株式会社エフエム仙台
わずか数秒でも先に地震発生がわかれば
リスナーに的確な情報発信ができる
緊急地震速報配信サービス
![jirei_img_01 株式会社エフエム仙台様の社内写真](/content/nttcom/hq/jp/business/services/application/risk_management/jishinsokuho/case/case03_1/_jcr_content/image01.img.png/1457581130221.png)
課題
宮城県内に約240万リスナーを持つラジオ局に求められていた、
より早く、正確な災害報道
対策
放送機材に緊急地震速報が送出できる機能を組み込み、
震度5以上の地震をリスナーに発信する
効果
稼働から6日後に緊急地震速報の放送。
リスナーから寄せられた反応により有効性を確信
株式会社エフエム仙台様
常務取締役
五十嵐 琢也 氏(当時)
株式会社エフエム仙台様
専務取締役
今野 禎市郎 氏(当時)
株式会社エフエム仙台様
放送部 情報・防災担当部長
高橋 英彦 氏(当時)
課題
宮城・仙台らしさの「伊達」と「デート」を重ねた“Date fm”の愛称で親しまれるエフエム仙台は、宮城県全域(および隣接する県)に新しい情報を発信する地域密着型のFMステーションである。
「だいたい県内約240万人、周辺500万人くらいが“Date fm”の聴取エリアの人口ととらえています」と語るのは同局 常務取締役 五十嵐琢也氏(当時) だ。これら広範なエリアをカバーする同局に対して、ここ最近、リスナーからの災害報道に対する要求が高まってきているという。
過去に1978年の宮城県沖地震、古くは三陸大津波などの大災害を経験している宮城県民の防災・減災に対する関心、意識はきわめて高い。それが最近、国内外で相次ぐ大地震の報道を受けて、防災・減災に役立つ情報の提供に加え、より正確でスピード性のある災害報道が求められるようになってきている。
こうしたリスナーの要求を受けて同局では、かねてより毎週日曜の防災番組や防災強化月間の特別番組、防災スポットCMの放送、Webサイトでの防災ワンポイント情報の発信、地震防災ハンドブックの配布など、さまざまな手段で防災情報、減災情報の発信を行っている。
また、今年で3年目になるユニークなイベントも開催している。同局 専務取締役 今野禎市郎氏(当時) は「災害時に必要な非常食について、アイディアと工夫をこらした、おいしいレシピを募集する“サバ・メシ*コンテスト”を毎年開催しています。このイベントは大変評価が高く、先般、日本イベント協会のイベント大賞を受賞しました」と目を細める。
さらに県内約16,000人を数える外国籍の住民に対してのアナウンスを実施するなど、防災・減災情報の周知徹底に向けた意欲的な取り組みを行っている。同局 放送部 情報・防災担当部長 高橋英彦氏(当時)は「英語、中国語、韓国語など、全15タイプの地震啓蒙スポットを6月より毎日放送中です。また2年ほど前からWebサイトのポッドキャストでも、地震の10か条を多言語で配信しています。こうした取り組みは全国的にもめずらしいそうです」と語る。
しかし一方では、正確でスピード性のある災害報道というニーズへの対応に課題を残していた。「これまでは気象協会と放送用のラインを結び、地震警報の情報をリモートで録音してもらい、その録音を割り込みで放送していました。かつては地震発生から10分程度放送が遅れることも許容の範囲でしたが、最近はそれでは遅いといった声がリスナーから上がっています。テレビが早く情報発信できて、ラジオにできないのはなぜだということになるのです」(五十嵐氏(当時) )。
![image_sendai_02 株式会社エフエム仙台様の社内写真](/content/nttcom/hq/jp/business/services/application/risk_management/jishinsokuho/case/case03_1/_jcr_content/par03/image.img.jpg/1456243726306.jpg)
対策
地震防災・減災の有効策として気象庁が発表している緊急地震速報が注目を集める以前から、エフエム仙台では迅速かつ正確な災害報道の方法を模索していた。その取り組みを担当していた五十嵐氏(当時) は緊急地震速報について「以前から注目していましたが、精度や発表方法などの検討材料が多く、準備期間を含めると、すぐに導入するのが難しいというのが本音でした」と語る。
しかし確実に放送業界は緊急地震速報の提供へと動きを早めていく。2007年の春に首都圏ラジオ局で緊急地震速報の導入に向けて機材開発を開始。そして同年12月よりNHKが、2008年4月から東京をはじめいくつかの民放局が緊急地震速報の提供を開始し、放送業界で急速に緊急地震速報の導入が進んでいった。
そのような動きがあるなかで、「4月に放送機材の更新があった際に、今後の導入のことも考えて緊急地震速報が送出できる機能を組み込みました。あらかじめスイッチを押せば緊急地震速報を放送できる準備は済んでいたのです」と語る。残る問題は導入の時期だった。
1978年6月12日に起きた宮城県沖地震で得た教訓を活かすため、宮城県のNHK、民放ラジオ局は“みやぎラジオプロジェクト”を毎年6月12日前後に開催。各局で防災番組を放送している。ちょうど30年目を迎える2008年は6月8日の開催が決定していた。「6月8日の放送に合わせて緊急地震速報の提供を開始する。PRも含めてその方がいいと判断して決定しました」(五十嵐氏(当時) )。
これまでいろいろなメーカーの製品を検討していた五十嵐氏(当時)
が、導入に踏み切れなかった理由の1つがコストだった。条件を満たすメーカーの機器もあったが、NTTコミュニケーションズによる接続性の確認を終えていない状況だったため、すでに接続性の確認を終えた。さまざまなタイプの機器から選択する方向に切り替え、緊急地震速報の導入を図ることにした。
