オーケストレーションとは?特徴や種類、メリットについてわかりやすく解説
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オーケストレーションとは、複数のシステムを連携させ、ソフトウェアやサービスの構築・管理におけるタスクを自動化する仕組みのことです。この技術は、多様な業務や場面で活用されています。
特にセキュリティ対策では、オーケストレーションによる自動化と標準化が効果的です。例えば、複数のシステムにまたがる複雑な作業を一括で自動化することで、人的ミスを防ぎ、セキュリティの信頼性を高めることができます。
サイバー攻撃の脅威が増す昨今、セキュリティ強化を目的としたオーケストレーションの導入は大きく注目されています。
本記事では、オーケストレーションの概要や種類、さらにそのメリットや課題について、具体的な活用例を交えながらわかりやすく解説します。
目次
オーケストレーションとはどういう意味?
オーケストレーションとは、複数のシステムやサービスを連携させて動かし、複雑なタスクや業務の流れ(ワークフロー)を自動化する仕組みです。これにより、手作業で行っていた面倒な作業を減らし、作業の効率を大幅に向上させることができます。
「オーケストレーション」という言葉は、音楽の管弦楽団(オーケストラ)に由来しています。オーケストラでは、指揮者が演奏者たちをまとめ、全体として美しい音楽を奏でます。同じように、オーケストレーションでは、異なるシステムやサービスを一つにまとめ、調和を取りながら動作させる仕組みを作るのです。
オーケストレーションを活用することで、複雑なタスクを体系的に管理できます。大規模なフローの自動化が可能となり、システム運用の効率化やトラブルへの迅速な対応が期待できます。
オーケストレーションと自動化の違い
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オーケストレーションと自動化は似ている言葉ですが、その役割や範囲に違いがあります。
自動化は、単一のタスクをソフトウェアによって効率的に実行する仕組みです。たとえば、次のような作業が該当します:
- 毎日決まった時間にデータをバックアップする作業
- 顧客からの問い合わせメールを自動で振り分ける作業
一方、オーケストレーションは、複数のシステムやタスクが連携する全体のプロセスを統合し、自動化する仕組みです。これにより、個別のタスクだけでなく、全体の流れを効率化できます。具体的には以下のような作業が該当します:
- ソフトウェア開発: コードのビルド、テスト、デプロイ(配信)までの一連の流れを自動化。
- サーバー運用: 大規模サーバーの監視と、異常が起きた際の対応を統合的に管理。
- データ分析: データ収集から分析、レポート作成までの作業を一括で自動化。
自動化は単純なタスクを対象にするのに対し、オーケストレーションはそのタスクをつなぎ合わせて広範囲の業務フローを効率化する重要な技術です。セキュリティやシステム運用の分野で、オーケストレーションの導入は特に効果を発揮します。
オーケストレーションの活用例
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オーケストレーションの活用方法は多岐にわたります。以下はその一例です。
バックオフィス部門
バックオフィス部門では、定型業務や日常的なタスクの効率化にオーケストレーションが役立ちます。
例えば、人事異動や入退社に伴うアカウントの作成・削除や、アクセス権限の変更、メーリングリストの更新などを一括で処理できます。また、パスワード管理や仮想環境のセットアップといった業務も自動化可能です。
開発部門
開発部門では、ソフトウェアの開発からテスト、デプロイに至る一連のプロセスを効率化するためにオーケストレーションが活用されます。
例えば、コードのビルドやテストの自動化、トランザクションと呼ばれる一貫した複数の処理をまとめて実行する仕組みの構築が可能です。
セキュリティ対策部門
セキュリティ対策部門では、インシデントの監視、検知、対応を効率化するためにオーケストレーションが重要な役割を果たします。
セキュリティオーケストレーション(SOAR)を導入することで、インシデント発生時のログ取得や相関分析を自動化。担当者への通知や対応処理を迅速に実行可能です。
このように、オーケストレーションはバックオフィス、開発、セキュリティ対策といった多様な分野で、その特性を活かし幅広く活用されています。
オーケストレーションの種類
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代表的なオーケストレーションの種類として、以下の4つが挙げられます。
