日本交通株式会社
IVR導入により通話時間の短縮や応答率の改善を実現
電話用件に応じた人員の適正配置も可能に
日本交通株式会社
業務室
室長
板持 信夫氏
「NTTコミュニケーションズには、今後も新しいサービスや先進技術の紹介を期待しています」
日本交通株式会社
業務室 配車センター
室長
勝部 広人氏
「つながりやすくなったので、営業所へかけ直すお客さまが減り、全社的な効率化が図られています」
課題
無線室への電話集中と通話時間が長くなることで
配車依頼への適切な応答ができていなかった
日本交通株式会社(以下、日本交通)は、1926(大正15)年にタクシー会社として大阪で創業された。以来、「地域社会の足」として成長を遂げ、現在は総合交通サービス企業として、ハイヤー・タクシーと高速バス・貸切バスを主軸に事業を展開。大阪を中心とした関西圏、さらには鳥取県という幅広いエリアでサービスを提供している。
安全をすべてのことに優先させる「SAFTY IS THE BEST SERVICE」という企業理念を掲げ、乗客の命を預かる乗務員に対しての指導や教育にも注力。一般顧客はもちろん、法人顧客からも高い信頼を寄せられている。
タクシー・ハイヤー事業においては、日々の配車依頼や予約を電話で受けることが多く、同社にとって通話によるコミュニケーションは極めて重要な位置を占めている。しかし以前から課題が顕在化しており、電話応対の体制見直しが急務となっていた。業務室の室長を務める板持信夫氏は、その内容を説明する。
「従来、大阪と尼崎エリアの営業所に関しては、配車の電話をすべて本社の無線室に転送して応対を行っていましたが、一般的な固定電話を利用していたため、用件別の振り分けができませんでした。回線やオペレーターに限りがあることに加え、忘れ物の問い合わせなど、配車以外の電話も多く、どうしても1件あたりの通話時間が長くなり、配車依頼の電話すべてに応対できていない状態でした。通話中でつながらないと営業所の代表番号にかけ直すお客さまも多く、無線室だけでなく営業所も多忙になってしまいました。何にもまして、電話がつながりにくいということは、お客さまにご迷惑をかけてしまいますので、その状況を解決できるような通話システムの導入検討を本格的に始めたのです」
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対策
通信キャリアとしての信頼性の高さや
同業他社での実績を評価してサービスを選択
検討の結果、日本交通が導入を選択したのは、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)が提供する「ナビダイヤル」だった。ナビダイヤルは、「0570」から始まる専用電話番号で全国複数の拠点での受付を実現するサービスであり、IVR(自動音声応答)やルーティングなどの多彩な機能を持つことに加え、設備の工事や準備が不要であることも大きな特長といえる。
「IVRなど機能的に我々が求めていたことをすべて満たしていて、紹介を受けた時点からいい印象を持っていました。タクシー事業において電話は生命線ともいえるものであり、回線のトラブルなどは万に一つもあってほしくないものです。他社のサービスも並行して検討したのですが、信頼性という点を重視し、国内トップの通信キャリアとして豊富な実績や高い信頼性を持つNTT Comのサービスを採用することにしました。運用コストも納得できるものでしたが、当社にとっては通信品質の担保はコストに勝る重要なポイントでした。加えてナビダイヤルを導入している同業他社にもヒアリングし、いい評価を聞いたことも決定を後押ししたと思います」と、板持氏は選択の要因を挙げる。
2018年3月のNTT Comとの最初のコンタクト以降、2019年8月の本格稼働までのプロセスは順調に進んだというが、長年利用してきた既存の電話番号からナビダイヤルに移行することは同社にとって非常に大きな変更であり、旧番号でのガイダンスはもちろん、タクシーチケットや印刷物の修正など、新しい番号の周知に多大な労力を要したという。また、サービスの内容に関しても稼働間際まで変更が加えられたが、要望に対して最後まで柔軟に対応したNTT Comのサポート体制にも助けられたとのことである。
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効果
通話時間を大幅に短縮し、応答率も大きく向上
人員の最適配置やトラフィックデータの活用も可能に
こうして、大阪と尼崎・西宮エリアの電話は2つのナビダイヤル番号に集約され、既存の番号では音声ガイダンスによりナビダイヤルへの誘導が行われている。日本交通が導入前に抱えていた課題や問題点はどのように改善されているのだろうか。業務室配車センターの室長を務める勝部広人氏は、導入効果を語る。
「通話の振り分けができることによって、お客さまの用件に応じてオペレーターが応答することが可能になります。目的が事前に把握できているため、1件あたりの平均通話時間がかなり短縮されました。その結果、お客さまをお待たせすることが少なくなったことが、非常に大きな効果といえるでしょう。実際に『電話がつながりにくい』という乗務員へのお叱りの言葉もあると以前は耳にしていましたが、大きく減っているようです」
導入前は1件の通話の平均所要時間が約3分であったが、現在は45秒程度と大幅な短縮を実現。それに伴い、電話の応答率も導入以前の約70%から約90%へと大きな改善を見せている。これには、着信先の回線が通話中であった場合に他の回線に着信させる話中時迂回機能も一役買っており、従来と比較して機会損失がかなり減少したといえるだろう。
現在はIVRによって、「タクシー」「ハイヤー」「ジャンボタクシー」「忘れ物」「その他」の5つにコールの振り分けを実施。板持氏はその導入効果による人員配置の変更に言及する。
「当社は、お客さまの電話番号に対応して自動配車ができるシステムを導入しており、タクシー配車のオペレーターには高い専門知識は必要ありません。ですから、タクシーの受付ではナビダイヤル導入以降、パートタイムの従業員を増やしています。逆に『その他』にはクレームが入ってくる可能性もあるため、経験豊富なオペレーターをあてるという、人員配置の最適化を図ることができました」
さらに、すべてのコールのトラフィックデータが取得できるため、いままで見えていなかった傾向などを視覚的に把握することが可能となり、施策の検証や新たな戦略の立案などに役立てられている。板持氏は「得られたデータを基にすでにいろいろな施策を進めており、今後配車の方法もかなり変わってくると思います」と期待を込める。
タクシー全般の市場としてはスマートフォン配車などのサービスが急速に広がりを見せており、日本交通でも業務の効率化やお客さまへ利便性提供を実現できるものであれば、これからも積極的にITの力を借りていきたいという。また同社では、京都府舞鶴市およびオムロン株式会社とともに複数の交通手段をつなげて1つのサービスとして提供する「MaaS(マース)」の実証実験に取り組むことを発表している。これは、地域のバスやタクシーなどの交通機関と住民同士による送迎サービスを組み合わせ、持続可能な地域交通のあり方を検証するものであるという。今後さらなる高齢化を迎える社会にあって、地域に寄り添ったサービス提供を目指す日本交通の挑戦が注目される。
図 ナビダイヤル受付フローイメージ
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日本交通株式会社
事業概要
大阪を核に、兵庫・京都などの関西圏、鳥取県でタクシー・ハイヤー、高速バス・貸切バスを軸に事業を展開。自動車教習所、整備工場などの運営も行い、総合交通サービス企業として良質なサービスを幅広く提供している。車両をハイグレード化して、黒塗りやシーツ生地のシートカバーを採用したセミハイヤーは、同社がパイオニア的存在であるという。
URL
http://www.nihonkotsu.co.jp
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(掲載内容は2019年12月現在のものです)
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