福岡県糟屋郡志免町
町を網羅する内線網の老朽化に伴いスマホ内線化へ移行
複数サービスの連携で最終到達点に近い電話環境を構築
フルクラウド電話ソリューション
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総務課 情報管理係
主任主事
鵜木浩司氏
「これまでのシステム刷新は、こちらが伝えた課題を相手が解決する流れでした。今回は一緒に課題を探し、解決する流れで進められたことが大きかった。いい信頼関係が構築できたことに感謝しています」
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総務課 情報管理係
主事
白垣克士氏
「今回、電話を1人1台のスマホに切り替えたことで、会議や外出時にも電話が持ち歩けて、どこでも仕事ができるようになりました。まさに場所に縛られない多様な働き方が実現できています」
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総務課 情報管理係
主事
松石侑樹氏
「複数サービスを組み合わせたトータルな提案もさることながら、こちらの要望をしっかり受けて最終的に目指すべき構成の設計図までをご提示いただいたことが選定の決め手になりました」
課題
固定電話がある場所でしか電話が取れず、取り次ぎの稼働も負担に
各拠点の電話配線も複雑で電話機設置・変更などの運用が煩雑
福岡都市圏のほぼ中心に位置する志免町は、福岡市と福岡空港に隣接した県下で3番目に小さな町だ。戦前から戦後にかけて炭鉱町として栄え、その名残として国の重要文化財に指定された「旧志免鉱業所竪坑櫓(きゅうしめこうぎょうしょたてこうやぐら)」 は町のランドマークとして地域の人々に愛されている。現在は町内の工業団地に機械、金属工業を中心とした約50の事業所が立地している。かねてより、同町では職員たちの課題を解決する現場主導型のDXを推進してきた。2013年、役場庁舎をはじめとして福祉施設、小中学校といった町の公共施設を内線化する一大プロジェクトは、その先駆けといえるだろう。しかし、自営の光イントラネットを利用した内線網の老朽化により、さまざまな課題が生じていた。
「まず、固定電話が設置された場所でしか電話が取れないことが大きな問題でした。しかも、離席中には代わりの職員が電話の取り次ぎを行い、メモで要件を伝える非効率な業務も発生していました。加えて働き方改革の一環でテレワークを試験運用しており、電話だけが場所に縛られているという問題を解決する必要もありました。とはいえ、町全体を網羅する電話の仕組みを踏襲したい使命感もあり、有効な手立てはないかと考えていたのです」と語るのは総務課 情報管理係 主事の白垣克士氏(以下、白垣氏)だ。
利用面ではなく運用面にも大きな問題があったと続けるのは、総務課 情報管理係 主事 松石侑樹氏(以下、松石氏)だ。「オンプレミスのPBXを基盤とした大規模な電話環境だったため、各所に張り巡らされた配線が複雑で、新しく異動してきた職員にはまったく手が出せない状況でした。たとえば、定期的な人事異動やフロアレイアウトの変更はもちろん、コロナ禍の給付金の事務局に電話を設置する際にも業者頼りになり、非効率な稼働やコストがかかりスピーディに対応できない悩ましい課題もありました」
こうした課題解決に向け、まずは配線をシンプルにするためにLANケーブルを活用したIP電話を導入する流れになった。「IP電話になれば一緒にスマホも導入できるのではないかと思い、いろいろなキャリア、ベンダーから電話環境を刷新する提案を受けました。結果、自治体で先行導入されるIP電話とデータ通信アプリを使ったWi-Fi環境ありきのスマホ内線化という無難な構成に落ち着きつつありました。しかし、Wi-Fi環境の音声品質に不安があり、この構成で良いのかという疑念もありました」(白垣氏)
今後、志免町では庁舎内の大規模改修を控えており、今回の刷新は非常に重要な位置づけにあった。「テレワーク、フリーアドレスといった働き方に柔軟に対応できる電話基盤づくりは、マストの条件になります。他の自治体と足並みを揃える守りの選択ではなく、もう一歩進んだ挑戦を進めたい思いはありました」と、総務課 情報管理係 主任主事の鵜木浩司氏(以下、鵜木氏)は当時を振り返る。
対策
役場庁舎をはじめ13拠点の電話環境をフルクラウド化
1人1台のスマホ支給で内線・外線・各種アプリの活用環境へ
決め手に欠ける状況を打開したのは、ドコモビジネスからの斬新な提案だった。「それは、役場庁舎をはじめ13拠点の電話環境をフルクラウド化、固定電話とスマホの連携で内線に加え、外線や各種アプリなどが活用できる電話環境です。ドコモの回線で通信の安定性、音声の品質といったネックが解消でき、シンプルな構成で運用の稼働も軽減できる、まさに我々の考えを覆す画期的な提案でした」(白垣氏)
ドコモビジネスからの提案は、複数サービスの組み合わせによるフルクラウド電話ソリューションと呼べるものだった。まず、オンプレミスのPBXをクラウド化し、主要機器をデータセンターに集約することで各拠点の機器を最小限化した。1人1台のスマホを支給し、「オフィスリンク®」によりクラウドPBXとドコモのネットワークを接続することで、固定電話機との内線はもちろん、全国どこにいてもスマホによるクリアな音質の内線通話ができる仕組みだ。その際にネックとなったのが、クラウド化によりデータセンターへ集約することで電話番号が変わる音声用回線だった。この問題に対しては「Arcstar IP Voice(Universal One)クラウドプラン」を導入し、音声用回線を集約しても従来の電話番号をそのまま利用できるようになっている。さらに「カイクラ通話録音」により電話応対の見える化、クラウド化が困難なFAX回線はモバイルネットワークを利用できる「homeでんわ」を含めた提案内容だった。