- アプリケーションオーケストレーション
- コンテナオーケストレーション
- セキュリティオーケストレーション
- クラウドオーケストレーション
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。
アプリケーションオーケストレーション
アプリケーションオーケストレーションは、複数のソフトウェアアプリケーションを統合・自動化し、一元的に管理する技術です。プロセスの自動化やデータのリアルタイム同期を可能にし、開発や運用の効率を大幅に向上させます。
特に、アプリ開発、データ分析、AIプロジェクトなど、多くの分野で重要な役割を果たします。統合ロジックをアプリから切り離してコンテナで管理するため、メッセージルーティングやセキュリティ機能が強化され、運用効率が向上します。
アプリケーションオーケストレーションを導入することで、より信頼性が高く柔軟性のある運用が可能になります。
コンテナオーケストレーション
コンテナオーケストレーションとは、コンテナの管理と調整を自動化する技術のことです。
コンテナとは、アプリケーションの動作環境を一つにまとめ、サーバー環境に依存せず一貫した動作を可能にする仕組みです。
複数のコンテナを運用する際には、配置やスケール調整、状態監視、ネットワーク設定など、多くの作業が発生し、管理が非常に煩雑になります。これらの課題を解決するのがコンテナオーケストレーションです。
コンテナオーケストレーションを活用することで、コンテナの配置、拡張、ネットワーク構築、監視を自動化でき、トラフィック増加への迅速な対応や運用負担の軽減が可能になります。
セキュリティオーケストレーション(SOAR)

セキュリティオーケストレーション(以下、SOAR)は、セキュリティ業務を自動化・効率化する技術です。インシデント発生時に脅威を検知し、自動で調査や対応を行うことで、迅速な対応とセキュリティ担当者の負担軽減を実現します。
SOARの中核となるのが「プレイブック」と呼ばれる標準化された対応手順書です。これを基にインシデント対応を一貫性のある形で自動化します。また、セキュリティ対策に活用できるデータ(脅威インテリジェンス)を取り入れることで、未知の脅威や潜在的リスクにも迅速かつ適切に対応できます。
一方で、SOARの導入には既存システムとの互換性や運用プロセスの見直しが必要であり、専門的な知識と経験が求められます。NTTコミュニケーションズでは、SOARの導入から運用までを包括的にサポートするサービスを提供しています。詳細については、専用ページをご覧ください。
クラウドオーケストレーション
クラウドオーケストレーションとは、クラウド環境におけるシステムやリソースの管理・運用を自動化し、効率化を図る技術です。複数のクラウドサービスやリソースを連携させ、システム全体を統合的に制御することで、運用負荷の軽減やコスト削減を実現します。
クラウドサービスの種類と特徴
-
IaaS (Infrastructure as a Service)
- 概要:サーバーやネットワークなどのインフラを提供
- 提供内容:仮想サーバー、ストレージ、ネットワーク
- サービス例:Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)
-
PaaS (Platform as a Service)
- 概要:アプリケーションの実行環境を提供
- 提供内容:OS、開発環境、データベース
- サービス例:Google App Engine、Heroku
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SaaS (Software as a Service)
- 概要:完成したソフトウェアを提供
- 提供内容:アプリケーション、データ管理、セキュリティ
- サービス例:Salesforce、Slack、Microsoft 365
オーケストレーションを活用するメリット
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オーケストレーションを活用することで、以下のようなメリットを享受できます。
- ヒューマンエラーの防止
- 従業員の負担軽減
- コストの削減
- セキュリティレベルの向上
それぞれ解説します。
ヒューマンエラーの防止
オーケストレーションを活用することで、人手による作業では避けられないミスを事前に防止できます。
例えば、複数のシステムをまたぐ作業や、多くの条件分岐を含む作業は、複雑でミスが起きやすくなります。反対に、単純作業が続くことで担当者の集中力が落ち、ミスが起きてしまう場合もあるでしょう。
