クラウド時代の社内ネットワークの設計と構築方法
従来、業務システムを社内に構築するには「オンプレミス」が一般的でした。しかし、グループウェアやWebメール、オンラインストレージなど、業務システムをクラウドへ移行することが増えています。こうした中、社内ネットワークの構築を検討する際には、LANだけでなく、クラウドにアクセスするためのインターネット回線の重要性が高まっています。
遅い・重い・不安定など、ネットワーク上のパフォーマンスの悪化を放置すれば、企業の収益や業績に影響することも考えられます。そこで、社内ネットワークを構築する上でも重要なインターネット回線についてご紹介します。
クラウドがネットワーク構築に与える課題
業務システムをパブリッククラウドに移行することで、インターネットを常に使うようになり、トラフィックが急増して帯域を圧迫してしまうようになることが課題です。また、閉域網で使われるオンプレミスの社内ネットワークと異なり、インターネット経由で接続することが多くなるためセキュリティも課題となります。テレワークなどで社外からクラウドにアクセスするときのセキュリティリスクへの考慮が必要となります。VPNやIP制限などのネットワーク環境の整備はもちろん、従業員が使う端末のセキュリティ対策、ネットワークにアクセスするときに避けたほうがよい行動をルール化し周知徹底することなどが求められます。
業務に支障が出てしまった失敗例
クラウド化を進める前にネットワークの設計を見直して置かなかったために、通信速度が悪化してしまうことは珍しくありません。毎日使うクラウドサービスでアップロード、ダウンロードを多くの従業員が同時に繰り返すことになれば、その影響はかなり大きなものになります。通信が遅くて不安定になれば業務効率は落ちますし、ストレスもかかります。時間帯によってインターネットが使い物にならなくなってしまうようでは、円滑な業務の進行ができなくなります。
オンプレミスの課題
かつて業務システムは、企業が管理する施設内に自社でサーバーなどの機器を設置して運用する「オンプレミス」が一般的でした。しかし、オンプレミスは、サーバーの調達といった機器の初期導入コストが高いばかりでなく、定期的に発生する維持管理のコストも課題でした。さらに、インフラの環境を拡張する際には、新たな機器の購入や、LANの再設計、維持管理コストのさらなる増加、各部署への調整など、多くの手間と時間がかかり、やはりコストが必要となります。
社内ネットワークはクラウド中心のネットワークへ
このような、従来のオンプレミスが抱える課題は、パブリッククラウドを活用することで解決できます。特に近年では、Microsoftの「Office 365」やGoogleの「G Suite」といったグループウェアをはじめ、Webメールやオンラインストレージなど、業務システムのパブリッククラウド化が進んでいます。
クラウドサービスでは、サーバーなどの機器の調達やインフラの維持管理を意識する必要はありません。必要な分の使用料金を支払えばサービスを利用できるため、運用コストの低減や効率化が期待できます。また、サーバーのリソースもオンデマンドで拡張が可能であるため、業務の規模に合わせた拡大もスムーズに行えます。
クラウド化に伴うネットワーク構築の注意点
業務システムをパブリッククラウドに移行して利用するには、インターネットへの接続が必須になります。そのため、業務を滞りなく進めるためにはインターネット回線の安定性が極めて重要になります。
このような背景から、インターネット回線の検討には以下のポイントに注意する必要があります。
トラフィックの増大
パブリッククラウドを利用することで、インターネットのトラフィック(情報量)が増大することが予想されます。トラフィックの増大に対して、回線の帯域(通信容量)が十分でない場合は、通信速度が低下することも考えられます。
また、一般的にインターネット回線は、複数の利用者で限られた回線を共有するベストエフォート型となっています。個人のインターネット利用によって回線が混雑すれば、法人が業務システムで使うトラフィックが圧迫される可能性もあります。日常的に利用する業務システムが「遅くて使いものにならない」となれば、業務効率が低下し、最悪の場合には業績にも影響しかねません。そのため、安定した通信環境の確保は必須といえるでしょう。
セキュリティの強化
オンプレミスの社内ネットワークでは、閉じたネットワーク内で管理データや顧客情報を取り扱うことで、ある程度のセキュアな環境を構築することができました。しかし、クラウドサービスはインターネット経由で業務システムを扱うため、セキュアな接続環境を考慮する必要があります。
特に中小企業では、セキュリティ専門の担当者を置いていないことも多く、限られた情シス(情報システム部門)担当者で、社内のシステム環境を管理しなくてはなりません。サイバー攻撃がますます高度化している一方で、個人情報などの守るべき対象も拡大しています。セキュリティもクラウドサービスを利用することで、情シス担当者の負担の軽減にもつながります。
クラウド化の成功は通信回線の選択にかかっている
これまで述べてきたように、オンプレミスからクラウドへ、社内ネットワークの移行を成功させるためには、どのようなインターネット回線を選ぶかにかかっています。具体的には、以下のポイントが重要となってきます。
通信品質が安定しているか
ビデオオンデマンドサービスの普及により個人のインターネットトラフィックが増えています。インターネット回線の中には、同じ回線の中を流れている個人向けトラフィックと法人向けトラフィックを論理的に分離することによって、個人向けインターネット通信の影響を避けることが可能なサービスも登場しています。パブリッククラウドを利用するにあたり、こういったサービスであれば通信品質が安定します。
セキュリティもセットで提供されているか
インターネット回線の中には、クラウド型の統合脅威管理(UTM)サービスがセットとなっている回線サービスがあります。こういったサービスを利用すれば、セキュリティ対策の負担も軽減できるでしょう。UTMはファイアウォール、IDS(不正侵入検知システム)、IPS(不正侵入防御システム)、URLフィルタリングなど、複数の異なるセキュリティ機能を統合しており、さまざまなネットワーク上の脅威に対応できます。
クラウド化とともに検討したい次世代通信方式「IPoE」
オンプレミスからクラウドへ、社内ネットワークがインターネット接続を前提としたものへと変化しています。その中で注目が高まっているのが、次世代のインターネット接続環境である「IPoE」方式です。
IPoEとは
IPoE方式は、従来の接続方式である「PPPoE方式」とは異なる通信設備を経由します。IPoE方式は、PPPoE方式より大容量化した設備を利用しており、トラフィックの増大に対して混雑しにくいネットワーク構成となっています。いわば、利用者が増えて混雑している細い道路(PPPoE方式)とは別に、道幅が広くて空いている新しい道路(IPoE方式)を通すようなものです。
OCNが提供する「OCN光 IPoEサービス」は、IPv6 IPoE方式によるインターネット接続サービスです。個人向けトラフィックと論理的に分離したサービスです。また、クラウド型セキュリティ機能をつけた「OCN光 IPoE vUTMセット」も提供していますので、より安心で快適なインターネット環境を実現しています。
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