株式会社 豊田自動織機 碧南工場 エンジン事業部 総務部 防災施設管理室 碧南防災施設G 主担当員 西林賢一郎氏

株式会社 豊田自動織機 碧南工場
総務部 防災施設管理室 碧南防災施設G
主担当員

西林賢一郎氏

「来年度のドローン導入に向けて避難状況、病院搬送状況を確認できる仕組みをテスト運用中です。
すでに碧南工場と東知多工場で16名がドローンの免許を取得、これは次の一手として必ず実現したいですね」

 

課題

誰一人として犠牲者を出さない防災体制の構築に向け
視覚的に避難状況を把握できる仕組みづくりが急務に

トヨタ自動車をはじめとするトヨタグループの源流企業として知られる株式会社 豊田自動織機は、繊維機械、自動車、産業車両の製造・販売および物流事業などを手がける輸送機器メーカーだ。碧南市の海沿いに拠点を置く碧南工場は、三河湾を挟んだ知多半島にある東知多工場とともに豊田自動織機のエンジン事業部として自動車用・産業用エンジン、ターボチャージャーなどを生産。2工場合わせて、約4,700人の従業員が働いている。「私たち豊田自動織機の9つの工場のうち、とくに海に近い碧南工場と東知多工場は自然災害に対する強い危機感を持っています。万一、南海トラフ地震などが発生した際にも、誰一人として犠牲者を出さない意識で防災訓練や建屋の補強などを推進しています」と語るのは、碧南工場の総務部で防災対策を一手に担っている西林賢一郎氏(以下、西林氏)だ。

かつて西林氏は豊田自動織機の本社で全社的な防災対策を一括して担ってきたキャリアがある。その実績を買われて2019年に碧南工場へ異動したが、当時の防災訓練を目の当たりにして多くの課題を感じたという。「碧南工場では地震発生後25分以内に安全な2階以上の建物にすべての参加者が避難を完了し、30分以内に不明者の特定を終える目標を立てています。しかし、当時は避難に30分以上要してしまう状況でした」(西林氏)

その大きな原因となっていたのが、災害対策本部から避難状況の把握が困難だったことだ。「従来はトランシーバーなどの無線機で現場の状況を確認し、避難指示を出す運用をしていたのですが、詳細な訓練の様子が確認できないため、的確な指示が出せず、訓練の現場も混乱していたのです。もっと視覚的に避難状況を把握して管理でき、防災訓練のみならず地震や台風といった大規模災害時の避難にも活用できる、いわば“防災の眼”となる新たな仕組みが必要でした」(西林氏)

こうして、碧南工場では防災の観点から新たなカメラサービスの導入検討を開始した。

 

対策

クラウド上の映像をどこでも確認できる点が導入の決め手に
違和感なく使いこなせる使い勝手の良さも高く評価

リアルタイムに避難状況を把握できるカメラサービスの選定にあたり、碧南工場では複数のサービスの比較検討を行った。現在、工場内で利用している防犯カメラの用途を防災に拡大する案に加え、防災の要件を満たす2つの新たな監視カメラサービス、計3社からの提案が最終的な比較の対象になった。

「まず従来の防犯カメラを防災で活用するには有線の光回線を引く必要があり、コストがかかる、1度設置すると場所を変えられない、災害時に断線したら身動きが取れないデメリットがあったため早々に導入を断念しました。残り2社のサービスはSIMによる無線通信のため有線通信のネックは解消できます。ここで選定の決め手になったのはカメラで撮影した映像データの保存先です。一方はカメラに搭載したSDカード、もう一方はクラウドサーバーでした。私たちが求めていたのは地震や台風などが発生した際に工場だけではなく、自宅などからもすぐに状況が確認できる仕組みです。いつでもクラウド上で映像が確認できる、しかもデータの保存もできる利便性の高さでサービスを選定しました」(西林氏)