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本案件で導入したサービス特徴/導入効果
サービス名 | 特徴 | 本案件における導入効果 |
---|---|---|
オフィスリンク® | 携帯電話を全国のドコモ通信エリアで内線電話として利用可能。外線発信・着信も会社の電話番号を利用できるので固定電話の削減が可能。どこにいても会社と変わらない電話環境を実現。 | 固定電話を廃止。職員1人1台スマホ内線化。どこでも電話ができることに加えて、電話取り次ぎの減少で業務を効率化。スマホ内線化で設備の集約・配線レス化により運用性が格段に向上。 |
Arcstar IP Voice(Universal One)クラウドプラン | 電話回線などの外線通話用設備を設置することなく、各拠点や店舗にて固定電話番号を利用できるプラン。 | 13拠点の音声用回線を集約し、各拠点の音声用が回線不要なり、シンプルな構成で運用の稼働も軽減。 |
homeでんわ | ドコモのモバイルネットワークを利用した、月額550円(税込)から利用可能な固定電話サービス。 電話回線の敷設が不要なため、レイアウト変更なども容易なのもメリット。 |
クラウド化できなかったFAX回線をhomeでんわに置き換えることができた。 庁舎内でレイアウト変更が多発する中でも柔軟に対応可能。 |
カイクラ通話録音 | 電話応対内容を記録することでトラブル解決の迅速化に加えて、職員の安心感を高めることが可能。 | 電話応対の振り返りが可能になり、職員の電話対応力や接遇意識が向上し、トラブル防止に寄与。 |
この提案により、志免町の電話環境刷新プロジェクトはにわかに動き始めた。「初期フェーズでの課題を改善しながら徐々に展開拠点への環境構築を行いました。準備段階から意見交換を重ねてしっかり構成をつくりあげたこと、本プロジェクトメンバーのチーム力とスピード感を持った対応から、とくに大きな問題もなく全拠点への導入が完了しました。スマホ内線化は大きな変革です。多少の混乱は想定していましたが、ドコモビジネスの手厚いサポ―トがあったことでスムーズに移行できましたね。あまりにも問題がなくてびっくりしたほどです(笑)」(鵜木氏)
効果
スマホの内線化で電話の利便性が上がり業務効率化が加速
設備の集約・配線レス化により運用性も格段に向上
フルクラウド電話ソリューションの実装により、志免町の電話環境は格段に洗練された。もちろん、当初の目的だった従来の町を網羅する電話の仕組みが踏襲されている。「スマホで電話が受けられることで格段に業務効率は上がっています。また、外出先で個人スマホを使う必要がなくなったと喜んでいる職員は多いと思います。IP電話とスマホ内線にマイグレしたことで通話料が抑えられるメリットも生まれました。個人的に感じている最大の効果は、配線がシンプルになったことで運用を業者に頼まずに自分たちでできるようになり、レイアウト変更などが劇的に楽になったことですね」(松石氏)
従来の入り組んでいた電話環境の配線は、いまや絡まりあった糸をほどいたような簡潔な構成になっているという。「ほぼ、1本のケーブルですべてがつながっているイメージです。しばしば、他の自治体さんなどから視察の話もあるのですが、ルーターと1本のLAN配線しかお見せできません。そのレベルまで最小化できたことに満足しています。おそらく、いま行政ができる電話環境の構成としては最終到達点に近いのではないでしょうか。無難な選択をせず、一足飛びで行けるところまで行けた実感があります」(白垣氏)
職員がLANケーブルを挿すだけで簡単に多機能電話機が設置できるようになり、緊急的な事務局の立ち上げにもスムーズに対応できるようになった。さらにテレワークの取り組みも加速している。「最初は企画部門や総務部門からスタートしたのですが、現在は他課の職員にも利用が拡大しています。やはりスマホが持ち帰れて、どこでも電話が取れるようになり、職員たちの働き方はかなり変わってきたと思っています。先日の台風では、職員たちがスマホを持って現場で対応にあたりました。想定通り、BCP対策の効果も出ています」(鵜木氏)
現在は内線、外線といった電話の利用がメインだが、今後はさまざまな用途でスマホを活用していく計画だ。直近ではMicrosoft 365(Teams)の導入を予定している。「これまでの連絡手段は電話のみでしたが、スマホを起点としてチャットでの情報共有、認証基盤によるセキュリティの担保といった、さまざまな付加価値を持つコミュニケーション基盤を目指したいと思っています。電話応対が職員の仕事の時間を奪う問題を解決して生産性を高め、さらなる住民サービスの向上につなげていきたいですね」(白垣氏)
導入サービス
スマートフォンおよび携帯電話を内線化し全国のドコモ通信エリアを会社の内線エリアへ
詳しくはこちらArcstar IP Voice(Universal One)クラウドプラン
高品質な法人向けIP電話サービス。
拠点や店舗ごとに電話回線などの外線通話用設備を設置することなく、03や06等の固定電話の番号を提供する電話サービス
ドコモのモバイルネットワークを利用した03や06等の固定電話の番号を提供する電話サービス
詳しくはこちらコミュニケーションを1つに
お客さまとの“会話”をワンプラットフォームで実現
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福岡県糟屋郡志免町
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事業概要
福岡市近郊の糟屋郡に属し、ほぼ全域が市街地で丘陵地が広がっている。跡や自然豊かな観光名所が多くあり竪坑櫓のほか、七夕池古墳、平成の森公園、鉄道公園などが有名。
URL
https://www.town.shime.lg.jp
(PDF形式/1.25 MB)
(掲載内容は2025年1月現在のものです)
関連リンク