こうした作業をオーケストレーションで自動化することで、エラーを未然に防ぎ、安定した運用が可能になります。
従業員の負担軽減
オーケストレーションによって単純作業や反復作業を自動化することで、従業員の負担を大幅に軽減できます。加えて、夜間や休日の監視作業を自動化できるため、従業員の労働時間も削減可能です。
これにより、従業員はより専門的なコア業務に集中できるようになります。さらに、作業の効率化により余裕が生まれ、ワークライフバランスの向上や従業員のモチベーション向上にもつながります。
コストの削減
オーケストレーションによってシステムの運用・管理業務を自動化することで、コスト削減が実現可能です。
具体的には、人件費を削減し、手作業によるミスを防ぐことで業務効率を向上させます。また、リソース使用を最適化することで、不要なサーバーやストレージの利用を抑え、運用コストの削減にもつながります。
特に、24時間稼働が求められる運用業務では、コスト面で大きな効果を発揮するでしょう。
セキュリティレベルの向上
オーケストレーションは、セキュリティ運用を効率化し、システム全体の安全性を大幅に向上させます。主な理由は以下の通りです。
- 常時監視体制の構築:24時間365日の監視で、異常を即座に検知。
- 脅威の早期発見:自動分析により、潜在的なリスクを迅速に特定。
- 迅速なインシデント対応:プレイブックに基づき、自動で初動対応を実行。
- 対応の標準化:手順の自動化で対応のばらつきを防ぎ、非専門家でも適切に処理可。
これらの要素が組み合わさることで、包括的かつ効率的なセキュリティ対策が実現します。
オーケストレーションを活用する上での注意点
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複数タスクの自動化によるメリットがあるオーケストレーションですが、以下の点には注意が必要です。
- 自社システムと連携できるか事前に確認する
- 導入・運用には専門知識が求められる
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
自社システムと連携できるか事前に確認する
オーケストレーションツールがすべてのシステムやアプリケーションに対応しているわけではありません。そのため、自社で使用している環境との互換性を事前に確認することが重要です。
導入後に「期待していた機能が使えない」といった事態を防ぐため、テスト環境での動作確認や事前の検証を徹底しましょう。これにより、自社に適したツールを選定でき、スムーズな導入が可能になります。
導入・運用には専門知識が求められる
オーケストレーションの導入には、専門的な知識や経験が必要です。特に、導入時にはツールの設定や運用フローの設計、既存システムとの統合といった高度なスキルが求められます。また、運用段階では、予期せぬエラーやトラブルに迅速に対応できる技術力も重要です。
こうしたスキルを持つ人材は需要が高く、新規採用が難しい場合もあります。そのため、IT人材が不足している場合は、専門企業にサポートを依頼することをおすすめします。経験豊富なプロフェッショナルの知見を頼ることで、スムーズな導入と安定した運用が実現するでしょう。
まとめ
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オーケストレーションは、複数のシステム要素を連携し、タスクを自動化する仕組みです。これにより、大規模な業務フローや複雑なプロセスの自動化が可能となり、効率化と生産性向上が期待できます。さらに、運用負荷を軽減し、セキュリティ対応の迅速化にも寄与します。
しかし、導入や運用には多くの課題も伴います。特にセキュリティ分野では、小さなミスが重大なセキュリティ事故につながる可能性があり、経験やノウハウを備えた万全の体制が欠かせません。また、複数のシステムやツールを適切に連携させるには、高度な専門知識が必要です。
こうした課題に対し、NTTコミュニケーションズの「マネージドSOAR」は、長年培ったIT・セキュリティ分野のノウハウを基に、安心して利用できる環境をご提供します。
「マネージドSOAR」の特徴:
- プレイブックによる標準化:ミスを防ぎ、迅速かつ一貫性のある対応を実現
- 24時間365日の監視:継続的な脅威検知と対応をサポート
- 運用負荷の軽減:自動化により、セキュリティ担当者の負担を軽減
- 柔軟なソリューション:企業の個別ニーズに応じた最適な提案が可能
専門知識や経験が不足している場合でも、NTTコミュニケーションズのサポートを活用することで、スムーズな導入と安定した運用を実現します。ぜひご相談ください。
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