時期は5月初旬、残された時間はわずか1カ月だった。
NTTコミュニケーションズの緊急地震速報配信サービスの特長の1つが、マルチベンダーの選べる専用受信端末である。シンプルなソフトウェアタイプ、ハードウェアタイプから、さまざまな機器を制御できる多様な専用タイプまで、ユーザーの用途によって選択できるようになっている。
「NTTコミュニケーションズが接続性の確認を行っているということは、しっかりとテストや検証を重ねられたものですから安心できます。すでに私どもの放送機材には緊急地震速報が送出できる機能が組み込んであるため、すっきりとシンプルな機器を選ぶことでコストを抑え、イニシャルコストだけでなく、月々のランニングコストも抑えることにこだわりました」と五十嵐氏(当時)
は力説する。
五十嵐氏(当時)のもう1つのこだわりは、震度5弱以上で警報が出るしくみだった。気象庁が提供する緊急地震速報には、精度の高い内容で機器制御などに適した高度利用者向けと、不特定多数への配信に適した一般向けがある。NTTコミュニケーションズの緊急地震速報配信サービスは高度利用者向けを採用しているが、この点も高く評価されたようだ。
「一般向けのサービスは基本的に震度5弱という閾値で、気象庁が演算して警報を出しています。ところが震度5弱以上の地震が予測された場合、震度5弱以上の強い揺れが推定される地域に加えて、震度4以上の揺れが見込まれる地域名も発表されるため、あまりにも警報が出すぎてしまう懸念がありました。一方で高度利用者向けのサービスは警報ではなく予報扱いになり、最大予測震度3以上、またはマグニチュード3.5以上で出てくるしくみになっています。ここで出てくる震度5弱以上の予報のみを放送に流せるよう、高度利用者向けのサービスを一般向けのサービスと同等の機能にカスタマイズして使うことにしました」(五十嵐氏(当時))。
![image_sendai_01 株式会社エフエム仙台様の導入構成図](/content/nttcom/hq/jp/business/services/application/risk_management/jishinsokuho/case/case03_1/_jcr_content/par03/image_0.img.gif/1456243726857.gif)
効果
エフエム仙台の緊急地震速報配信サービスは、稼働からわずか6日後の6月14日に作動した。「土曜の朝の生放送中の出来事でした。その週はレーティング期間(聴取率を調査する期間。特別番組などが多くなる)で特別コーナーを放送していましたが、ちょうど終わりかけのところにドン!と速報が割り込んでの放送となりました。今回は震源が近かったため、警報音が5秒くらい鳴り、アナウンスが始まったと同時に揺れ始めました」と、五十嵐氏(当時)は初めて同局で緊急地震速報が放送された状況を振り返る。
今回の地震発生時に外出中の今野氏(当時)は、ある光景を目の当たりにしてラジオによる緊急地震速報の有効性を確信したという。「緊急地震速報は直下型地震に対しては無力といわれていますが、私はそうは思いません。地震が起きたとき私はバスに乗っていましたが、向かいにハザードランプをつけた車が止まり、運転者が降りて携帯電話で話していた。つまり速報を聞いて、その運転者は適切な行動をとっていたのです。たとえ速報が揺れた後に出たとしても、すぐに車を止めて自宅や会社に電話する。地震から時間がたつと電話がつながりにくくなりますが、揺れた直後ならまだつながります。外出している人にとっては非常に有効であると私は思っています」(今野氏(当時))。
また今回の緊急地震速報の放送に対して、リスナーから寄せられた反応を高橋氏(当時)がいくつか紹介してくれた。「リスナーのみなさんの反応に関しては翌週からの生番組に寄せられています。速報を聞いて書類の棚から離れたので助かった。運転中、速報のおかげで落ち着いた対応ができた。運転中で地震には気づかなかったが、速報を聞いて車を止めて家族に電話した。自分の周りの車両が気づいているのかが疑問に思った。などです」。ここから見えてきた課題を高橋氏(当時)はこう続けた。「ドライバー向けの周知徹底が今後の課題の1つだと思いました。現在は家庭内の対応、屋外・運転中の対応という2つのバージョンで緊急地震速報の告知スポットを流していますが、その屋外・運転中の対応を多めに流すことを検討しています」。
このように感謝の声という大きな成果が得られたと同時に、新たな課題も見えてきた。「大きな課題は速報を流した後の対応です。リスナーが求める情報を提供できるような体制をつくり、どのような事後対応をするか。その部分を強化していくことが大事だと思いました。また、アナウンス前の5秒の警報音の長さについても検討の余地がありそうです」(五十嵐氏(当時))。
続けて五十嵐氏(当時)は今回の緊急地震速報配信サービスについて、こう評価した。「緊急地震速報というのは事前の部分に加えて、地震が起きているときに適切なコメントを流す意味でも重要です。起きることを予測して話し始めているのだから、起きているときにラジオを聞いているリスナーに適切な指示が出せる。これは凄く有効だと思います」。
最後に、今後、NTTコミュニケーションズのサービスに期待することを訊ねてみた。「まず速報の精度を上げること。次に地震速報と津波速報がかみ合ってくるといい。地震速報と津波速報が同時に入ってきて、分離して放送できるサービスができることに期待しています。現状はテレビが津波速報を報道しているときに、まだラジオ局に情報が届いていないこともある。その部分の時間差をなんとか解消できないかと思っています」(五十嵐氏(当時))。
緊急地震速報の活用で、エフエム仙台の防災・減災の取り組みはますます加速していく。
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