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社内基盤や業務効率化に向けてクラウドへ移行。拠点構築でのデータ管理!?
経済産業省が発表した「2025年の崖」によれば、多くの企業が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」への対応を求められています。これまで、Webやアプリ関連など、いわゆる「サービス系」と呼ばれるシステムは、着々とクラウド化が進められてきました。しかし、基幹業務や勘定系の業務を司る「基幹系」については、クラウド化を見送ってきた企業も少なくありません。その理由としては、セキュリティ・可用性への不安や、移行コストの大きさなどが挙げられます。しかし、キャパシティプランニングの難しさや、運用保守コスト、BCP/DRのリスクを考えると、クラウド化は必須といえるかもしれません。ここでは、基幹システムのクラウド移行におけるトレンドやメリット、移行の流れなどを解説します。
1. クラウド移行のトレンド
1. クラウド移行のトレンド
経済産業省による「2025年の崖問題」※1で示されたように、DXへの対応はすでに業界・業態を超えた課題として、広く認知されています。ビジネスにテクノロジーの力が必須となった今、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応に迫られる企業は少なくありません。2025年の崖問題の克服を目指し、これまで手付かずだったシステムの刷新が必要だといえるでしょう。
経済損失は年間最大12兆円!「2025年の崖」とは?
経済産業省が平成30年9月7日に発表したレポートでは、レガシーシステムが抱える諸問題を解決できない場合、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性が示唆されています。また、人手不足や大手ベンダーのサポート終了といった問題も指摘されており、抜本的な対策の必要性が伺える内容です。
● 2025年の崖問題のポイント
- 2025年には、21年以上稼働し続けている基幹系システムが6割を超え、老朽化が進む
- IT人材不足が一層深刻化(2025年時点で約43万人)
- 世界最大のシェアを誇る基幹系パッケージが2025年にサポート終了を迎える
- 保守運用人材の減少(レガシーシステム用のプログラミング言語に対応できる人材の供給減)
冒頭でも述べたように、基幹系・勘定系システムはその性質上、クラウド化が推進されにくい分野です。しかし、20205年の崖で示されている問題を吟味すれば、早急な対応が必要なことは明らかではないでしょう。ちなみに、現時点においても、レガシーシステムがDXの足かせと感じている企業が全体の7割を超えています。現存するレガシーシステムの多くが基幹系・勘定系システムであることを考えれば、クラウド移行は日本企業が抱える共通課題といえるかもしれません。
基幹システムも徐々にクラウド移行
このような状況の中、基幹系・勘定系システムも徐々にクラウドシフトの動きが見られます。ちなみに、20205年の崖以外でクラウド化が進む理由としては、次の3つが有力でしょう。
● クラウド移行が進む理由
- セキュリティへの不安が払しょくされつつあること
- クラウドサービス市場の成熟によるサービス価格下落
- クラウドエンジニアという概念が産まれ、人材育成が進んでいること
- スケーラビリティやキャパシティプランニングが容易で、TCO削減効果が見込める
一方、金融機関では、安全基準への適合などの関係から、基幹系システムのクラウド化に対して慎重な態度を示しています。しかし、生保、損保、証券、クレジット系の事業者において基幹系システムへのクラウド導入が徐々に進んでいることや、メガバンクのひとつが「クラウドファースト」を宣言するなど、潮流は確実にクラウド化へと傾いています。したがって、金融機関でも徐々に基幹系・勘定系システムのクラウド化が進むのは確実といえるでしょう。
ネットワークのクラウド化で基幹システム強化も
基幹系・勘定系システムの本体は既存のままであっても、周辺システム・サービスとの連携がスムーズに進めば、「負の遺産化」は防げます。ネットワークのクラウド化を促進し、クラウド・オンプレミス(基幹システム)をシームレスに接続して、システム全体の可用性・柔軟性を確保できるのです。
