに依存しており、例えば全店舗からデータを集めようとすると最短でも翌日の朝までという長い時間が必要でした。加えて既定のフォーマットでしかデータを見ることができず、任意のデータを抽出したり、分析したりするにもコストや手間がかかっていたのです」とITシステムを統括するシステム本部長の西村出氏は、既存のIT基盤が抱えていた課題を語る。
同社は課題解決のため、ベンダー依存から脱却し、システム本部自らが開発、運用をリードする体制づくりに着手した。リアルタイムにデータを収集・活用するにはクラウド環境が最適と判断し、複数サービスを比較検討。結果、“Google Cloud Platform”(以下、GCP)をデータ利活用のプラットフォームに選定する。「当社は、2014年から災害対策システム“セブンVIEW”をGCP上で運用しています。本来は非常時用なのですが、現在は日常使いができるよう、複数のバージョンの検討・構築を進めています。このシステムとのデータ連携が容易にできることがGCPを選定した最大の理由です」(西村氏)
クラウド環境にデータ利活用基盤を新たに構築するあたり、もうひとつ大きな課題があった。それは膨大な店舗データを安全、迅速にクラウドに集約させる通信経路を確保することだった。
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対策
共創を見据えたクラウド接続のパートナー選定
移行に必要な安全・広帯域な通信経路を確保
クラウド上にデータを集約する際には通信経路の選定が重要なポイントになる。なぜなら、社内の機密データを漏洩させるようなセキュリティ事故は企業活動に甚大な打撃を与えるためだ。もちろん、セブン-イレブンでも安全なクラウド接続を実現するサービスの選定を進めていたと西村氏は語る。「当初は他社のサービスも検討していたのですが、次世代のデータ利活用基盤を構築するには、しっかりとしたチームを組んでプロジェクトを推し進めていく必要があります。そうした時に、信頼関係のあったNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)から提案を受けたのです」
セブン-イレブンのIT基盤のネットワーク領域は、長年、NTT Comが一手に運用管理しており、長年の実績があった。緊密な連携で共創を推し進めるパートナーとしては適任だと判断し、西村氏はNTT Comから提案を受けた「Flexible InterConnect(以下、FIC)」の導入を決断する。
FICとは、顧客の拠点と各社のクラウドサービスや、顧客のデータセンター間を閉域でセキュアに接続する次世代インターコネクトサービスだ。最大10Gbpsの広帯域接続に対応しているため、今回のような20,000を超える店舗から膨大なデータをリアルタイムに吸い上げる帯域設計も可能になっている。
また、GCPのみならず、AWSやAzureなどにも対応したマルチクラウド接続が可能だったことも選定のポイントになった。さらに、セブン-イレブンが活用するNTT ComのVPNサービス「Arcstar Universal One」との親和性が高いため、速やかにサービスが導入できることも限られた納期でプロジェクトを推し進めるには好都合だった。こうして、FICの導入により、データ利活用基盤の構築は予定通りに完了した。
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効果
データ入手の所要時間を劇的に短縮
DXの推進を加速
GCP上に実装されたデータ利活用基盤「セブンセントラル」について、西村氏は次のように説明する。「セブンセントラルは、シンプルな3つの構成となっています。例えると、データレイクが漁でとってきた魚を丸ごと入れる生け簀、データウェアハウスが魚をアジ、イワシ、サケといった種類に分けて冷凍保管する冷蔵庫、データマートが魚を三枚おろしにして汎用的な食材として提供する鮮魚店です。料理を利用者に託し、ロジックを加え過ぎてサイロ化、肥大化したシステムと同じ轍を踏まない設計になっています」(西村氏)
セブンセントラルの稼働により、データの入手に要する時間が劇的に短縮されたと西村氏は明かす。「早くても翌朝にしか手に入らなかった店舗データが、いまでは最短1分で入手できます。リアルタイムな在庫確認ができるようになり、お客さま向けアプリの利便性が大きく高まるなどの効果も出ています。シンプルながら、かなり独自性、先進性のあるプラットフォームになったと自負しています」
全国の店舗とGCP上のセブンセントラルを結ぶFICも、閉域と広帯域という特性を生かし安定稼働を続けていると高く評価するのは、現場でプロジェクトの指揮を執ったシステム本部の佐藤毅氏だ。「NTT Comには導入段階からネットワークとは関係のないアプリケーション領域の会議にも入っていただき、細かいところまで詰めた設計ができたことで、リリース後は大きな問題もなく安定稼働しています。障害発生率が低いことに加え、障害発生時の復旧も早い。長年、店舗ネットワーク運用管理で培ったエスカレーションの知見がフルに活かされていると感じています」
今後DXを推進し、新たなサービス創出・拡充などを加速していくために、セブンセントラルが不可欠のプラットフォームになると西村氏は考えている。「今後も汎用性、即時性、独自性の3原則に基づき、ステイクホルダーからのリクエストも聞きながら、セブンセントラルにデータを集約していくことで、ラストワンマイルのサービス拡充を図っていきます。NTT ComのAI、IoTといった豊富なテクノロジー、知見をお借りし、共創による新たな価値あるサービスの創出にも挑戦していくつもりです」
図 セブンセントラルの構成イメージ
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導入サービス
お客さま拠点とクラウドサービス、データセンターなどをオンデマンドで簡単・柔軟に接続可能な次世代インターコネクトサービス。
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
事業概要
1973年の創業以来、地域との信頼関係を築き、変化する顧客ニーズに対応した価値ある商品、サービスを提供する国内最大手のコンビニエンスストアチェーン。コンビニ業界を先導してPOS レジの早期導入、業界初の24時間営業、プライベートブランドなどを積極的に展開してきた。現在、日本全国に21,069店(2021年1月末現在)を展開している。
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(掲載内容は2021年3月現在のものです)
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