三井不動産株式会社
大きな揺れがくるまでの数秒の猶予を使った
的確な初動対応でお客さまの安全を確保
緊急地震速報配信サービス
課題
大型商業施設を訪れるお客さまに安心して買物を
楽しんでもらうためには防災・減災対策の徹底が大前提となる
対策
震度5以上でエレベーター停止・全館一斉放送。
「LaLaテラス南千住」をモデルケースに全国の商業施設へ水平展開
効果
初動対応の精度向上に向けて課題はお客さまへの周知徹底。
そして全国の商業施設への導入へ
三井不動産商業マネジメント株式会社
施設管理部 品質管理・環境推進課 課長代理
安東 茂 氏
LaLaテラス南千住
オペレーションセンター マネージャー
小原 昭彦 氏 (当時)
課題
さまざまな価値を持つ複数のテナントを集約し、新しい人の流れをつくり、ときには新たな街を生み出すこともある商業施設。
その先駆けとなる施設展開を図ってきたのが三井不動産だ。
買う、見る、遊ぶをひとつの空間に凝縮した「ららぽーと」を中心とする同社の商業施設は、現在日本全国に50施設以上にまで広がり、日々多くの来館者で賑わいをみせている。これらの施設運営を一手に担うのが「訪れたくなる空間と心豊かになれる時間」のマネジメントをモットーとする、三井不動産商業マネジメント株式会社である。同社では時代特性や地域のニーズに即した高品質な施設運営に取り組んでいるが、その根底にあるのは安全・安心な施設づくりだという。「施設の安全・安心を最優先するのが弊社の理念です。お客さまに愛され続ける商業施設づくりのために、安全・安心をきちんと継続する運営を心がけています」と語るのは三井不動産商業マネジメント株式会社 施設管理部 品質管理・環境推進課の安東 茂 氏だ。
たしかに大人から子どもまで不特定多数の人々が訪れる商業施設において、安心して利用できる安全性の徹底は重要になってくる。三井不動産では商業施設内に緊急時の拠点となるオペレーションセンターや防災センター等を設置。さらに全施設共有の防災マニュアルを策定し、社員はじめ関係者で役割分担を決めて定期的な避難訓練を行っている。「消防法では年2回の避難訓練が義務付けられていますが、ほぼすべての施設がそれより多い頻度で訓練を行っています。こうした訓練の繰り返しに加え、お客さま用、従業員用の防災備品の準備などにも配慮しています。」(安東氏)こうした人的対応に加えて防災放送設備も稼働。各施設を網羅するスピーカーから有事の際には緊急アナウンスが放送されるようになっている。
このように確かな安全が前提となって成立する商業施設において、防災・減災への取り組みにやりすぎはない。気象庁が緊急地震速報を提供するというニュースを聞いて、三井不動産は他の商業施設の先陣を切って、ひとつの大きな決断をする。
対策
2007年10月からの緊急地震速報の提供を受けて、11月に開催されたショッピングセンター協会の会合で「緊急地震速報の利活用のガイドライン」が発表された。「ガイドラインなので強制ではないのですが、お客さまの安全のためにはすぐに導入すべきだと考えました。地震が起きた後ではなく、たとえ数秒でも起きる前にわかれば、もっとできることがある。厨房の火を消す、お客さまの安全を確保するなど、行動の選択肢が広がります。安全・安心な施設の実現に向けて、サービス導入は非常に有効であると言えます。」(安東氏)
こうして多くの商業施設に先駆けて、三井不動産は緊急地震速報の導入を決意した。サービスの選択において、まず重視したのはサービスの品質。「サービスの安定性といった品質面、システム全体を統括できる実績面を考慮してNTTコミュニケーションズのサービスを選びました。また、全国の商業施設へ順次導入していく際に必要となる、現地の施設担当者、ゼネコン、配線業者、エレベーター業者などとの作業調整から、工事のスケジュールや見積りの管理までを先導するシステム構築体制を、営業担当者の方を中心に調整していただいた点も重要な選択理由でした。」(安東氏)
エレベーターなどのシステムとの連動が可能な「高度利用者向け」緊急地震速報を配信し、効率的で遅延の少ないIPv6マルチキャスト配信の採用で速報性を向上していること。常時3段階の死活監視(ヘルスチェック)を行い、エラーが出た場合端末管理者に対しメールにて通知する体制があること。こうしたサービス品質の高さがNTTコミュニケーションズの強みといえる。さらにICTリューションパートナーとして、全国に展開する商業施設の各設備業者と調整を図り、既存館内設備とのシステム連動を実現させたことも評価が高かったようだ。
2008年6月、三井不動産では東京都荒川区の「LaLaテラス南千住」にNTTコミュニケーションズの「緊急地震速報配信サービス」を導入。震度5弱以上の揺れを予測したときに館内放送が流れ、全エレベーターが最寄りの階で停止して扉が開くシステムが稼動を始めた。
LaLaテラス南千住 オペレーションセンターの小原 昭彦 氏(当時)は「このようなシステムで事前に揺れを予測した段階で扉を開くことで、エレベーターにお客さまが閉じ込められるリスクを回避できる。この初動対応の差は大きいです」と現場の視点から初動対応の重要性を説明する。この「LaLaテラス南千住」をモデルケースとして、現在では全国20数拠点の商業施設に「緊急地震速報配信サービス」の導入が完了している。
効果
導入後、震度5弱以上の緊急地震速報を受け館内設備(エレベーター・館内放送)が作動したケースは1件のみ。幸いなことに開店前の早朝だったため初動対応の必要はなかったが、今後、営業時間中に大きな地震が来ることを想定した準備は継続的に進めていく考えだ。 「より導入の効果を出すために、今後は施設を訪れるお客さまに対して緊急地震速報配信サービスの導入を周知していく必要があります。作動はしなくても、こういうサービスが導入されていることがわかっていれば、お客さまに大きな安心感が生まれます。作動時も慌てることなく対応できるようになるはずです」と安東氏は周知の重要性を感じている。
「現在、LaLaテラス南千住では、館内入口やエレベーター内にステッカーを貼って周知しています。併せて館内放送を使った告知もしているのですが、まだ充分に認知されていない状況です。今後、他の周知方法も検討していく必要があると考えています。」(小原氏/当時) すでに社員、テナントの従業員という来館者を迎える側の準備はできており、緊急地震速報配信サービスの作動を想定した訓練も重ねている。その初動対応の精度を高めるために、今後さまざまな視点から来館者への周知を行い、認知を高めていく方針だ。
また、引き続き全国の商業施設へのサービス導入を目標に、水平展開も継続していく。「システム導入にあたってはそれぞれの施設でクリアすべき課題はありますが、お客さまの安全・安心の担保のために全国の商業施設への導入を展開していきたいと思っています。また新規導入に併せて各施設でのフロア増床、放送エリアの拡大に伴う増設も行っていく意向です。今後もNTTコミュニケーションズには、こうしたシステム構築でのお手伝いはもちろん、導入の効果を高める新たな提案にも期待しています。」(安東氏)
今後も三井不動産および三井不動産商業マネジメントは、都市や地域の人々に愛され続けるために、強い信念を持って安全・安心な施設づくり、運営に取り組んでいく。