西林氏が導入を決めたのは、NTTコミュニケーションズのクラウド録画カメラサービス「coomonita」。カメラで撮影した映像をクラウド上で管理し、PCやスマホから、いつでも、どこでも映像を確認できるサービスだ。高画質なHD映像を確認できること、カメラへの外部アクセス遮断や映像の暗号化などで高いセキュリティが担保できること、ネットワーク接続だけで手軽に導入できるといった特長を持っている。

「導入に先駆けて碧南工場でテスト運用をしたのですが、想定していた効果に加えて非常に使いやすい操作性の高さもポイントでした。初めて触れたときに迷うことなく設定や操作ができたので、これなら緊急時の場面で、初めて触れる人でも違和感なく操作することができると感じたのです」(西林氏)

こうして、碧南工場と東知多工場の避難場所を中心に「coomonita」を順次導入することとなった。

 

効果

coomonitaの導入で津波避難の効率が格段に向上
今後は全社的な防災体制の構築で地域への貢献も視野

2019年に碧南工場専任の防災担当に就任して以来、西林氏は年2回の津波避難訓練を軸として、繰り返し指揮者や建屋立ち入り診断といった個別訓練を重ねてきた。加えて参加する従業員の防災意識を高める防災ミーティングも定期的に開催している。「さまざまな角度から防災体制の改善に取り組んできました。今回、導入したcoomonitaに限らず、防災に役立つデジタルツールも積極的に導入しています。このような取り組みにより、直近の避難防災訓練では20分以内に避難を完了、不明者の特定を含めて格段に速くなっています。避難場所などに設置したカメラで避難状況をリアルタイムに確認して、防災本部から的確な指示ができるようになりました。参加する従業員も以前より落ち着いて行動できているようです。ここに来るまで5年がかりでしたね(笑)」

現在(2025年1月時点)、coomonitaのカメラは碧南工場に21台、東知多工場に13台、計34台が導入されており、今後も台数を増やしていく方針だという。避難場所に加え、津波の予兆となる引き潮を監視するために半田港の先端、被災状況を確認するための交通の要となる橋梁を監視するカメラも設置されている。

〇海側、半田港の先端を監視するカメラ画像

〇海側、半田港の先端を監視するカメラ画像

地震の際の引き潮はもちろん、台風の際の高潮や
ゲリラ豪雨時の冠水などの状況が把握できるようになっている

「そのほかにもトラックが出入りする物流エリア、鉄などの金属が置いてある廃棄物エリア、外部から人が出入りする警備員エリアにもカメラを設置しています。これは防災目的に加えて、盗難、不法侵入を防ぐ防犯効果もあります。施設や配管などの設備から有害物質などが漏れ出す環境漏えい監視用、電源系の動力監視用のカメラも稼働しています。このような取り組みを全社で共有することで、今後は他の工場にも導入が進んでいく予定です。現在、本社主導で各拠点の屋上に防災カメラをつける取り組みも進んでいます。これからは全社的な情報共有体制づくりを進め、より強固な防災体制を構築していく方針です。実は豊田自動織機では各市と避難場所の提供、消火活動の応援などに協力する地域協定を結んでいます。将来的にはカメラ映像を市と共有することで、地域住民の方々の支えとなる防災の協力ができたら最高ですね」(西林氏)

導入サービス

coomonita (コーモニタ)

coomonitaは、撮影した映像をクラウド上で管理しPC・スマホからいつでもどこでも確認できる”クラウド録画カメラサービス”です。

詳しくはこちら
株式会社 豊田自動織機

株式会社 豊田自動織機

株式会社 豊田自動織機

事業概要
繊維機械、自動車、産業車両の製造・販売および物流事業などを豊田自動織機のエンジン事業部として自動車用・産業用エンジン、ターボチャージャーなどを生産。同社の防災体制をリードする工場だ

URL
https://www.toyota-shokki.co.jp/


(掲載内容は2025年3月現在のものです)


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