● ネットワークのクラウド化
- SD-WAN(ハイブリッドWAN)の活用による拠点間通信のクラウド化
- クラウドHUBの活用
特に注目すべきは「クラウドHUB」の活用です。クラウドHUBは、複数のクラウドシステム・サービスを相互接続し、それぞれのネットワーク帯域、セキュリティ設定などを一元管理できる仕組みです。また、内部ネットワークによるクラウド間の相互接続、データセンターとの専用線による接続が可能なサービスもあります。クラウド移行で発生しがちな「運用作業の高度化・複雑化」や「セキュリティレベルのばらつき」といった課題を解決できるツールとして有望です。
2. 基幹システムをクラウド移行するメリット
基幹システムのクラウド移行では、主にコストメリットが注目されがちです。しかし、実際には拠点構築やデータ管理・共有の容易さから、事業に多くのメリットをもたらす施策です。
運用保守コストの低減
2025年の崖問題でも指摘されているように、レガシーシステムは保守運用が属人的になりがちで、人件費も嵩みます。クラウド移行が進めば、汎用的な知識・スキルによる保守運用へと移行が進み、スキル伝承や人材調達がスムーズになります。また、一説にはTCOのうち6~7割を占めると言われる保守運用コストの低減により、TCO全体の縮小という副次的効果も期待できます。
人材配置の最適化
レガシーシステムの保守運用は、ハードウェア・ネットワーク・アプリケーションの各分野で多くのIT人材が必要です。つまり「IT人材資源の浪費」が起こりがちであり、クラウド移行によって人材配置の最適化が進むと予想されます。2025年には43万人が不足すると言われるIT人材だからこそ、クラウド移行による解放が必要なのです。
セキュリティリスクの低減
クラウドHUBのように閉域網を利用した接続サービスや、クラウドベンダーの継続的なセキュリティアップデートにより、レガシーシステムよりもセキュアで低コストな運用が可能になります。
BCP対策
クラウド移行によってバックアップ、スタンバイ系を容易に構築できるようになり、BCPが強化されることもメリットのひとつです。また、物理的な機器を保有しないため、水害や地震によるハードウェア資産の喪失リスクからも解放されます。
海外進出、事業拡大のスピードアップ
クラウドはスケーラビリティが容易で、システムの立上げスピードも早いことから、国境を跨いだ新規拠点の構築が短期間で行えます。社内のIT基盤を統合しやすく、情報共有の速度・制度が向上します。
3. 基幹システムのクラウド移行の流れ
最後に、基幹システムのクラウド移行の流れについて解説します。クラウド移行の方法論は企業・プロジェクトによって異なるため、正解は存在しません。そこで、一般的なクラウド移行の手順を紹介します。
クラウド移行の流れ
● クラウドシフトプランの作成
- クラウド移行対象の定義、選定(アプリケーション、データなど)
- レガシーシステムの依存関係、優先度、移行可能時期などを考慮したスケジュール作成
- クラウド移行コスト、予測効果から費用対効果を試算
- 移行プラン(クラウドシフトプラン)作成
● クラウド化を見据えた設計、再定義
- 既存アプリケーションのクラウド化設計
- クラウド連携の定義
- 保護、運用管理を再定義
● 基盤構築とアプリケーションの移行
- 認証基盤構築(再構築)
- アプリケーション更新
- 運用管理プロセスの刷新
● 効果測定
- クラウド移行後の効果測定(リードタイム、運用コストなど)
4. まとめ
この記事では、「2025年の崖」問題を中心に、基幹システムのクラウド移行について解説してきました。基幹システムは、長い運用基幹の中で密結合化し、クラウド化が難しくなっていることが珍しくありません。しかし、2025年の崖に代表される種々の問題を考えると、今後のクラウド化は必須と言える分野です。移行の準備期間や年々成熟するクラウドサービスとの連携を考え、できるだけ早い段階で移行を検討すべきでしょう。
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