株式会社直伝
証券業界を中心にインタラクティブな映像配信を提供
Smart vLiveを活用した超低遅延オプションでビジネスを拡大
株式会社直伝
代表取締役
平山 雅士 氏
「Smart vLiveのおかげで超低遅延ライブを新たにサービスすることができました。当社が企画や配信運用に注力できるのも、NTTコミュニケーションズが先進的なテクノロジーを安定的に提供してくれているおかげと考えています」
株式会社直伝
制作運用部
進行管理担当マネージャー
小笠原 千畝 氏
課題
証券業界を中心にインタラクティブな配信システム「Go Stream」を提供するも、HLSの仕様の制約から遅延が課題に
1999年10月1日、政府の規制緩和策の一環として株式の売買委託手数料が全面的に自由化されたことを機に、実店舗を持たない「ネット証券」や「オンライン証券」と呼ばれる証券会社が数多く誕生した。
株式会社直伝の創業は2004年1月13日(サービスは2002年に個人事業としてスタート)。手数料の自由化から数年が経ち、オンラインによる株式売買が本格化してきたころだ。
「店舗を持たない証券会社も増えてきたこともあり、それまで実店舗で開催されていた投資セミナーなどを、インターネットを通じて質疑応答も可能なインタラクティブな形で配信できないだろうか、という着想から新たなビジネスモデルを構築しました」と、同社代表取締役の平山雅士氏は創業の経緯を説明する。
同社の強みは証券業務や金融商品に精通していることだ。平山氏自身、経済情報を扱う通信社に在籍していた経歴を持つほか、証券業界出身者の社員が多く在籍しているため、このようなシステムを使っての株式セミナーの内容やマーケティング活用方法、講師の紹介などのコンサルテーションも実施するなど、証券会社の情報発信をワンストップでサポートしている。
現在のサービスの中心となるインタラクティブなライブ配信システム「Go Stream」は、開発当初はマイクロソフトActiveXコントロールで構築。その後第二世代としてAdobe Flashを用いて提供。その後、Flashのサービス終了に伴って、第三世代として2016年頃にHTML5をベースに、HTTP Live Streaming(HLS)[*]への切り替えを行っている。
HLSは標準的なHTTPサーバーで動画を配信できる標準性が特徴だ。ただしHLSは、再生時に一定量のデータをバッファするため、およそ10秒から40秒程度の遅延が生じることが知られている。
「遅延が大きいとセミナー参加者からの質問にリアルタイムにテンポよく対応することが難しくなり、あとでまとめて回答する、といった進行にならざるを得ません。主催側も気を使いますし、参加者の満足度も下がってしまいます。リアルタイムなコミュニケーションを実現できないかと、低遅延での配信の可能性を探っていました」(平山氏)。
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対策
1万人規模の視聴者に1秒未満の遅延で映像を配信できる、NTTコミュニケーションズの低遅延配信プラットフォーム「Smart vLive」を採用
2020年に入るとHLSが持つ遅延がさらに課題になった。「コロナ禍をきっかけにオンライン会議システムを多くの人が使うようになったことで、インターネットを介しても遅延の少ないやり取りは十分に可能との認識が広まっていきました。これらのシステムが使用しているWebRTC[*]による1対1通信と、当社のGo Streamが使用しているHLSとでは仕組みが異なるのですが、お客さまにご説明しても言い訳としか聞いてもらえず、低遅延サービスの提供が急務となっていました」と平山氏は説明する。
そのような折、2021年7月にNTTコミュニケーションズが発表した低遅延配信プラットフォーム「Smart vLive」が同社の目に留まった。Smart vLiveは、WebRTCをベースにNTTコミュニケーションズが独自に開発したスケール技術を用いた配信テクノロジーで、1万人規模の視聴者に1秒未満の遅延で映像を配信できるのが特徴だ。コンサートやスポーツの中継などで新たな価値を創造できると期待されている(図1)。
「さっそくSmart vLiveのデモを行っていただいたところ、時計を映した映像と、実際の秒針とがほぼ一致していて、感動を覚えたほどです。1万人の同時視聴にも対応しているのであれば、参加者が数千人にも達する人気セミナーにも十分に使えますし、NTTコミュニケーションズは国内の会社ですから、海外企業のサービスを利用する際のベンダー側との時差の考慮や、日本ならではの品質に関する認識差異がなく、円滑なやりとりが期待できます。これらの点を評価してSmart vLiveの採用を決めました」と平山氏は経緯を説明する。
同社では、参加者のアクセス情報、質問者や質問タイミング、チャットのやりとりや書き込み者など、証券会社などの顧客がマーケティングに活用できる情報を取得する独自の機能と、Smart vLiveとを連携させ(図2)、2021年12月からGo Streamの新たなプランである「超低遅延ライブ」として顧客に提供している。
なお、従来のHLSベースの配信サービスは、バッファの大きなHLSならではの堅牢性を求める顧客もいるため、Go Streamの「通常ライブ」プランとして引き続き提供中である。
図1. 1秒未満の低遅延ライブ配信を実現するライブ配信プラットフォーム「Smart vLive」
図2.直伝独自のライブ配信管理システムとSmart vLiveとを連携させた、Go Streamの「超低遅延ライブ」プランの概要(図提供・直伝)
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効果
「超低遅延ライブ」プランの追加を通じて顧客への提案活動を拡大、株主総会のライブ配信にも採用される
Smart vLiveをベースにした超低遅延ライブが直伝の提供サービスに加わったことで、ビジネス面では次のようなメリットが得られているという。
まず、提案機会の拡大が挙げられる。「オンライン会議システム並みの低遅延を求めるお客さまにも、ニーズに合わせたご提案ができるようになりました」(平山氏)。
もうひとつは応用の拡大だ。「オンラインで株主総会を開催したいという新規のお客さまが超低遅延ライブを採用してくださいました。実際の会場とオンラインとの間に時差がほとんどないことがご採用の大きな理由と考えています」と平山氏は述べている。
なお、直伝が「超低遅延ライブ」を2021年12月にスタートしてから本稿時点で9カ月ほどが経つが、トラブルは皆無だという。
今後はコミュニケーションを大切にする就職説明会などのライブ配信企画にも超低遅延ライブの応用を広げていくことを考えていて、業界に詳しいパートナー企業の協力も得ながら取り組んでいく計画である。
最後に平山氏は、「Smart vLiveのおかげで超低遅延ライブを新たにサービスすることができました。お客さまとの企画や配信の運用などに注力できるのも、NTTコミュニケーションズがSmart vLiveという先進的なテクノロジーを安定的に提供してくれているおかげと思っています。また、当社のような小さな会社にも真摯に対応してくださることにも感謝しています」と述べている。
直伝では、ライブ配信システムGo Stream(通常ライブおよび低遅延ライブ)のほかに、収録済み映像を疑似的なライブとして配信する「GIJI(疑似)ライブ配信」、配信・収録用のスタジオ「ジキスタ!」や「ジキスタ!2」を運営するなどサービスの拡充を続けており、得意とする証券業界を中心にビジネスの拡大を図っていく考えだ。
[*]
HLS(HTTP Live Streaming):アップルが開発したストリーミング・プロトコル。
WebRTC(Web Real-Time Communication):ブラウザー上などでリアルタイム通信を実現するプロジェクトおよび規格。
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株式会社直伝
事業概要
ライブ配信サービス「Go Stream」の提供、動画コンテンツ制作、動画ホスティング、スタジオ運営などの事業を展開する。金融業界に多くの実績を持つ。
URL
https://www.jikiden.co.jp/
(PDF形式/416 KB)
(掲載内容は2022年9月現在のものです)
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