帯域確保型IPネットワークが、SaaS型ビジネス拡大に貢献
協栄産業株式会社では近年、自社開発した業務アプリケーションをネットワーク経由でサービスとして提供する、クラウドコンピューティングをベースとしたITソリューション事業を拡大。その1つに、タクシー事業者に向けた労務管理や輸送管理、請求業務などの機能をSaaS型で提供する、タクシー業トータルシステム「KTS for SaaS」を展開している。
「リリース当初はパッケージソフトとして販売していたもので、2006年から現在のようなSaaS型のサービスとして展開しています。弊社のSI事業は近年、このタクシーシステムをはじめ、サービス提供型のビジネスソリューションに注力しています」。こう語るのは、ソリューション第一事業部長 の杉内永樹氏である。
この「KTS for SaaS」においては、顧客企業とデータセンターをつなぐネットワークに、ベストエフォート型の回線を利用していたが、利用顧客数の増加に伴い、ITインフラの見直しが課題となっていた。ソリューション第一事業部の久松亮介氏は当時を振り返り、「ユーザー数の増加に伴ってネットワークの帯域が不足し、不安定な兆候が表れていました」と語る。とりわけ、給与計算業務で繁忙になる毎月20日前後と、夜勤明けの乗務員が事務所に戻り、メモリーカードに蓄積された運行データを取り込む朝方の時間帯にアクセスが集中し、トラフィックが急増する。「こうした局面において、回線への多大な負荷がかかり、つながりにくくなったり、レスポンスの遅延が見受けられたのです」(久松氏)
このような喫緊の課題に加え、今後の顧客企業拡大を見据えたサービス品質と可用性の向上を図るべく、システム運用基盤および回線の見直しを検討することになった。
協栄産業ではまず、2012年に実施した「KTS for SaaS」の機能強化を機に、ハードウェアを冗長化構成にし、拡張性の高いデータセンターへ移設することを決定。他のSaaS型サービスを支える各システムも、本社オフィスからのリモートでの操作性や運用管理性を考慮して、新しいデータセンターに集約することにした。同時にネットワークについても、帯域確保型のアクセスサービスを導入するための検討を開始した。
ソリューション第一事業部の青柳治美氏は、「選定にあたっては数社に声をかけており、この時に一部帯域確保型の『ビジネスOCN バーストイーサアクセス(1Gbpsプラン)』を提案いただいたのです」と振り返る。
本サービスは、企業向けOCNの高品質なネットワークと高いコストパフォーマンスを併せ持つインターネット接続サービスである。ネットワーク混雑時にも、物理インターフェースの10%分に相当する上り100Mbpsの帯域が常に確保されており、一時的なデータ量増大に対しては、最大1Gbpsまでの広帯域が利用可能なサービスだ。
「100Mbpsの帯域が確保されていることが、最も魅力的でした。弊社のサービスを利用いただいているお客さまの業務に支障がない環境を提供するためには、十二分な帯域を確保する必要があります。『ビジネスOCN バーストイーサアクセス(1Gbpsプラン)』を導入すれば、従来回線の課題が払しょくできると考えました」(久松氏)
協栄産業はこの時期、自社のSaaS型サービスを支えるICTインフラ全般の可用性向上策を模索していたこともあり、 OCNバックボーンの完全二重化構成や、24時間365日の監視体制で運用している点も評価された。「回線の品質や信頼性が高いにもかかわらず、費用的にはかなりリーズナブルであることも、選定理由の1つです」(青柳氏)
回線契約から開通までの準備期間については、「試験運用などのスケジュールがひっ迫しており、かなり無理をお願いしたにもかかわらず、迅速な対応とサポートを受けることができました」(久松氏)「KTS for SaaS」システムは、2013年2月から段階的にデータセンターへの移設を進めている。現在は、一部の顧客企業が新しい回線環境で運用しており、今後ネットワーク稼動状況を慎重に検証・把握しながら、同年6月よりすべての顧客企業への切り替えを完了する予定だ。
「あるお客さまとの間で試験運用を行ったところ、“明らかに速くなった”という評価をいただきました。『KTS for SaaS』は、センター側のアプリケーションと画面イメージを転送するためデータ容量が大きく、従来の回線環境ではネットワークに負荷がかかりレスポンスの遅延がしばしばありました。しかし、この問題を解決したことで、まずは順調に運用がスタートできたと思います」(青柳氏)
ホスティングサービスによるeラーニングシステム事業などを担当する、ソリューション第一事業部の箱田伸也氏は、「今回のネットワーク増強によって、今後は通信品質の心配をすることなく、お客さまの新規獲得に注力できます」と話す。この営業活動上のメリットについては、「100Mbpsの確保帯域と最大1Gbpsのバースト帯域により十分な帯域が確保できましたから、既存サービスの顧客数が増加しても、ストレスなく安心して活用いただけます。さらには、SaaS型の新しいサービスを躊躇なく追加していけるというメリットにもつながっていくのではないでしょうか」(青柳氏)
『ビジネスOCN バーストイーサアクセス(1Gbpsプラン)』は、協栄産業が推進するサービス提供型ソリューションの接続環境向上にとどまらず、ビジネスを支援するという面でも、同社に大きな価値をもたらしているのである。 「今後は、サービス提供型ビジネスのシェア拡大のために、事業の成長に合わせて通信のスケーラビリティを担保できる、柔軟なサービスメニューの拡充を希望しています」(杉内氏)